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リバース チェンジ ワールド  作者: 白黒招き猫
第2章 獣人大陸内乱編
68/216

モフモフ再び

 ニクスは竜人、獣人の中でも最も身体能力に優れた種族である。

獣人の特性上、身体能力強化には高い適性を持ち、才能ならアレックスに匹敵する。

そして通常なら10のリソースは強化に5、反動軽減に5使われるが、彼は反動軽減を行わず全てを強化に回している。

崩壊する肉体をギフトの再生能力で強引に維持し、痛覚を遮断し無理を通す。


 戦闘技術に関しても彼は一流。

前世の経験も大きなアドバンテージとなっている。

軍人であった彼は軍隊式の格闘術を身に着けている。

さらに今世での戦闘経験を加えれば経験ではフィオにも匹敵するだろう。

だというのに


「ぬ、ぐぅ!」


 何とか喰らい付いていけたのは最初だけ。

相手の雰囲気が一変してからは押される一方だ。

近づけば槍と短剣の乱舞。

離れれば魔法の雨あられ。

完全にペースを握られている。


 魔人が後方に跳びながら槍を振るう。

振り下ろした戦斧が槍と衝突し、砕けた。

同時に悪寒が走る。

とっさに大剣かざすと軽い衝突音。

魔法の様に放たれた2本の短剣が大剣に刺さっていた。

直後


ドォン!


