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第十一話

『すっごい沢山の宝物! うわあ、キレイだなあ!』


 天井からの白い光を反射し、輝く色とりどりの宝石…を模したガラス細工の数々。

 金…メッキ処理がされたオルゴールに、木製…とみせかけたプラスチック製の振り子時計。

 綺麗な花…造花が花瓶に入れられ、ガラスなのかどうか分からない透明な靴が何足か並んでいる。勿論、ドレスも並んでいる。


 ここまで見ると、女の子だけしか夢中になれなさそうだが、そこはしっかり配慮してある。


 緩やかな下りになっているスロープの右側は、このような感じであるが、左側には男の子向けに沢山の宝剣や盾、王様や王子様の服、そしてドリームキャッスルの簡単な見取り図が、古びた紙に書かれ置いてある。

 全てが硝子棚に入っているため、中身はそれなりに無事だ。

 それなり、というのは、流石に服などの一部の物が色あせているためだ。他はざっと見た限り、大した損傷はないように思える。


 そんな宝飾の展示が終わると、お次は絵画のコーナーだ。

 こちらはドリームランドの長い歴史を感じさせたいのか、意図的に色あせた色調の肖像画が並んでいる。


『ボク、この人たちに見覚えがあるよ! え? 誰だって? ドリームキャッスルで活躍した人たちだよ! もしかすると、みんなの知っている人もいたりして!』


 それはないだろう、と即座に突っ込みつつ絵画群に目を向ければ、黒髪の人間がほとんどだ。

 それ以外は茶髪で、老人は白髪。赤や緑といった、奇抜な髪の色はほとんど見かけない。

 年齢は子供から老人まで様々、目の色は大体黒から茶色…と、ナレーションが言うように、誰かとそっくりな人間を探し出させるための演出なのだろう。


「多いな…」


 通路がどれほど続くのか分からないが、少なくとも下り道の三分の一がこの肖像画群で占められているのではないだろうか。

 全員が全員、満足そうに笑っているのは結構なことだが、若干やりすぎのような気がする。子供なら特有の集中力で、両親や友人、知り合いに似た顔を探し出すのかもしれない。

 だが、子供ではない私がこれらを眺めても、同じような顔が並んでいるようにしか見えない。


『みんなの…………人…』

「ん?」


 それでも肖像画を鑑賞しながら歩いていると、突然ナレーションの声に雑音が混じり始める。

 照明やら扉やらが不調な中、ナレーションだけは最後まで無事に…とはいかなかったようだ。

 むしろ、今までよく明瞭に案内できていたものだと、感心すべきところだろう。


『ソ、それ、それ、デハ……』


 いよいよ耳障りな雑音が混じり、ナレーションがはっきりと聞こえなくなってきた。

 残念だが、他のアトラクションとは違い、このドリームキャッスルは一本道で、後は先に進むだけだろう。何の問題もない。


『こ…サキ……』

「それっぽくなってきたじゃないか」


 通路はメルヘンな色調で照明もあり明るいが、実にホラーらしい雰囲気になってきた。

 これで照明が激しく点滅して異音でも発生すれば、ドリームではなくホラーキャッスルの完成だ。


 次は何が起きるのか。実に楽しみだ。


『…ギ……みギ……て……』

「ぎ? みぎ……右か」


 一応確認してみるが、私の右手には何もない。つまり、この壊れたナレーションが指しているのは、右手側、の壁ということで。

 さて、何があるのか……期待しつつ顔を向ければ、視界の端に光るモノが映る。


「…なんだ…? 鍵?」


 笑顔だけを浮かべている額縁の一つがやたら光を反射しているな…と思えば、それもそのはず、そこに笑顔はなく、代わりに鍵が存在していた。

 よくよく見れば、額縁で飾られた壁の中央が鍵型に窪んでいて、鍵がはまっている。

 近づいて爪で引っかいてみれば、鍵はあっさり掌へ落ちてくる。褐色の鍵は、見るからに古い鍵の形をしていた。


『オ…オメ…オメデト…………! コノ……アケ…アケ、ケテ………』

「何に…使うんだ?」


 鍵なのは分かる。

 箱だか扉だかの鍵だというのも分かる。

 分からないのは、何故こんなところに鍵があるのか、だ。

 アトラクションも終わりかけだとすれば、選ばれた客への特別な土産、それが入った箱の鍵、というのが妥当な線ではあるが……


 ―――ドリームキャッスルには、隠された地下室があって―――


 その時、ふと、名親の、半分笑いながら放たれた『噂』が頭をよぎる。


「拷問部屋に続く鍵、か。はは」


 掌で鍵を転がしながら、笑う。そんな馬鹿なことがあるはずない。

 しかし、この通路を見た感じ、鍵穴らしき物も、宝箱らしい物もない。

 こうなれば、鍵穴らしいものを見かけたら、逐一確認してみるしかないだろう。


 ただまあ、何事も無くアトラクションが終わり、出口に案内される可能性もあるわけだが。


「その時はその時、だ」


 そう、個人的には中々貴重な体験もできて、満足している。だから、鍵穴があってもなくても構わない。

 そんな軽い気持ちで、とりあえず鍵穴らしき穴を探しつつ、私は緩やかな下り通路を進んでいくのであった。

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