~12~ 道具作成【アイテム・クラフト】
さて、ゴソゴソと動かなくなった骸骨どもの残骸をいじくりながらなにか思い出したのか、ジドの方を見て口を開いた。
「そういえばずいぶん苦戦してらっしゃいましたね、さっきのごろつきみたいにサクっと行くものと思ってましたが」
「僕の専門は”生き物”だからね。痛みで怯ませたりこっちのほうが強いんだぞ!って怯えさせたりしてパターンを組むんだけど、アンデッドは生き物殺す!絶対殺す!ってなってるから怯みゃしない。正直苦手なんだよ」
「なるほど。ところで骸骨部品集め手伝って貰ってもいいですか?」
「なんでさ?そういう趣味かい?」
ふぅ、とめんどくさそうにティリアはため息をつく。
「この骸骨たちの部品を持っていって、討伐証明にするんですよ。そういえばギルドの説明もしてませんでしたね。まずはそこからですね。ちょうどここは安全みたいですし、最悪地上へも近いですからちょっとゆっくりしながらお話しましょう」
そういってパパっと服についた泥を落として、ちょうどよい大きさの石材があったのでそれに座り込んだ。
「まあギルド、というのは正式には冒険者依頼窓口、簡単に言えば国営の便利屋というところです。各地の厄介事を引き受け、冒険者が解決。依頼者は手数料を支払い、ギルドから達成報酬が冒険者から支払われる仕組みになってます。」
「ほーん。てことは今回もそういう感じかい?」
「ええ、その他にも依頼とは別で野営のモンスターを討伐するとその脅威度に応じて報酬が支払われるよになっています。今回のギルドからでそのモンスターの討伐報酬とあわせて手間賃なんかが乗っかった分が今回の報酬になる予定です」
「ほえー。そいつはありがたい話だね。手ぶらの冒険者が余裕さえあればモンスターを退治にいけるようになるいい制度だ。てことは今集めてるこの骨も?」
「そういう事です、この躯が明日のご飯の種ということですよ」
そういいながらさっさと三体それぞれ同じ部位、かろうじて無事な右足の骨を袋に押し込み始める。完全に燃え尽きている二刀流だった炭の塊から真っ黒になった炭をひとつまみ小袋に入れ、剣の片割れを拾い上げる。
「さてこのあとはどうしよっか。入口でいきなりエンカウントしたのには驚いたけどとりあえず依頼は終わったわけだしもう引き上げ?」
「いえ、どうせですしもう少し奥へアイテムを探しに行きませんか?なにかしら冒険の助けになるものや使わないにしてもお金になるものなんかもあるかもですし」
「そうだね。余裕もあるし行こうか!ただちょっと待ってね」
そういってジドは手をかざす。
「スキル発動、道具作成・毒薬瓶」
かざした手の中にふっと蓋をされたガラス瓶が現れ、その手に収まる。
色は毒々しい紫色をしている。
「お、やっぱり出来たか。これで少しはやりやすくなるかな。」
目を丸くしてティリアはこちらを見ていた。
「・・・今のはなんですか?それは・・・みたところ毒のポーションのようですが、どうやってそれを」
「これは暗殺者と道具職人をある程度修めていると使えるスキルで、こういった闘いに便利な道具が時間制限があるとはいえいくつか作れるんだ。あとは回復用のポーションも作っておこうか」
そう言って同じ要領でいくつか道具を作り出していく。
ドラグーンの魔法やアイテムがある程度同じ様に存在し、それらが生活に根ざしているならば使えるかもと思ったが普通に使えた。思ったとおりではあった。では使った反応は?それを見て他人はどうする?
「・・・すごい特技ですね。はじめて見ました。モンスターは生まれついて特殊な能力を持ってるそうですがそういう類いのものですか?というかそれである程度生計を建てられるのでは?」
「・・・そうかもね。ただ売値によるだろうけどモンスター討伐のがワリがいいならそっちで食ってたほうが楽かもね」
意外や意外、どうやら一般人は知らないようだ。いや単にこの世界ではこの複合スキルの産物がレアスキルでティリアがお目にかかったことが無い可能性もあるが。もしこの世界でこのスキルが未知のスキルで自分以外所持している人間がいないならいくらでもやりようが増える。
ただ本質としては周りにバレていないことが前提にはなる。手品のタネはバレてしまえば案外単純だったりする。神秘は神秘であるべきだ。
これも闘いのタネとしていくつかは周囲に伏せておくべきだろう。
「さて準備もできたし、奥に行こうか」
「ええ」