 短剣の宝石が輝き炸裂する。

だが、ニクスもとっさに大剣を捨て爆発から逃れる。

さらに吹き飛んだ武器の代わりをストレージから取り出す。

取り出したのはハルバード。

両手で握る。


 しかし、開いた距離は致命的。

2人の間に巨大な大地の壁がせり上がる。

おまけに壁の表面から無数の突起が現れ、撃ち出される。

岩の弾丸による一斉射撃。


 ハルバード一本では捌ききれない。

視界を埋め尽くすような飽和攻撃なので回避も不能。


「ガアァァァァ!」


 ニクスの選択は切り札の一枚の使用。

竜人も中でも使える者はほとんどいない能力『ブレス』。

ニクスのブレスは雷属性。

サンダーブレスが岩石弾を迎撃する。


「(? 消費が軽い……、どういう事だ?)」


 負担の軽さに違和感を抱くが、今はそんなことを気にしている場合ではない。

壁が見る見る小さくなっていき、ようやく弾丸が途絶える。

ようやく防ぎ切った、と安堵した瞬間


「(後ろ!?)」


 音も気配も無い。

だが、直感に従い身を躱す。

振り抜かれた短剣が僅かに肌を傷つけるが、どうにか回避に成功する。

このタイミングでの攻撃は、魔法が発動している間に近づいたとしか考えられない。

下手をすれば自分も巻き込みかねない弾幕の中、ここまで完璧に隠密行動ができるとは。


 さらに追撃、青白い炎の波が迫る。

息もつかせぬ武器と魔法のコンビネーション。

上に飛んで回避しようとするが身体に違和感が。


「(動きが鈍い!? 毒か!)」


 サマエルの毒が回避を妨害。

やむなくニクスは迎撃を選ぶ。

ハルバードに渾身の魔力を纏わせ炎の波に叩き込む。

中ほどまで燃え尽きてしまうが、ハルバードは見事に波を切り裂く。

しかし、その向こうに魔人がいない。


 奇跡の回避も続かず、上から降り注ぐ氷の弾丸がニクスをボロボロに打ち抜いた。


------------------


 アジェ、ロサ、グラの3人は状況が理解できていなかった。

遂にドラゴンが動き出し、絶体絶命……のはずだったのだが。

そのドラゴン2頭は、砦に近づく前に動く火山みたいな怪獣に叩きのめされていた。

ちなみにヴァルカンが彼らを助けてドラゴンと戦うのは2回目なのだが、前回3人はヴァルカンの姿を見ていない。


「うわ~! うわ~! 何アレ何アレ!」


「ロサ、落ち着いて……」


「紫の溶岩? しかも火竜が焼かれる? あれはいったい……」


 ドラゴンは高温に強い火竜と飛行能力に優れる風竜。

飛行できず高熱を武器とするヴァルカンには相性が悪い相手、のはずなのだが。

火竜は闇、地、火の混合属性の溶岩に焼かれている。

風竜は撒き散らされる火山弾に被弾し翼膜を破られ墜落している。

そして流れ弾が過激派の軍にも降り注いでいる。

もはやこちらを狙うどころの話ではない。


 風竜が圧縮した風のブレスを撃ち出す。

ヴァルカンは避けようともせずブレスは直撃、しかし黒い外殻が僅かに欠けただけだった。

しかも外殻はただの固まった溶岩だ。

即座に下から溶岩が染み出し元に戻る。

ヴァルカンは大地に足を着けている限り、無限に力を振るい再生できる。

倒すには綿密な作戦が必要なのだが、過激派軍にそれを要求するのは酷だろう。


 お返しとばかりに火山弾が撃ち出され、今度こそ風竜をK.Oした。

しかし偶然にも風竜がいたのは砦の方向だった。

ばら撒かれた火山弾が1つ、運悪く砦に飛来する。

大慌てになる3人。


「嘘! こっち来る!」


「不味い! 逃げ……」


ガァン!


「……あれ?」


「何で?」


 流れ弾は突然砦を包んだ魔法障壁に防がれていた。

その規模、その強度、常識外れと言ってもいいレベルだ。

獣人最高と言われる魔法使いである狐族のイチョウ、海に住んでいるため最近では内戦に静観を決め込んでいる人魚族マーメイドの族長でもこれほどの魔法は使えないだろう。

3人も兵士たちも困惑する。


〈まったく、ヴァルカンは不器用だね〉


「え?」


「誰?」


「いつの間に?」


 3人のすぐ近く、防壁の上に子供が立っていた。

背を向けているので小柄な体躯と緑の髪しか判らない。

服も髪と同じ緑色のコート、声だけでは男女の判別は難しい。


〈まあ、向き不向きはあるし、そのために僕が控えていたんだけどね〉


 振り向いた顔はやはり中性的な、しかし整った美貌。

前髪には一房赤いメッシュが入り、瞳も赤い。

頭部には大きめの獣耳がある。

僕、ということは男だろうか? 幼い見た目に反し態度は大きい。

尤もどこか背伸びしているような、保護欲をそそる雰囲気が滲み出している。


 アジェとグラは警戒を強める。

守ってくれたのだから敵ではないだろう。

だが、アジェの見間違いでなければ、彼は何も無い空間に滲み出るように出現した。

グラの気のせいでなければ、彼からは匂いも気配も感じない。

一体、何者なのか?

しかし、ここには緊張をぶち壊すバカ娘の存在が。


「うっわ~! カワイイ! ね、君誰!? 何族!? いつの間に何でここに!?」


〈……うるさい、黙れ雌猫。話しかけるな〉


「「「ひどっ!?」」」


 空気を読まないロサもロサだが、彼の返答も強烈だった。

彼の名はリーフ。

意外に根に持つタイプである。

女性全般が苦手なだけで、ロサ個人に含む所があるわけではない。

毒舌はデフォルトである。


〈初めに言っておこうか。耳や尻尾を触ろうとしたり、抱きしめて頬ずりしたり、キスをしたりしようとすれば……〉


「……すれば?」


「どうするんだ?」


〈頭を吹き飛ばす〉


「……」


「……」


「……あう」


 赤い瞳に宿る底知れぬ闇に沈黙するアジェとグラ。

実行する前に警告され落ち込むロサ。

余談だがリーフは神獣であり宝石の精霊のような存在でもある。

よって性別はなく、男性口調なのも主人に合わせているからで深い意味はない。

いや、実は女性口調が嫌なのかもしれないが……。


〈……まあいい。ここが一番近かっただけで深い意味はない。この戦場は全て僕の探知範囲内で射程範囲内だからね〉


「近いって……」


「何に?」


「うう、せめて耳を……」


 未練がましいロサをスパッと無視するリーフと2人。

こんな茶番ができるのも『もうここは安全である』と直感的に察したからである。

事実リーフは、必要以上に獣人が戦闘に巻き込まれないように戦場をコントロールしている。

シザーに関しては微妙だったが死んではいないのでスルーであった。


〈あそこからさ〉


 リーフの知覚はフィオに打ちのめされたニクスが、最後の切り札『竜化』のギフトを起動させようとしていることを察していた。

そして、悪魔と竜人の第2ラウンドが開始される。



再登場の人型リーフ。


相変わらず裏方で頑張っています。


フィオも暗剣、魔法、隠密、毒短剣とフルコース攻めです。

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