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リバース チェンジ ワールド  作者: 白黒招き猫
第2章 獣人大陸内乱編
82/216

歪んだ愛の結末

帰宅してから急いで仕上げました。


ちょっと内容が整理されてないかな?

 目的の町にたどり着いた俺は絶句した。

住民の4割近くが人間じゃないのだ。

大した人口の町ではないが比率がおかしい。


 外見上は人間だ。

違和感を感じている者がいない様なので人格や記憶もあるのだろう。

生体反応もあるのでリビングデッドなどではない。

では彼らは何なのか?


 肉人形フレッシュ・ゴーレム、それが鑑定結果だった。

これは死体を材料に作ったゴーレムや、死体に仮初の命を吹き込んだ魔法生物の総称だ。

この場合は後者になるのだが、クオリティが凄まじい。

死体を動かしているだけのリビングデッドとは大きく違う。


 まず、仮初とはいえ生きている。

だから食事も摂るし代謝もあるので、汗をかき、髪も伸び、傷も治る。

体温もあるので触ったところで気付かない。

そして身体を動かしている擬似人格も本人そっくりのようだ。

おそらく生きたまま肉人形に変えられたのだろう。

これなら脳からいくらでもデータを取り出せる。


「人間技じゃない、か……」


 技術的にも倫理的にも人間の行いじゃない。

危険な方向に突きぬけてしまった者の仕業だ。

調査の結果、肉人形達は接触によって人間から生命力を奪っている。

そして、それを溜め込み聖女とやらに捧げているようだ。


 生命力を奪われ弱った住民は教主の元へ治療に向かう。

そこで祝福だか洗礼だかの儀式で癒してもらおうとするわけだ。

しかし、その儀式の実態は人間を肉人形に変えるという邪法。

戦争でもないのに、ほんの数ヶ月で数百人の犠牲者というのは結構な数だろう。

感染タイプのゾンビや吸血鬼並みである。


「シゼムには気の毒だが、やっぱり奇跡は転がっていないか」


 いや、むしろラッキーだったのか?

