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~11~ 爬虫類人の迷宮 ~影の歩み

 二刀流と戦っていた二人の影がが大きな炎に飲まれて、ごうごうと音を立てて燃え盛る。

薄暗い地下迷宮のちょっとした広場がその炎で明るくなる。


ジドの革装備もそうだがアンデッド全般は炎攻撃への耐性が極端に低い。

灰は灰に、塵は塵に。不死者(アンデッド)はただの死者へ。ということだろう。

火はすべてを清める、とはよく言ったものだ。


一塊の、炎に包まれた影がゴシャ、っと音を立てて燃え尽き、崩れ散った。

二刀流の剣だけを残して跡形もなくなってしまった。


「・・・ごめんなさい、ジド。まさか本当に死ぬなんて。短い付き合いだったけどあなた面白かったわ」


うつむいてティリアは寂しそうにつぶやいた。

そんなティリアの足元の影、いや地面からぬーっと何かが生えてくる。

そしてその影はそのまま伸びるように徐々に大きくなり、ティリアと同じくらいの大きさになる。

その黒い影はそちらに気づかない。


「ふぅーっ・・・」


「ほわああ!!!!」


生暖かい風が、いや、生き物の吐息がティリアの首元に柔らかくふれる。


「いきてるっつーの。考えもなくあんな真似しないからサ」


「ちょっと!いきなり何するんですか!」


「勝手に僕を殺すからサ。でもごめんね」


「・・・まあいいですけど。しかしどうやったんですか?さっきのだと、どう見ても一緒に焼き尽くされたように見えましたけど」


暗殺短刀(コレ)さ。このダガーのおかげなんだよ」


といってジドは構えていたダガーの柄と護拳の間に指をつっこんでくるくると回しだす。


「そのダガーに秘密が?」


「コレはね、影の凶刃(シャドウ・ワークス)って短剣でね。この短剣だけである補助魔法(サブスペル)が使える。それも影の歩み(シャドウ・ウォーク)って魔法なんだけどね?」


「あ、知ってますよそれ。影の中を短時間、というより闇の中に潜むことができるっていうどっちかと言うと隠密系の魔法だったかと」


「そそ。コレ自体はサブもサブ、単品だとそんなに驚異でもないけど組み合わせ次第で凶悪な魔法なんだよね。今回は緊急回避に使ったけどネ。影の中は安全だから防御にも使えるってわけサ。」


「なるほど、ところでどうして私に教えておいてくれなかったんですか?」


「実はボケてたんだ」


「はあ?」


ジトっとした目で見つめてくる。ワリとムッとした顔だ。


「冗談だよ、ジョーダン。ワリとまじでボケてたのもあるけど、僕、スタイルが高速で強襲する暗殺がメインだからね。・・・身内にだって()()は伏せときたいってのがある」


「なるほど。納得しました」


「するんだ?」


「逆ならば、そうします」


そう言ってティリアはそそくさと骸骨剣士(スケルトンフェンサー)たちの骨を集め始める。残骸すら残ってない二刀流のは燃え尽きて煤けた剣を片方持っていく。


(ま、隠し玉はコレだけじゃないんだけどさ)


そうボソリと呟きながら胸元に隠してある、ある”暗器”に指を這わせてなぞる。

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