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~28~ ティリアの戦い ②

鮮肉人形(フレッシュ・ゴーレム)

他の創造人形(クラフト・ゴーレム)系の鉱物や竜の牙を材料に無機物系モンスターを作りだすスキルで生まれるそれらとは違い、鮮肉人形(フレッシュ・ゴーレム)は対象の死体と、復数の死体を()()()()()()()()()()()()完成する。その出自から他のゴーレム系モンスターと違い無機物系ではなく、不死者(アンデット)だ。


「ええ、そうよ。流石に分かる相手には分かってしまうわね」


「あの深々被ってたフードもその劣化した皮膚を隠すためのものだったわけか。まあどうあれ本性がバレたんだ。お前も殺す」


刀を構え直すロイド。


「まあお待ちになってください。そこの魔法使いさんよりできる自身がありますよ、どうか使ってもらえませんか?」


情けないが命乞いだ。寝首を描いてタイミングを見て出て行くにしてもまずはこの場を凌がなくてはいけない。会話で時間を稼いでアンデットを作るくらいの時間を作らないといけない。


「ないな。ありえない。お前、ベースの体がよほど貧相だったんだな。魔術の腕はあたりまえだが女としてもお前は()()がたりなさすぎる。却下だな。なにより死体を抱くような悪辣な趣味はもってない」


ムっと来る。

だが問題はそこじゃない時間をかせげれば、それだけでいいんだ。この狭い通路で魔術を行使すれば

相手も避けられない。あとは相手を確実に殺せる威力があれば十分だ。今か今かと眼の前で転がっている上下に別れた死体にチラっと目を向ける。

ピクっ、死体の指先が跳ねる。しめた。しっかり時間は稼げた。


「あら、奇遇ですね。私も女性をそういう言い方をするような相手は御免だと思ったところですので」


「ほざけクソアマが!!!」


激昂。予想通り。

死体は動き出した、今にも死体は立ち上がり構えを取る。

立ち上がるまで2秒。構えて1秒。魔術に対する防護をきちんと考えている相手を防護ごと貫ける魔術の詠唱なら4秒といったところだろう。

一秒足りない。間に合うか?しかし今にも斬り伏せに突っ込んでくる。

すぐに魔術の詠唱を始める、いまやらなければ間に合わない。


死体が立ち上がり始めた。それに合わせて構え直したロイドが突っ込んでくる。

だめだ。間に合わない、今にも寝ぼけた死体を押しのけて叩き斬りに来る。


「首から上さえ無事ならいくらでも挿げ替えが効くんだろ!鮮肉人形(フレッシュ・ゴーレム)ってのは。なら転がってるそいつとは違って縦に2つにしてやる!!」


来た。ロイドが突進気味に突っ込んでくる。だが一秒たりない、私も死ぬ。ああ、こんなことならちゃんと美味しいモノでも食べておくんだった。

相手が目の前に来る。結局死体も起き上がりはしたがいま押しのけられてしまった。

圧倒的に時間が、いつもは一瞬で過ぎていく”1秒”が足りない。お終いだ。


思わず目を瞑る。死を覚悟したが振り下ろされる刃を見たくはない。

一瞬の静寂。残酷な死の無音。ああ、死んでしまったのだろうなという静かな間。


ーーだが意識が飛ぶような事はない。つまり斬られていない。まだ私は死んでいない。ーー


恐る恐る目を開き、状況に目を凝らす。

今にも斬りかからんとする全身甲冑(フルプレート)の男の肩を、いま縫合が終わり起き上がったばかりの死体が掴んでいた。

そんな命令はだしていない。だす余裕なんてなかった。ならばあれは、起き上がったアンデットとしてのあれに意思があったということか?そんな馬鹿な。例外は2つだ。私が眷属として意識をもたせる事を望んで、死ぬかどうかの莫大な魔力を払った場合だ。

もしくは魂の傾向が限りなく悪によった()()()の場合のみだ。つまり彼は人間ではなかった。それも魂の濁った邪悪な存在、ということになる。


「まちなよ先輩。僕の命の恩人を目の前でいたぶるのをみすみす許すわけにゃいかんのよねぇ」


「ジド!貴方・・・!あのスキルで”蘇生”されるってことは」


「話はあと!こんどこそ主人公(ヒーロー)気取りのエセ勇者様をやっつけちまうから。ヒヒヒッ」

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