〜53〜デビルズダンスフロア&キリングユー②
同時に心のなかで使い魔のモンスターたちに指示を出す。
(武器を捨ててただの獣のように牙と爪で襲いかかれ)
これだけで全ては十全だ。
自分の身は既に放たれた弓矢になったかのように、全力で地を蹴り反応が鈍く盾を構えるのが遅れた騎士を睨み、その中でも鎧を着込んでいない服の部分や鎧の隙間に目標を据えて走る。
そしてそれに遅れ、おかしな表現だが命令に従い使い魔共もただの何日も餌にありつけなかった獣のように、主人たる自分が襲いかかる標的以外に襲いかかる。
「うおッオォッ!?」
この間、体感で4秒くらいだろうか。
残り時間は11秒ほどだ、それを意識しなが獲物の騎士が遅れて構えた盾にしがみつくようになるべく体重をかけるように飛びかかる。
猛獣である虎の狩りのやり方を参考にするやり方だ。
盾を持つ手は襲撃者の体重に引っ張られ、体勢を崩し地面に着けてしまう。
「おっ!?おおっ!?」
そして底部を地面につけた盾は程よい足場になる。足場を踏み台に騎士の背後の宙空に飛び上がり空中から首の裏の鎧の隙間に短剣をねじ込み、ねじ込んだままそれを体が重力と慣性に流れるままぐるりとひねる。
「アルフレッド!」
誰かが叫んでいた。
だがもう遅い。首の骨周りをズタズタにして即死させる技だ。
本当の事言うなら、こいつら「騎士団」のやってきた事、調査で得た情報を踏まえると即死なんて大分生温いが少なくともここで死ぬ彼らにはその罪は無い。
罪を憎んで人を憎まず、といこう。
目の前で深々刺さっている短剣の先の頭から力が抜け、死んだのを軽く確認してから即座に次の標的に目を向ける。
残りの奴らはいっぱいにいっぱいに獣共の相手をしている。
その中で甲冑の意匠が特別でもなんでもない、至って弱そうな奴。そいつをロックオンする。
右手で腰の投げナイフ入れを触りナイフを2本構えながら左手であたりの砂を適当に掴む。
すかさず砂を顔目掛けてぶちまける。
「ああっ!ぐああっ!目が!汚えぞ!クソッ!」
「大層な兜だろうが風も砂も水も完全には防げない、だからこういうシンプルなのがよく効くのサ」
「畜生!この外道!」
駄々っ子のように剣と手をを振り乱し、遅いくる獣にも暗殺者にも殺されまいと暴れている。
そこでこれよ、と全力で投擲用短剣を鎧の無い脚目掛けて投げる。
ひゅっと小さく風を切る音と間を置かず短剣が骨まで達したカコン、という音が聞こえた。
「がああっ!脚!脚を!」
二人目お終い。後はほっとけばいい。使い魔の獣が獣がかって食い殺す。
そして、特に未熟そうに猿に盾に取りつかれ相手をしてるのを背中から刺し、短剣をぐるっと回すようにねじる。
人の体は割と頑丈だが、人の命は存外脆いものでこうすると痛みでショック死する。
目の前の相手を殺したのを確認しながら、今度は残りの二人、特に強そうな二人を見る。
よく見ると放った狼と豹が足元で果てていた。
「どうやらお二人は強いようで」
残り7秒程か。




