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〜4〜 人材募集 ④

…さて、ここはタル・タル・ガを離れ、西に十数キロ、ある程度舗装された道の半ばだ。

多少歩きやすくなってはいるがまだまだ悪路といった路を半日も進んで、とっぷりと日も沈み、黄昏時の夕方だ。


さて、なぜ拠点としてるタル・タル・ガを離れてこんなところまで歩いてきているのかといえば、もともとタル・タル・ガは件の爬虫類人の迷宮を探索するもの向けに商人や施設が寄り合い、人が集まりできた街だ。

初めはそれだけだったが、招かれざる連中まで集まり始めた。

野盗やら強盗、兵士崩れやチンピラ供だ。外からそういうならず者どもまで集まるようになり、本格的に都市として運用して治安を守っていくことが決まった後、大きな高壁が建設されたということだった。


様々な冒険者がここにあつまる以上、対モンスターなどに対する防衛力はかなり高く、冒険者同士で互いを監視していることもあり、治安自体は大分いいらしい。


…だが、高壁の建設後は維持費がかかるとかで、壁内都市に費用としての軽い納税が求められるようになった。


それができない、したくないもの、などなどは変わらず外で暮らすことを選び続けているようで、僕たちが向かうのはいわゆる「外村」という地区だということだった。

農業を営むもの、狩猟で生計を立てるものもいたりするそうだ。

他にも村特有の名産品だとかでそれなりに儲かっている村とかもあるんだとか。

で、僕らはその外村付近に仕事があり、そこに厄介になる予定、という事だ。


「ほほーん。なるほどね。詳しくありがとね、リリス。僕は世界からしてもよそ者だからね。詳しい内情教えてくれるのはめっちゃたすかるよ。それでこれから行く村ってのは?」


「いわゆる宿場村、ですね。街から外に出るとき、もしくは外から街に来るときに距離が結構かかってしまうでしょう?だからタル・タル・ガの領主様が村を四方にそれぞれ四つ、外に置いて冒険者や旅人の宿泊施設からそういった中継場というか休憩地点を作ってくれてるんですよ。」


「なるほど、そいつはありがたいこったねぇ。で、その宿場街…村?酒なりなんなりってある感じかな?あんまり期待してないけど」


「明日は普通に仕事なんですけど大丈夫ですか、ジド?」


「弱いものを選んでくびり殺すのは大の得意だから任せてくれってば。今回もそういうクエストなんだしさぁ」


「で、そういえばどういう依頼なんですか?詳しくは全然聞いてないんですけど」


「村の近くに洞窟があるらしいんだけどね?そこに盗賊団が住み着いたとかでさ。それの退治。ただこの盗賊団、もともとはそこそこ良いとこの騎士団で大失敗してクビになった奴らなんだと。」


答えるとリリスはみるみる顔を青くしていく。もともと死んだ人間を継いで接いでるので顔色は悪いがことさら青くなるのは見ていて面白いものだが。


「ちょっと!?この前ロイドとやりあった時あれだけ苦戦したのに、きちんと訓練した騎士くずれとやるつもりなんですか!?それも複数相手に!?死ぬ気ですか!?」


「いんや。洞窟に引っ込んでるような騎士団ならどうとでも、ってだけだよ。負けないだけならいくらでもだけど正面からなら万に一も、いや兆に一も勝ち目はないよ。ただ今回はいくらか仕込みの時間もある上に、冒険者ギルドから情報が降りてくる、崩れ騎士団の情報が巷に出回ってる。どういうことかわかるかい?」


ジドの質問に首をリリスは傾げ、首を横に振る。


「いいえ、さっぱりです。つまりどういうことなんです?」


「くずれ騎士団、ってことは崩れた原因があるわけでね?そいつが生き残ってるって事は、生かしておきたくない人らもいるわけでさ。ギルドに情報が届いてるんだ、情報はその人らにも届いてるはず。さらに騎士団を追いやるような相手なんだ。きっと同じくらいの騎士団規模の軍勢だろ?そんな奴らが遅れて到着する、って展開もあり得るんだぜ?リリス」



答えるとジド上機嫌で足取り軽やかに歩き出していく。

鼻歌交じりに歩みは軽快、楽しそうに歩いていく。


「なるほど、軍団規模の支援が見込める、と踏んだ上だったんですね。でももし来なかったら?」


「それでも、いくらでも手はあるんだよ。多分来るってのを踏んだ上で来なくてもなんとかなるよういろいろ仕込んで尽くを鏖殺していくつもりだし、だからこそどうとでも、って事なんだよ」


「まぁ、あの時のロイドとの戦いにしたって、急場だというのに上手くやってましたしね。信じますよ。ジド」


「しっかし、遠いんだねぇ。もうかなーり歩いたし?そろそろ見えたりしない?」


「ごめんなさいね、ジド。馬を借りよう、って言ってくれたのに。節約したい私のわがままに付き合わせて。」


「いやいいってのよ。僕は手癖が悪いし、素早い自信はあるけど、体力はそこまで持続する気もしない。だから僕もこうやって体力づくりに励むってことなわけよ。」


ジドは変わらず上機嫌だ。

腰より少し下。ホルダーに入れていた旋風刃(スピニンブレード)を抜き、握りの代わりにある指を入れるコインほどの輪に指を入れて手遊びでクルクルと回し出す。


「そのホルダー、いつ間に?」


「かっこいいでしょ?いつでもとっさに投げナイフできるように設えたのさ。銃は趣味じゃないからこれがいいんだよね」


「ジュウ…ってなんですか?」


ああ、そういえばドラグーン内にも銃自体はあったけどゲーム内の設定的にはイカレた武器職人の集まりが作った時代先取りしまくったコスト度外視の逸品とかだっけか。


「僕の世界の特殊な武器のことだよ。人を簡単に殺せすぎちゃうから好みじゃないんだ。まぁ手に取ることも滅多にない代物だけどさ」


「そんなものあるんですね。」


「ま、それは置いといて、けっこう歩いたし筋肉の疲労はかなりの物ってのも事実だよ。しっかり休んでおこうね。僕は自慢できるほど体力があるわけじゃないけどリリスは特に体力があるわけでもないんだし。」


「私はアンデットです。睡眠は必要ないですよ?」


「それは疲れない、ってだけでしょ?体は死体で構成されている以上、体の方が疲労するんだから、無理はしない事だよ。お互いのためによくない。土壇場で腐った筋肉が千切れて動けません、はまずいだろ?」


「…それもそうですね。なら向こう着いたらすぐに休みましょう。」


「それよか結構歩いたよね?そろそろ件の村見えてもいいんじゃないの?と、おもったらあれじゃない?」


ティリアも言われて、ジドがゆびを指す方を見る。


「ええ、あれで間違い無いです。あれが元開拓村、現中間休憩で使われてるクルツ村です。」

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