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リバース チェンジ ワールド  作者: 白黒招き猫
第3章 妖精大陸探索編
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いきなりのバトル

 森の中を駆ける。

周囲は闇に沈んでいるが、相手にとっては関係無いらしい。

背後に迫る殺気を槍の一振りで弾き飛ばす。


 キキン!


 弾かれたのは2本の黒い矢だ。

それはステルス機能があり、視認できず音もしない嫌らしい矢。

さらに頭上からかなりの熱量が1つ、高速で迫ってくる。

今の2本は囮、上が本命か。


 ズズン!!


 跳躍して距離を取ると、俺の居た場所に赤い矢が突き刺さり爆発した。

クレーターのサイズから考えると威力は中級魔法以上、上級魔法未満といったところだ。

だが、これだけの威力を連射できるのは驚異だろう。


「高威力のマジックアローに異常なホーミング。これが『曲射』の由来か……」


 そう、最も脅威なのは矢の威力ではない。

物理法則を無視したホーミング性能だ。

先の黒い矢は、森の木々を避けて枝を縫うように追ってきた。

赤い矢は遥か上空から正確に俺を狙ってきた。

射手がここから視認できないほど遠くにいるのに、だ。


「誘導ミサイルかよ、ったく……。む?」


 矢に気を取られた一瞬で周囲に気配が生まれていた。

隠蔽で隠れていると思しき希薄な気配。

普通なら敵が隠れていると判断するところだが……。


「気配が20個。本物が混じっているのか全部ダミーか、判断できないな……とっ!」


 周囲の気配が一斉に向かってくる。

探知に集中した瞬間足元に違和感、再び大きく跳躍する。 

目を向けると地面から刃が生えていた。

気配は全てダミーだったらしい。


「土遁かよ。これだから転生者って奴は……」


 『曲射』の相方である『軽業』だ。

そう、俺はギフト持ちの転生者である2人と交戦中なのだ。

ふと、気づくと妙に空が明るい。

夜明けには早すぎるんだが。


「って、おいおい無茶するな!」


 空を埋め尽くすように降り注ぐ赤い矢を見て、溜め息を一つ。

確かに相方のスイフは安全地帯の地中だ。

だが


「エルフが森の中で火属性魔法を乱射するんじゃねえよ!」


 遥か彼方で機関銃の様にマジックアローを連射しているであろうアミンに俺は叫んだ。


---------------------------


 前日の朝


 一仕事終えた俺は港町に戻り、予定通り船に乗り込んだ。

運賃は思ったより安い。

おそらく安くても大勢が利用してくれた方が儲けになるのだろう。

良い心がけだな。


 値段が高いと客が利用せず、維持費で赤字になるので値段を上げる。

繰り返される負のスパイラル、どこかで聞いた話だ。

前世の無能な営業者も見習うべきだと思う。

どこの誰とは言わんが。


 途中何度か魔物の襲撃があったが、乗客の冒険者によって全て撃退された。

値段が安いのは護衛代を差し引いているからなのかもしれないな。

勿論俺も参戦した。

海の魔物は初めて見るし。


 ちなみに襲ってきた魔物に妖獣はいなかった。

何でも海は瘴気が溜まりにくいんだとか。

海流とかの影響なのかな? 理由は不明である。


 船は順調に進み、数日後には無事西大陸にたどり着いた。

遅いとか思ってはいけない。

地球だって帆船の時代はそんなものだったのだ。

日帰りなんて夢のまた夢だ。


 え? 南大陸に行った時?

あの時は使い魔というエンジンが付いていたので例外だ。

でもテイムした大型の海の魔物に引っ張らせるというのは、良いアイディアだと思うんだが。

それができる高位のテイマーが少ないんだろうな。




「やってきました西大陸」


〈キュ~……〉


 空と海ばっかり見ていたリーフは退屈だったようだ。

何となく元気が無い。

それとも乗客の護衛を任せ、俺が一人で戦ってた時に何かあったのだろうか?

