〜25〜 ふたりの森行きさんぽ道⑧
森人の森が立入禁止、というのは意外でもない。
よくある話だが、森人は前提として美しい。男も女も隔てず皆美しい。そうデザインされた生き物だ。
故に芸術的、収集的な価値から裏の世界ではよく奴隷として売買されたりする。ドラグーンでもそうだったし、他のファンタジーでもよくある話だった。ドラグーンの世界ではもともと長寿で増えづらい種ということもあり絶滅寸前で、隠しルートを通る時に一族の生き残りの女王と出会えるくらいだった。
ほとんどは鬼族に、残りは大体人間が、という風でそこまで追い込まれてしまっていた。
「まぁ、想像には難くないね森人だもんね。か弱い、って表現は嫌だけど、脅かされる種だもんな。そら防衛にも熱が入る。相手を殺すってのもあるだろうね」
リリスはふふっと笑った。
「過剰防衛で死ぬ、というところはあってますが間違いを訂正しますね。この世界で、最強の勢力、というより国はこの森の森人たちの国ですよ」
「え?マジで?なんで?」
「昔は弱かったみたいですよ。本当に種が絶える寸前まで衰退したみたいです。ですが、神話の時代にある神が森人の森に降り立って、不思議な魔法の武具や、全く新しい魔法の数々を授けて当時の敵だった勢力の尽く報復に周ったらしいです。」
「神さま、ねぇ。」
脳裏にサマエルの事がよぎる。あいつは一応、この世界の監視者で管理者ではあるがそこまでするか?という部分ではある。
どちらかといえばあいつは薄情な部類だ。手を差し伸べられ、救われた事には感謝はするが心の形、有様というか、そういう部分が根本的に違う。その部分がやはり恐ろしい。
ただ件の神様はどこか情けがある。ここが、どこかの天使さまとの違いだろう。
「そして、その耳の長い森人の神様は森に現れてから、今現在までずっとそこにいて、生きた神話の証人としているそうです。」
「…は?」
「ええ、その反応も最もですね。たしか、なんとかって森人族の王はいまは同族から、真神王なんて呼ばれているそうです。」
「へぇ。まぁなんにせよ、近づけない森の遥か高い地位のお方に卑しい盗賊職の僕が謁見なんて叶わないだろうし、一応記憶にとどめて置くか、ってくらいだよね」
「まあ。それは私も一緒ですけどね。ただ森人は敏感な種族です。基本は近づかない方が吉なのは変わらないですね。」
うんうん、とジドも頷き街道をあるき続ける。
面白い話を聞けた。この辺りはまたどこかで情報の収集をするが今ではないかな。
そんな話をしていたらやっと件の目的地、亜人の森がと思わしき木々が茂る森が見えてきた。
「アレ、だよね?方向的にも」
「ええ、あれですね。では頑張りましょうか。」




