第十五話
「……拷問部屋か?」
言葉にも、我ながら失望の色が大分混じっていると思う。
そのはず、懐中電灯で照らしだされたのは、木の壁。渋い色合いの板が並んでいるだけであった。
多少は期待していた部分もあったので、なんというか……拍子抜けだ。
もはや緊張感や恐怖心など欠片もなく、遠慮なく足を踏み入れ周囲を照らせば、木の壁、木の壁、木の壁…
開け放たれた扉の裏、右手には巨大な岩…というよりも土の塊があり、どうやらこれが入り口を塞いでいたようだ。
「やれやれ」
噂は噂、か。
そこまで広くない部屋の中央に立って見るも、土の塊を除いては、何もない。
拷問部屋と聞いて連想する、鎖やベッド、各種拷問具、爪で引っかかれたような傷、血の痕…そんなものは、当然、存在しない。
カビ臭く湿った空気だけは、それらしいが、これだけ何もない、殺風景な部屋を前にしては、拷問部屋だと誰も思わないだろう。反省房、と言われたら納得できるかも、という程度か。
一応、本当に一応だが、隠し部屋に続く通路や扉がないかと、木の壁を叩いてみて回ったが、そもそも壁は継ぎ目がない一枚板。返ってくる音は、鈍く、変化することもない。
「やっぱり…ないか」
まさか、こんなすっきりしない結果になるとは予想外だ。
拷問部屋が見つかるか、見つからないか、の二択だと考えていたが、まさか、部屋はあったがそこには何もない、とは…
残念ではあるが、土産話を期待している友人たちには、噂が嘘であったと伝えるしかあるまい。
こうなると、やはり野間に期待するしかない。ミラーハウスで何か面白い体験をしてくれないと、こちらが困る。
そんなことを考えつつ、未練がましくもう一度懐中電灯で部屋を照らし、何もないことを確認。
…仕方ない、上に戻って野間と合流するか、と身体を反転させ。
「…………は?」
懐中電灯が照らしたのは、開け放たれた扉と、その先に続く土で出来た階段……ではなく。
音もなく閉じていた、木製の扉であった。




