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~35~ 騎士になれなかった男の悔恨 ⑦

「う…ううん…」


頭の後ろに鈍痛を感じて目が覚める。ひどい痛みだ。

目の前には…土?いや地面か心なしか頭がぼぉっとする。頭に血が上っているのだ。

どうやら宙吊りに釣られているらしい。

そうだ。誰かの声が聞こえたかと思ったら、多分何かで殴られて昏倒させられたんだ。そこまでは覚えていて、何者かに吊るされているんだ。


「あら。お目覚めみたいですよジド」


こっちは聞き慣れない女の声だ。いやだいぶ声自体は若いから少女、というところだ。


「それは重畳。強く殴りすぎてこのまま目覚めないかと思ってたんだ。予備は取っといてないし、いやあ起きてくれてよかったよ。しかしさっきの電撃はすごかったね。人造人間(フランケン)のパッシブスキルが乗ってるとはいえ雷の手(サンダータッチ)であそこまでの威力が出るなんてね。びっくりしたよ」


「なんです?それ。」


「簡単に言うなら、リリスは雷系の魔術にせよ、スキルにせよ生命力(ライフ)を消費して威力があがる。人造人間(フランケン)の特性だね」


「な、なあおい!説明してくれよ。コレ、どうなってんだよ!オレを無視して話してないでくれよ!」


思わず語気が荒くなる。

オレを無視して会話初めて、そのまま無視とふざけるな。こちとらいきなり拉致られて、しかも足に縄をされて、よく見たら木から吊るされている。

ほんとにふざけんな。


「ああごめんごめん。実はキミを生け捕りにしたのには明確に理由があってね」


「なんだって?」


「キミにはね。野盗騎士団の穏便な壊滅に手を貸してほしいんだ。」


ピクっと眉が潜められたのがわかった。いやこうなる。

自分の所属する団を悪く言われればそりゃこうやって期限も悪くなる。


「誰が野盗だって?」


「キミがどんな幻想を見てるかしらないケドね。現実では冒険者ギルドとしては野盗と変わらないということを判断されたわけで。で僕らが来た。ただし斥候だ。不真面目な斥候だけどね」


「何?」


「正直、依頼内容を明かすと戦力調査なのさ。訓練した騎士団くずれが数十人たむろしてるところに僕ら二人だけってのも変な話だろ?だからちゃんとした戦力を送り込むって話なんだよ」


「そういう提案をしてくる、ということはなにか取引でも持ちかける気か?」


「ご明察だね。その通りだ。名前を知らないのもアレだ。貴殿を騎士としてお名前をお伺いしたい。僕はジド・クロウ。でさっきから無口な連れがリリス。ただのリリスだ。」


フードで顔を隠した血色の悪い少女は、こちらに視線と会釈をよこして、またぷいっと向こうを向いてしまった。


「さて取引の内容なんだけどシンプルだ。僕が何度か情報提供にギルドと騎士団を往復して情報を渡す。で、程々のタイミングで引っ越しを繰り返してほしいのさ」

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