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〜26〜 ふたりの森行きさんぽ道⑨

森人(エルフ)の森が立入禁止、というのは意外でもない。

。ですが、神話の時代にある神がエルフの森に降り立って、不思議な魔法の武具や、全く新しい魔法の数々を授けて当時の敵だった勢力の尽く報復に周ったらしいです。」


「神さま、ねぇ。」


脳裏にサマエルの事がよぎる。あいつは一応、この世界の監視者で管理者ではあるがそこまでするか?という部分ではある。

どちらかといえばあいつは薄情な部類だ。手を差し伸べられ、救われた事には感謝はするが心の形、有様というか、そういう部分が根本的に違う。その部分がやはり恐ろしい。

ただ件の神様はどこか情けがある。ここが、どこかの天使さまとの違いだろう。


「そして、その耳の長い森人(エルフ)の神様は森に現れてから、今現在までずっとそこにいて、生きた神話の証人としているそうです。」


「…は?」


「ええ、その反応ももっともですね。たしか、なんとかってエルフ族の王はいまは同族から、真神王なんて呼ばれているそうです。」


「へぇ。まぁなんにせよ、近づけない森の遥か高い地位のお方に卑しい盗賊職の僕が謁見なんて叶わないだろうし、一応記憶にとどめて置くか、ってくらいだよね」


「まあ。それは私も一緒ですけどね。ただエルフは敏感な種族です。基本は近づかない方が吉なのは変わらないですね。」


うんうん、とジドも頷き街道をあるき続ける。

面白い話を聞けた。この辺りはまたどこかで情報の収集をするが今ではないかな。

そんな話をしていたらやっと件の目的地、亜人の森がと思わしき木々が茂る森が見えてきた。


「アレ、だよね?方向的にも」


「ええ、あれですね。では頑張りましょうか。」

それなりの距離を歩き詰めてくたくたになった足を休めるために適当な木に背を預けてもたれる。足にかかる負担が軽くなってぐっと楽になる。

やっと一息とため息をつく。


「リリス、君も一旦休みなよ。ほいよ。」


言いながら、袋から適当な外套(マント)を掴んで敷物代わりに床に敷く。


「では失礼して。で、これからどうするんです?そのへんの詳しい話を聞いてなかったんですが」


「ん、そのへんだけどね。今回はまず、この水場から行ってみようか。多分だけどちょっとした一隊くらいで詰めてるはずなんだよ」


「と、いいますと?」


「僕らみたいな少人数ならともかく相手は団規模の大所帯。なら飲み食いにももちろん、体を洗ったり用を足すにも使う水は必需品だがそんな量を安定供給するにはやっぱどこかしかの川辺とかを押さえてるはずなんだよ。出来てないならないで略奪やらなんとかやるんだろうが、そういう被害は少ないと聞く。」


「なるほど。つまり供給ができているからには川とか水場を潰せば、かれらの生活基盤がズタズタになって騎士団が自壊すると?」


「時間があるならそれでもいいんだけどネ。今回はなるべく速やかにぶっ殺してそれなりの名声もほしい。だからちょっと違うやり口でやってみようと思ってるんだ」


言い終わってキシシ、といつものようにジドは笑う。


「…とりあえず、方針としてまず水場を押さえる、という事で?」


「ああ。少し休んだら水場にいるであろう騎士団員を制圧。その後、準備をしていこう。」


「わかりました。では少し遅いですけど昼食にしませんか?」


「おっ、なんかあるのかい?」


リリスがフード付きの外套(マント)の下からちょっとしたリュックのような道具袋を取り出す。

中からは何かの葉で包んだ、ちょっとした弁当箱のようなものが出てくる。


「手作りのサンドイッチです。いただきましょう」


「いいねぇ!手作りってのがとくにいい。早速頂きます!」


リリスはふふっ、と小さく微笑んでジドにサンドイッチを手渡す。


「じゃあ僕は飲み物でも」


ジドも背負っていた袋に手を突っ込み、きれいな青い硝子の水差しを取り出す。

そしてもう片方の手には鉄製のグラスが握られている。


「こちらの水差し、なんと中に入れた水はたちまち綺麗で美味しく、清潔な水になる魔法の水差しでござーい!ってなこれで鉄製グラスに注ぎ、さらにこの解けない氷、不溶氷をいれれば抜群に冷たくて美味しい水になるわけでね?いただきましょう!」 

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