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第十四話

 完全に開ききった扉の先を見渡してみるが、視界に映るのは暗闇の空間。

 だが、アトラクション側から差し込む光で、いくつもの段差、階段があることが分かる。どうやら、この階段、照明が付いてないらしい。


「地下か」


 もう少し観察を続けてると、階段も、そして広がる壁、天井も全て土でできているようだ。

 試しに手近な壁に触ってみれば、若干湿った感触が伝わってくる。爪で引っかけば、ぼろぼろと崩れていく。

 いつの間にか両手を扉から離していたが、黒い扉が閉じる気配はない。


「何があるのやら」


 呟き、こんなこともあろうかと、持ち込んできた懐中電灯を取り出し、点灯。

 小さな円状の光で空間を照らせば、そこまで深くはないようで、すぐ階段が途切れていることが分かる。

 その先には平淡な通路が少しだけ伸びていて、木製の扉がある。上からみた限りでは、鍵らしき物も見えない。


「扉の先に、また扉」


 そうとなれば……と横へ、黒い扉へ目を向ける。

 一旦懐中電灯を消して仕舞い、半分だけ動かした閂に手をかけて、完全に引き抜く。

 黒い金属棒となった閂を手に持ち、ついでに南京錠も外し、ポケットへ入れておく。


 何らかの理由で、下まで行ってから扉が閉まり、閉じ込められでもしたら、流石に笑えない。

 特に、野間がコレに気付き、かつ私の存在に気付かず鍵まで閉めようものなら……考えただけでも肝が冷える。念には念を、だ。

 扉の内側にも凹凸があり、どちら側からでも開けられることを確認し、引き抜いた閂を持ち、懐中電灯を取り出し点灯し、今度こそ隠された地下室を確かめるために、一歩、踏み出す。


「へえ…しっかりしてるな」


 思ったより湿ってもおらず、そのため足がめり込むこともなく、自重を支えてくれた階段に安堵する。

 それでも狭い視界のために警戒しながら、一歩一歩、土の階段を踏みしめていく。


「やっぱり何もないか」


 その間、上下左右に懐中電灯を振るも、やはり照らし出されるのは味気ない土壁のみ。

 ここが拷問部屋に続く通路であるならば、血のような痕や、何かを引きずったような痕があってもおかしくはないのだが、特にない。特徴のない土の壁が続くだけだ。

 最初に感じてた圧迫感もない。やはり、あれは私の思い込みだったのだろう。


「やれやれ」


 何事もなくあっさりと土の階段を下り切り、先に確認した、鍵のない木製の扉が目の前に広がる。

 意外だったのは、今度の扉には細工が施されており、それが和風の意匠だったということぐらいか。

 五枚の花弁の中に、同形の花が…という細工。どこかで見たような気がしたが、花の意匠などありふれたものだ。


 とても拷問部屋があるようには見えない扉へ手を伸ばして、押してみる。が、扉は全く動かない。

 引き戸だったか、と手を止める前に、気付く。扉は動いているようだが…何かがつっかえている?


「つっかえるもの…」


 普通に考えればベッドや棚ぐらいか。

 ただ四方が土壁だとすれば、そして、ここが廃園になって十数年経っている場所だとすれば、天井が崩落して塞がっている可能性もある。


 どちらにしろ、力を込めて押せば開くならば、開けて確認すればいい。大丈夫だ、どうせ生きているモノは存在しない。

 数秒で結論を出し、先に開けた扉と同じように、全身の体重をかけて押していく。

 服越しに扉の湿った感触が伝わって若干不快だが、この先に何があるのか気になって仕方ない、この状況の前では些細なことだ。


「こんの……うおっ…と!」


 今度は途中から拍子抜けするほど、あっさり扉が開いた。

 抵抗が無さ過ぎて、危うく開いた扉の先へ、顔面から突っ込むところだった。


「……さて」


 一度、二度と深呼吸をして、開いた先へ懐中電灯を向ける。やはり、照明の類は存在していない。

 一度振り返れば、土の階段と、先に続く明かりが見える。ドリームキャッスルの照明も、流石にここまでは照らせない。

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