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「暇~」

私はイーストガーデンの中でごろごろ転がっていた。

確かにここは、私以外は父様しか入れない。なので安全って言ったら安全なのだけれど。

枯れていた花々は、第一王女であるセレスティーヌにより息を吹き返し、つぼみをつけていた。

「姉様には悪い事しちゃったなあ…」

セレス姉様は植物の息を吹き返す代償に一週間ほど寝込んでいる。

「ソフィアの尻拭いも慣れたけれど」

寝込むのを覚悟でガーデンを復活させてくれた。

「む~」

姉様や兄様が食事を持ってきてくる時に話しかけてくれたりするけれど、扉の向こうには護衛がついていて長く話す事もない。

仰向けに転がると誰かの足が目に入る。

「レイ?」

あれからレイは三日三晩寝込んだ後、突然むくりと起きたらしい。

― 人間ではない

その通り、レイは何も食べず眠る事もない。

「ソフィア、続きを教えてくれ」

父様とレイは何かを約束したようで、レイは城外に出る事を禁じられてると言う。

人ではない心を持たないレイは、このガーデンに入る事ができるらしい。

ふらふらと私の元へ現れてはこの国のおとぎ話を私にせがむ。

「昨日の続きからね?」

私も私で、暇つぶしの相手に物語を語っていた。

(心がないっていうけれど、こうやって話していると普通に人のようなのよね)。

教えてとせがむレイは少年のようだったし、笑ったりするのを見ると、とても心がないとは思えないのだった。

「今度はレイの番よ?」

「何が知りたい?」

お話しをした後は、レイの話を聞くことにしている。

だって私、暇だし。

「ん~。今日はレイの国の王様の話とか?」

ここ数日で分かったのはレイには自分の記憶がところどころ欠けているらしく、わかるのはレイという名前だけ。

年齢も階級も職業もわからない。

今は、兄様の服を着ているから、この城にもなじんで見えるけど、着ていた服も全く見たことないものだし、何より黒目黒髪はこの国では珍しい。

「俺の国には王などいない」

「え?」

無表情につぶやいたレイを見る。

(王がいないって…? どうやって国を治めるの?)

「ふ…」

「何よ…また?」

レイはたまに私が思っている事が分かっているかのように笑う。聞けば「想像ついたから」って言うけど…何か違う気がいている。

「ヒトに選ばれる王のようなものがいる」

「???」

「俺もよくわからない。俺は選ばないから」

(あ、まただ…)

ほんのちょっとだけど苦しい表情をするのよね。

「国を治めるには…ヒトに選ばれたものが法を作り、それに基づき生活を送る事になる」

「ふうん?」

ヒトに選ばれたものって…。ヒトの事をどう思っているんだろう。あんまりよさそうな感じじゃないような気がするわ。

私は抱えていた膝をほどいて、パフンと大の字に空を見上げた。

「レイは…基づいた法の元で生活してたって事?」

「…そうとも言うが、違うともいう。俺は法よりヒトに支配されていたような気がする」

「ヒト…に支配?」

「なんとなくだけど」

えーと?

見た目は100%私たちと変わらないけれど、心を持たない人じゃないレイ?

で、レイは“ヒト”に支配されてた?

「そこで何してたんだろうね?」

私は答えを求めるでもなくつぶやいた。

「わからない」

感情のないレイの声が風に流されて消えていった。


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