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~8~ 爬虫類人の迷宮 ~出発前

「だいぶマシな格好になりましたね、それで。普段着ならともかく」

「まァそうだよね。流石にジャージで冒険、ってのは締りがないもんなァ」


バタバタしてて気づかなかったが記憶の外、つまり格好はゲーム外のものだったようであまりにみっともなかったのだ。動きやすいは動きやすいがなんというか雰囲気がらしくなさすぎだ。

服装、というより装備は動きやすさを重視して盗賊なんかが好む軽くて丈夫、革系の防具で固めて暗いダークブルーのフード付きのジャケットを羽織ることにした。

スタイルがこれから不意打ち、奇襲、それに初見殺しをメインに据えていくなら、それを行なう時と場は選ぶべきだ。そして選んだからにはそれに全力で備えていく。場はともかく”時間”は間違いなく夜や見通しの悪い暗闇。攻撃するときにぴったりの服、となれば闇に紛れられるコレしかない。

・・・まあ黒い服と黒いフードってのがかっこいいっていう戦術とは別の超個人的趣味もあるんだが、かっこよさだけなら黒いコートにファーでも着けて気取った格好でもしたかもしれない。


「そういやダンンジョンに挑む前に確認だけしたいんだけどティリアはどんな魔法が使えるのさ?相互理解は必要だし聞いておきたいな。得意な魔法とかも聞いておきたいんだ」


少し考えてティリアは答える。


「そうですね・・・種類としては簡単に習得できて用途の多い、補助魔法がメインですね。それも戦闘にはは直接効果がないものが多いです。武器や鎧を輝かせるものだったり、暗闇の中でも目が聞くようになるものだったり・・・あとはちょっとした護身用に、動きが鈍くなる空間を半径3メートルほどつくる冷気の空間展開とかですね。」


「攻撃魔法は?」


「・・・攻撃に関してはほんとに最低限ですね。下位級魔法の下位も下位のをすこし齧っているくらいです」


「なるほど。ってことは探索はティリア頼みで、戦闘になったらバックアップをして貰いつつ、僕が前線で敵を殺る、って感じかな」


「ご迷惑おかけしますがお願いします。以前お世話になったパーティでは補助メインでやれたのですが、ちょっと訳合って今は独り身ですので・・・場合によっては魔法攻撃もがんばりますよ!」


杖を握った腕をグっと握りガッツポーズしながら目を輝かせている。なんというか、小動物的にかわいい。


「・・・まあ大概は僕がさっきみたいに即断即殺で問答無用でモンスターを殺していくよ。多分効率もそっちのいいしサ」


「まあそうですね。私の遠距離魔法より突風が吹き抜けるようなあなたの斬撃のほうが素早いでしょうから」


「ただ、ただ集団戦は話が別だよ。鍵はティリアになる。切り込むのは僕だけど復数同時には殺せない。だから、攻めの繋ぎや離脱を助けてもらうことになると思うんだ。そこんとこよろしくね」


さて、そんなこんな話をしながら街道沿いに歩いていたら、件のダンジョン入り口についた。

洞窟の入り口のようなものをイメージしていたが実際は小さな関所のような場所だった。

街の正規兵、もしくは衛兵だろうか。やたら整った装備をした兵士が地下へと続く階段前で警備をしていた。


「すいません衛兵さん、これから依頼をお受けしたので地下へと降りたいのですが許可をよろしいですか」


こちらが、どうしようかとまごついていたら先にティリアが慣れた様子で警備に切り出した。


「はーいよ。耳タコだろうけど降りても我々、そして都市タル・タル・ガ関係者は一切生死の責任は取らない。それと、冒険者同士の殺し合いにだって迷宮内では関知しない。オッケー?」


慣れた様子、というよりやたら腑抜けた印象を受ける警備だが、同時にモンスターが地下から上がってこないという裏返しだろう。


「はい。もちろんです」


「じゃあふたりともワッペンの階級と名前をお願いねー」


「クラスはシルバー。レーティリア・ブラックノックです」

「ブロンズ。ジョ・・・ジド。」


流石にこういう公的機関とかそういった場で名無しの男(ジョン・ドゥ)とは名乗れない。

まあこういう腑抜けた感じなので、案外通れてしまいそうだが後々冒険者として名を売っていくなら変な噂が立ちそうな名無しの男よりは通りがいいだろう。

なにより地下迷宮の無法っぷりもあって、変にアウトローだなんて思われたくないのもある。


「よし確認。じゃあ死なない程度にいってらっしゃいなー」


そうして地下へと通される。

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