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空は綺麗に泣いていた  作者: 秋雨 しぐれ
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秋雨が笑う頃に

この部屋、ひとりでも狭いのにもっと窮屈になるじゃん(笑)

ベランダからふかした煙はきれいな雨に濡れて消えた。

さらさらと降り続く雨は、この世界を落ち着かせてくれる。わたしの心も、同様に。できれば残業続きで荒れているこのお肌も潤して、なんて。荒れているのは残業だけのせいじゃないのはわかってる。もともと恋愛なんて向いてない性分で何だかんだ27年生きてきた。それでも、ただでさえ狭いと感じていたこの部屋をさらに窮屈にしてみたのが半年前。歯ブラシも買った。バスタオルも増やした。アイツはコーヒーなんて飲まなかったけど、可愛らしくおそろいのカップだって用意した。

昨日、やっと全部捨てた。半年記念日だった。


「もっとかわいく女の子らしくしてほしい。」


ざっっっっけんな。世の男性諸君、紳士諸君に問おう。「女の子らしさ」とはなんぞや。

疲れて帰って来てシャワー浴びた後に下だけ履いて首からタオルぶら下げて胡座かいて缶ビール飲んじゃいかんのか。ご飯食べた後はデザートよりもチー鱈咥えながら缶ビール片手に経済ニュース見て何が悪い。ちゃんとそのあとてめえのちょっと謙遜気味なモン咥えてやってただろ。変に自信持たれても困るから褒めはしなかったけどそれはなんか、ごめん。


楽しかったんだ。始めて2カ月くらいは。缶ビールだって控えたし、家の中で着るTシャツや下着だって気をつけた。おならするのにトイレ入ってから「私なにやってんだ」って自問自答する日もいつかなくなると思ってた。1ヶ月目も2ヶ月目も自分の中では「スタートして何ヶ月記念日」だって、コンビニでデザート買って帰ったじゃん。アイツは「どうしたの、今日。なんかいいことあった?」なんて笑ってたけど。


でも、だめだった。ぶっちゃけ私バスタオルは友達とか親が来た時用に置いてあるだけで使わないし、あのね、残念だけど女だっておならするんだよ。悪いけどあんたが横になってるそのベッドでノーブラパンイチでテレビ見ながらおならしてたし、仕事の後に2人分ご飯作るのもしんどいんだよ。可愛いお皿に盛り付けて一汁三菜は憧れるけど、少なくとも今の私は調理した鍋から直接食べる方がラクだった。食後のお洒落な紅茶や甘いカフェオレとデザートがコンビニのチー鱈と缶ビールに変わるのは3ヶ月記念日に入るよりも前だった。おかげで浮いたデザート代で鯖缶を買った。


疲れて晩ご飯作れないというと、アイツはあからさまに不機嫌な顔をした。風呂上がりにビール飲んでたら先に寝るようになった。棚から減っていくお菓子やケーキに対して増えるつまみ類をみてからため息が聞こえてきた。


アイツの中で「恋人」だった私が「ただの同居人」になる頃、空は気まぐれで元気に笑いながらも時々綺麗に泣く、そんな季節になっていた。

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