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~35~ 悪魔③

「いや、そんなことは無いんですよアナンナ先輩。あなたにはまだ価値があるんですよ。ではこれからのことを考えて愛称のアナで呼ばせてもらいましょう。」


アナンナはムムっと眉を潜める。まあ当たり前の反応だろう。

さっきもなれなれしい、といっていたし拒絶的な反応の予想はしていた。


「これから?私をどうするつもりで?見ての通り体は貧相だし()()()()()()が出来ないわけじゃない。が、向いてないですぜ。」


本人の自己申告もあり、ふと下品だがアナンナの体に目を向けてしまう。

パットと見で隣の、女性として成熟し豊満な女性の体と見比べると確かに未熟な体に見える。というか貧相だ。

言ってはアレだがそこそこに精神が成熟した人物のようだが体は不相応に子供っぽい。

というか中学生くらいの体躯に感じる。


「そのつもりは無いし、そのつもりだったらそっちの魔法行使者(マジックキャスト)を選」


「その人に手を出すんじゃない。そうなったら徹底的に抗戦するからな」


こちらがふと視線を魔術行使者のほうに向けたら遮るように叱責を受けてしまった。


「さっきの死んだそこのクズはどうでもいいが、その人は別だ。その人にはそこのクズと知り合う前から世話になってるんだ。その人は旦那もいるし子供もいる。これから幸せになるべき人間なんだ。どうこうしてみろ。絶対殺す」


ろくに動かない指で体を支えながら、無事な腕で腰から短剣を抜いてその切っ先を向けてきた。


「ヒヒヒ、安心してくれ。別に性奴隷が欲しいわけじゃない。君らが女性として魅力的じゃないというわけじゃないけど目的は別にある。あなたが生きてる理由は別にあるんだよ」


「理由?」


「あなたは僕ら二人のケツ持ちに、ようは僕らのバックにつく人になってほしいんだ」


「なに?パシリにでもするのかと思ったけどどういうことだ?」


首をかしげながら訝しんだような顔をしている


「実態はパシリで間違いないです。だがあなたは私と比べて冒険者として物凄く優秀なハズだ。情報収集や斥候としての技能としては僕はかなわないはずです。そしてそれ以上に貴方のミスリル級冒険者という看板に用があるんです」


アナンナはなにかを察したのか、ふう、とため息をついた。


「世間の信頼か。確かに高位の冒険者がお墨付きをだせばそれで十分と言えるか。」


「そういう事です。シルバー程度の我々では情報や行動にいちいち制限があるでしょう


し、仕事によってはいろんな事柄で情報を収集してもらったり、手回ししてもらったり・・・状況によっては一緒に戦ってもらったりもあるかもですね?」


「・・・要は困ったら助けてもらえる便利で使い勝手のいいパシリ?」


「そういう事です。だから貴方は死なない。そこは安心して欲しいです」


「なるほどねぇ・・・使い道があるから殺さない、ってわけかい。じゃあせいぜい死なないように立ち回らないとだねぇ。まあ大体は了解だ。どちらにしてもアタシにはこれしか道がない、ってことだろ」


「そのとおりです、アナ」


アナは深くため息をつく。観念でもしてくれただろうか。


「もういいだろ。この人の手当をさせてくれないか?」


アナはそう言いながらごそごそと自前の道具袋に手を突っ込みだす。


「それはだめだ」


ピクっ、とアナの袋を漁っている手が止まり、動きも固まる。


「・・・どういうことだい?」


今の声も静かだった。

静かだが確かに圧がある。


「ケツ持ちは1人でいいんだよ。その人はここで殺していく」

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