あの時は時々女性の黄色い歓声が聞こえてきたが。


 さて、時刻は夜である。

夜と言えば酒場。

レッツ情報収集だ。

酒はNGだが。


 さすがは異世界、プライバシーもクソも無い。

金貨をジャラジャラばら撒けば、酔っ払い達の口は滑るように動き、浮かぶように軽くなる。

ターゲットがそこそこの有名人であったことも幸いした。

結構な情報が集まった。


 まず例の3人組、ゴードン、アミン、スイフはここを拠点にしている。

3人はパーティを組んでいて実績も多い。

しかし、何故か他の冒険者とは距離を取りがち。

そして最も重要な証言が


「最近ゴードンを見かけない、か」


 残りの2人は依頼をこなしているが、様子がおかしいようだ。

どこか雰囲気が暗く、数日に一回は必ずとあるダンジョンに向かうらしい。

そのダンジョンは中級クラスの難易度だったはずなのに、最近未帰還者が急増している。

ゴードンの死亡届はギルドに出されていないが、そのダンジョンで行方不明になったのではないか。

そう噂されている。


 しかし、そのダンジョンはEランクの冒険者なら攻略できるレベル。

D、Cランクの冒険者まで未帰還なのは異常である。

ましてやBランクのゴードンなら単独でも突破は可能なはず。

帰還した冒険者によると、ダンジョン内の様子は以前と変わらないそうだ。

強力なモンスターが湧いたわけでもないなら何が起こっているのか?


 憶測混じりの情報が多いが、確かに何かあったと考えるのが妥当だ。

そしてゴードンはギフトという爆弾を抱えている。

不測の事態が起きた結果……という事も考えられる。

近々ギルドから調査隊が派遣されるそうだが、その前に調べてみた方が良いのかもしれない。

その為には


「残りの二人の事情聴取だな」


---------------------


 当日の朝


 俺は中央大陸のギルドよりも大きい、西大陸の冒険者ギルドの建物に向かっていた。

流石は本場、まだ随分離れているのに良く見える巨大な建物だ。

見栄ではなく、本当にあのサイズでないと収まり切れないのだろう。


 周囲を見渡せば、まさに多種多様。

種族も外見も違う者達が溢れている。

俺以外で魔人族を見た時は驚いた。

まあ、鬼人族も吸血鬼族も広い意味では同じ魔人族なんだけど。


「そういや、ゴードンは鬼人族なんだったな」


 念のため装備はそこそこのレベルの物に変えてある。

神槍杖とか古龍のコートとか、鑑定されると騒ぎになりそうだからな。

ミスリルやら亜竜製なので性能的には十分だろう。

本気で使うと壊れるだろうけど。




「留守か」


「ああ、昨日からな。夜には戻ると思うぜ」


「どうも」


 朝からギルドは混んでいた。

ターゲットの顔を知らないので、仲間を待っているらしいおっさんに聞いてみることに。

すると昨日から例のダンジョンに行っているとのこと。

お礼に銀貨を1枚渡しておく。


 しかし、帰る時間まで教えてもらえるとはね。

いかに連中が頻繁にダンジョンに向かっているかが解るな。

周りも不思議に思っているんだろう。


 突然消えたゴードン。

実力に合わないダンジョンに通い詰める2人。

そして突然増えた被害。

関係無しとは思えない。


「調べ物でもしてるか」


 事前情報は集めたが、ここならより詳しい事が解るだろう。




「お、あいつらか」


 思いつめたような顔の2人組。

エルフの女と小柄な妖精族グラスワーカーの男。

『曲射のアミン』と『軽業のスイフ』だ。


 あれだけ体験すれば、もう直に見れば解る。

この胸糞悪い感じ、間違いなくギフト持ちだ。

早速アプローチしよう。


-------------


 現在


「その結果がこれかい。マズったよなあ……」


 空爆現場のような惨状でちょっと後悔する。

ストレートに「君らのギフトについて話があるんだけど」と話しかけた結果だ。

どうやらお話しする気も無い様で、いきなり攻撃されたのだ。

少々うかつだったな。

向こうからしてみれば、正体不明の殺し屋みたいなものだし。


 建物が吹っ飛びそうだったので脱出し森に逃げ込んだ。

ギルドは大騒ぎだろうな。

っていうか、あいつら高位の冒険者だろ?

あんな派手な事して良いのかよ。


「ま、とりあえずは町から離れよう」


 結局いつもと同じか。

まずは拳でOHANASIしてから説得する。

成功率が低いのは玉に傷だけど。

他に手は無いし。


 その為にもまずは逃げよう。

人目が無いとこまで逃げたら反撃だ。

覚悟しろよ。


時系列が解りにくいかな?


次回、即決着。

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