あの3人が慌て者だったら、今頃シゼムも肉人形に変えられていたかもしれない。

噂を安易に信じない慎重さはグッジョブだ。


「情状酌量……加味してもやりすぎだな……」


 教主とやらの暴走の原因も調べてみた。

全ては愛する人の為、ありがちと言えばありがちだ。

だが、ちょっと極端すぎる気がする。

まるで感情に慣れていないというか、振り回されているというか。

シゼムやニクスのケースを考えると前世の記憶の影響だろうな。


--------------------


 新月の夜。

今日は月に一度の納税の日。

つまりは肉人形達が聖女に生命力を捧げる日だ。

深夜、数百体の肉人形達がゾロゾロと聖堂を目指し歩いて行く。

ホラーな光景だ。


 俺はハウルとプルートを引き連れ、すでに聖堂内部に隠れている。

肉人形が集まり切ったら、フェイが外で空間魔法の結界を張り聖堂を封鎖する予定だ。

聖女の種族は『堕聖女フォールン・マリア』、すでにモンスター扱いだ。

その周囲には生前は実力者だったのだろう見た目の肉人形が護衛についている。

というか、生きた人間は教主一人だ。


「ギフトは……、回復魔法の超強化、更に永続化ね。最後は【人体改造】? これか……」


 問題のギフトを発見した。

悪の秘密結社かよ、まったく。

最初の2つは非常にまともだ。

ここでやめておけば良かったものを……。

いや、結局はギフトだからアウトか。


「(どうだ、プルート。戻せるか?)」


〈(おそらくは不可能……。肉体の変質が大きすぎ、魂もおそらく失われています……)〉


「(そうか。まあ、後で直接調べてみよう)」


〈(御意……)〉


 そうこうしている内に肉人形は集まり切ったようだ。

教主は昼間の様に説法などしない。

肉人形も言葉を発さない。

静寂の聖堂で、肉人形達から生命力が堕聖女に流れ込んでいく。


〈(主様~、封鎖完了しました~)〉


〈ご苦労、フェイ。ハウルは教主を無力化しろ。プルートは肉人形だ。俺は聖女をやる〉


〈了解です〉


〈御意〉


 隠れていた天井からの奇襲。

場の制圧は拍子抜けするほどあっさり完了した。

教主達のスキルは戦闘向けではなかったし、仮想人格で動く肉人形は生前ほど巧みには動けない。

そもそも襲撃を受けるとは全く予想していなかったようだ。


 教主は両の手足を砕かれた。

ハウルに押さえつけられ、自慢の回復魔法を使う事もできない。

肉人形など何体いてもプルートの敵ではない。

延々再生しようとするが、それだけだ。

残ったのは


「斬っても焼いても再生する、か。どうやら俺たちと同じタイプみたいだな」


 フィオの分析は正しい。

堕聖女の不死身の秘密は生命の共有。

彼女の命は自身の身体には存在しない。

つまり、教主が生きている限り彼女は死なないのだ。


 これはフィオと使い魔の関係に非常に近い。

ならば手段は2つ。

教主の殺害かギフトの消去だ。

フィオは彼女を救う方法は無いと判断した。


「悪く思うな」


 答えなど期待していなかった。

ただ、なんとなく口にしただけだった。

だが


〈お願いします〉


「!?」


 その声が聞こえたのは自分だけのようだ。

目を凝らすと堕聖女の姿が2重に見える。

無表情な実体、そして悲しげな霊体。

適当に攻撃を繰り出しながら問いかける。


「意識が在ったのか」


〈はい。ただし、彼の望む反応以外はできません。彼が私の肉体を改造した時、そうなってしまいました〉


 教主自身も自覚は無かっただろう。

彼は彼女の肉体が病気にならず、怪我もすぐ治る、そんな理想的な体に作り替えた。

だが、その理想の中には『自分を裏切らないで欲しい』『何より自分を優先して欲しい』といった願望も含まれていた。


 それ自体は誰もが持ち、抱く感情だろう。

しかし、ギフトはそれを強引に実現してしまった。

結果、彼女は心と身体を縛られてしまい、彼の暴走を止められなかった。


〈私もまた罪人の片割れなのです。私は彼が周囲から称賛される偉人になることを望んでいたのですから〉


「焚き付けた、と?」


〈私は彼を愛しています。不器用で臆病で、でも優しい彼を。彼に救われた後、私は積極的に彼の名声を高めようとしました。その結果、彼を壊してしまった〉


 実は彼女は自分が死病(癌)に侵されたことに気付いていた。

早期に治療すれば治る可能性があることも知っていた。

だが、周囲に知らせなかった。

彼なら問題なく治せると思っていたのだ。


 ならば、重くなった病気を治した方が彼の名が売れる。

神童と呼ばれていた彼には敵も多かった。

そういった嫉妬や悪意を跳ね除けられるだけの名声を、彼に持たせてあげたかった。

彼女は、そこに彼への甘えがあることに気付いていなかったのだ。

そして全てが狂ってしまった。


〈彼の罪は私の罪です。私はもう人には戻れませんが、彼はまだ引き返せるかもしれない〉


「……どうだかな」


〈愚かな頼みであることは承知しています。ですが、どうか彼にチャンスを……〉


「……良いだろう、機会だけは与える」


「! ありがとうございます」


 堕聖女を一瞬で八つ裂きにして動きを止める。

プルートに確認してみたが、やはり肉人形を人間に戻すことは不可能だった。

未だに再生しようと蠢く肉人形。

この不死身っぷり、戦闘用に作られていたら相当凶悪だった気がするな。


 使役者を殺すかギフトを消去しないと止まらない軍団。

これ以上被害が広がらない内に、滅ぼす。


------------------------


「がああああああああああああああああ!!」


「おい、ちょっと話を……」


「殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺すコロすコロすコロすコロすコロすコロスコロスコロスコロスコロス……」


「お前の彼女が……って、暴走!?」


 ギフトとは関係なく魔力が暴走し始めた。

こいつ俺を道連れに自爆する気か?

魔力が変質し瘴気となって吹き出す。

このままでは直に妖獣化してしまうだろう。


「はあ……、これがお前の選択か……」


 愛憎は表裏一体って事か。

もはや俺を殺せれば何がどうなってもいいってワケね。


「じゃあな」


 ザン


 俺は壊れたようにブツブツ呟く教主の首を、刎ね飛ばした。

すると瘴気は徐々に散り、後には教主の死体が残されていた。

せめてもの情けということで首と胴体を聖女の塵の所に持って行き、火葬にしてやった。


「共依存ってやつだったのかね。難しいな」


〈?〉


〈お互いがいなければ生きられなかったということだ……〉


 人の感情に興味の無いハウルには分かりにくいか。

生きられないというか正気も保てなかったみたいだしな。

何にせよ、これでこの町には用は無い。

シゼムの従者たちに報告して、西大陸に向かうとしよう。




 翌日、その町では数百人の住民が忽然と消えるという事件で大騒ぎになった。

政府による調査も行われたが、詳しい事は何も解らなかった。

ただ、行方不明者が新興宗教の信者ばかりであり、教祖らも消えていたことが判明した。

最終的には新興宗教による住民失踪事件として処理され、規制案も出されることになった。

その事件の真相を知る者は悪魔とその下僕だけである。







    第2章   END


次回は人物紹介。

登場人物多くなったなあ。

次々切り捨てていかないと作者自身も覚えきれません。


その次は設定資料ですかね。

また南大陸の歴史って感じで舞台設定や背景を書こうかと。

そんなもん要らんから第3章書けや、って言われるかな?

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