第十八話
「…………」
「おい!」
「裏木、そこで黙るなよ」
「おい、そんで?」
ふと、気付けば、いつもの友人たちが、私に対して皆、何かを期待するような目を向けていた。
「あ、ああ…そう、か」
…そう、そうだ。
私は今、いつもの面子といつもの場所で、閉園した遊園地にまつわる噂、その調査結果を話していたところ、だった。
先に私が話していて、つい意識が逸れたようだ。
同じく遊園地へ向かった野間も、ぼうっとしていたらしい私を、不思議そうに見ている。
「そんだけ引き伸ばして、黙んなよ。結局拷問室? あったのか? はっきりしてくれよ」
「拷問、部屋? ああ…」
覚えてはいないが、きりがいいところで話を止めたらしく、友人たちの不満そうな催促に対し、私は。
私、は……
「…………ああ………う…」
動けなかった。
首を縦に振ることも、横に振ることも、出来なかった。
肯定の言葉も、否定の言葉も、口に乗せることが、出来なかった。
「ええ? だって変な扉あったんだろ? 黒いヤツ」
「……そう………だな………」
「…………ん?」
「まさか」
やっと口に出した言葉に何を感じたのか、全員が押し黙る。
一瞬の沈黙が、部屋を支配する。
「おいおいおい! 釣りかよ!」
「ふざけんなよ!」
「そんなオチだとは予想していたが、そういう締め方はさすがにな…」
「…………」
口々に嘆き、叫びだす。
私は否定することも、同調することも出来ず、他に何か言おうと口を開くも、続く言葉が出てこない。
「安心しろって! コイツが釣りだとしても、俺の話はマジだからな! 実際、アトラクションは閉園時間まで動いてたし、お前ら行ってこいよ! 無料で遊びたい放題!」
野間の明るい声の横で、思考に沈む……そう、あの扉の先にあった部屋は、間違いなく拷問部屋だった。
物が何一つなくともあの暗い部屋……いや、もう思い出したくもない。
なのに、何度も何度も、ふとした拍子に思い出す。
声、音、近づいてくる、白白白白…………
あの後、気付いた時には、帰りのバスに揺られていた。野間を置いてきたことに気付いたのも、降車してからだ。
それほどまでに、私はあの場所を、あの、物悲しくも陽気な音楽が流れていた遊園地を恐れていた。
それは、言葉では言い表すことなど到底出来ない、恐怖。
「野間さあ、それ本当かよ」
「マジマジ! マジだって!」
「嘘臭いぞ、野間。それにしても裏木、お前…」
また脳裏にあの時の光景が。口元が引きつっていく。
そんな私を見てどう解釈したのか、あらぬ疑いをかける友人たち。
「……その………それ、は………」
やっと口に出せた言葉も、意味がなく、小さい。
「ここまで話作ったのはすげえけどよお」
「ま、いいさ! 野間よ、お前もナントカハウス見てきたんだろ! ソッチどうだったのよ」
「次はお前の釣り話だな。期待してるぞ」
一つ嘘だと知れば、全部嘘だと勘繰りたくなるのだろう。
各々自己解釈した友人たちは、野間に期待しつつも疑いを含んだ目を向けた。




