~22~ 対人戦⑧
間を置かず、霧の向こうから悲鳴と金属音。
霧の向こう、霧見の目で見える光景で言うならば、策は十分成功だった。
剣士は飛来する刃に気づいてすかさず剣で弾いていたが、こっちの思惑は気づいてなかったようだ。
分速600回転するしてる刃を乱暴に弾いたりなんかすればこの狭い通路を跳ね返りまくるに決まってるだろう。それも人間が密集してると所へだ。どうなるかは想像に難くない。
金属が壁に何度か跳ね返る、高い音。それが何度かして完全な沈黙が訪れる。
改めて霧の向こうへ目を凝らす。
布、いや魔力が施されたものかもしれないが布の服で冒険者の装備としては軽装のそれでは飛来する刃を防げるはずもなく魔法行使者の女は喉、腕、そして右目に旋風刃が突き刺さっていた。
ひと目見て重症とわかる。もしくは死んでるか。最低でも上位回復役はいるだろうか。
盗賊には一本、腿に突き刺さっていた。
痛みに壁に背中を預けてもたれていたのだろう。被弾は少ない。だが脚をやられた盗賊にまともな支援も戦闘もできないだろう。ならアレは生きていても戦線離脱だ、戦力とは数えないでいいだろう。
そして甲冑の戦士だ。流石に全身甲冑だ。そもそも刃が通らない。
「だが、これでほぼ終わりだ。彼女を危険に晒せない以上、1対1に持ち込む必要があった。これが冴えたやり方なのさ。」
「巻物発動突風」
霧の向こう、声がしたと思ったら地下にもかかわらず強い風吹きすさんで濃い霧を吹き飛ばしてしまった。
「よくも、よくもオレの女どもを再起不能にしてくれたな・・・絶対に、絶対に許さんッ・・・」
確実に怒気を孕んだ声でロイドは告げる。正体不明の刀を抜いた剣士が本気で向かってくるだろう。




