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第十二話

 右に左に下に上。

 鍵穴を探しながら、通路を散策すること数分。


「なんだ、これ」


 視界一杯に、黒い扉があった。


「扉、なんだろうが…」


 だが、おかしい。

 ドリームキャッスルで見てきた扉は、上部が弧を描いている、実に洋風でメルヘンチックな物であった。

 そして、どれもが木製に見えるような塗装を施されていた。


 しかし、この、御伽噺に出てくるような内装の中に突如現れたのは、長方形の黒い、金属扉。

 丸い鋲が等間隔で打ってあるだけで、他に目立った装飾もない無骨なデザイン。

 中央に同色の閂があり、右手側には弦が直線の南京錠までついているという、徹底振り。


 ここが遊園地、ドリームランドのアトラクション内でなければ、旧家の入り口や………牢屋を想起させるような雰囲気を醸し出している。


『エ……えガ……オ………さサササア……あケ…』

「…………」


 明らかに周囲から浮いている扉なのだが、壊れたナレーションは続いている。

 …とすれば、この扉もアトラクションの一部、なのだろうか?


「いや、おかしいだろ」


 口に出し、即座に推測を否定する。

 周囲には、もう展示品や、肖像画はない。近くに丸っこい文字で『出口』と書かれた、矢印型の看板が置かれているのみ。

 ここは、ドリームキャッスルというアトラクションを体験し終えた客が、外へ向かうためだけの通路、であるはずだ。


 では、従業員や裏方が通る扉なのだろうか? いや、閂はまだしも、そこに錠前をつける必要性は全く感じない。ここを通るたびに、一々鍵を開けるのか?

 そもそも、職員用が使用する扉であるのなら、ドリームキャッスル内の他の扉と同様か、あるいは色を変える程度でなければ、こうして明らかに浮いてしまう。


 では。


 では、これは、この扉は…なんだ?


「拷問、部屋……」

『ハは……ハイ……ギ…かギギ………』

「……」


 ナレーションから発せられるノイズの他に、音がない世界。

 白い壁に青と白のチェック柄の床。

 明るくそれらを照らし出す燭台と、シャンデリアに埋め込まれた電球。


 …そして、黒い、扉。


 世界は実に童話的で明るい。

 なのに、まとう空気はひたすら暗く重い。


「………」


 異常だと、分かっている。理解している。

 けれど、きっとこれは、そう、あの『噂』が関係しているに違いない。

 だからこそ、この先に何があるのか、知りたい気持ちもある。


「…………」


 いつの間にか汗ばんでいた手を伸ばして、黒い錠前を掴む。

 ずっしりとした重さと、長年放棄されていたか、それとも元々か、ざらついた感触が伝わってくる。

 黒い鍵穴に、褐色の鍵を差込めば、恐ろしいほど滑らかに鍵が回り、重い音が続く。

 閂が動かないように固定されていた金具、そこを固定していた弦が動き、南京錠が外れた。


「……開いた」

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