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リバース チェンジ ワールド  作者: 白黒招き猫
第2章 獣人大陸内乱編
66/216

エンシェント・ドラゴン

PC新しくしました。


最新ではなく去年の秋ごろのモデルだけどスペックは3倍以上!


どれだけ古かったんだろう、今までの。


OSもVistaから8.1に。


ただ、操作性が違いすぎてまだ慣れない……。

 地上同様に空中でも戦いは行われていた。

カリスに挑みかかっているのは5体の成竜である。

普通ならいくら5対1とはいえ、自分の3倍以上の大きさの同族に挑むなど有りえない。

しかし、狂乱状態の成竜達は恐れることなく襲いかかる。


 カリスの眼には5体の自我が、すでに失われかけていることがはっきりと解った。

この世界の竜とは聖獣、幻獣と称される存在である。

歪みによって変質した妖獣、魔力を蓄えた魔獣とは一線を隔する存在。

そのもっとも大きな違いは高度な知性と理性である。

そういった意味では彼らはすでに魔獣レベルにまで堕ちている。


〈哀れな……〉


 カリスの心中は複雑である。

かつて古竜の同胞を裏切り、里を捨てたカリス。

そして禁術の呪いで狂い、今の主人に倒された過去。

巨人族の監視という義務を忘れた、自分勝手で愚かだった自分。


 ゲームの設定とはいえ、それはカリスにとっての事実。

その自分を主人に託した兄。

罰としての追放などと言っていたが、その本心が自分を救うためであったことは卵の状態であったカリスにも解っていた。

罪人として幽閉されないよう逃がしてくれたのだ。

里でも最強の一角である水晶竜といえど、周囲を納得させるのは困難だっただろうに。


 そして新たな家族となった主人とその眷属。

カリスは誓ったのだ。

今度こそ道は踏み外さないと。

その自分に比べれば、操られているだけの竜達を責める気になどなれない。


 竜の里で長や長老たちに怒りを抱いたのは、何もフィオに反抗した事だけが理由ではない。

彼らが操られた竜達をすでに切り捨てていたことが逆鱗に触れたのだ。

主人は出来る限り救おうとしてくれているのに肝心の竜達は……。

止められなければ大暴れしていたかもしれない。


 竜族を救った代償に、今の主人は浄化が使えない。

再使用が可能になるまで彼らを大人しくさせておく必要がある。

眼下ではフィオとニクスが対峙していた。

上で暴れては邪魔になるかもしれない。

カリスは5体を適当にあしらいながら場所を移すことにする。

自分が力を振るうにもその方が都合がいいのだ。


----------------


「お互い顔を合わせるのは初めてだな」


 人に竜のパーツを組み合わせた人間よりの竜人。

それがニクスの外見だった。

ところどころに紫の竜鱗が見える。

頭部には2本の角、おそらく翼も出せるのだろう。


「……部下から話は聞いている。お前も同類なのか?」


「同類? 転生者かって意味か?」


「! やはり……」


 確証があったわけではない。

ちょっとカマをかけてみただけだ。

しかし反応は劇的だった。


「なぜこんな事をする! シゼムを襲ったのもお前なんだろう? ネットワークで騒ぎになっていたぞ!」


 は? ネットワーク?

それにシゼムを知っている?

これはいよいよ事情聴取が必須になってきたな。


「生憎だけど俺は別口だ。それより色々と聞き捨てならないことを言っていたな。詳しく教えてもらおうか」


「別口? 転移者って奴か? どっちにしても極力敵対しない様に言われたはずだろう?」


「……誰に?」


「もちろん神だ」


 成程ねぇ。

その自称神が黒幕か。

いや、実際に神なのかもしれないが、ギフトの邪気を見る限り悪神、邪神の類だろう。


「ニクス、シゼムの末路は聞いているんだろう? 奴はギフトの使い過ぎで廃人になった」


「そんな話は聞いていない。何者かに襲われ再起不能になったというくらいだ」


「ギフトは呪いだ。使うほどに使用者を侵食し、狂わせる」


「それを信じろと? 何を根拠に?」


「お前ももう危険なレベルにまで来ている。こうして話が通じるのが不思議なくらいに」


「ギフトは神から与えられた力だ。それにリスクを負ってでも使うだけの価値がある」


「ドラゴンや部下たちを見ろ。完全に狂っているぞ」


「これが最後の戦いなんだ。興奮しない方がおかしい」


「ギフトを使うのを止めろ。大人しくギフトを浄化させろ。取り返しがつかない事になるぞ」


「断る。お前を倒して未来を切り開く」


「このままではお前の望む未来は来ないぞ」


「黙れ。部下の仇を取らせてもらう」


 ニクスが右手に戦斧、左手に大剣を構え背中に竜の翼を生やす。

交渉決裂、やるしかないな。

初めて話したが彼からは強固な意志を、信念を感じた。

譲れない何かがあり、そのために闘っているのだろう。

その意志力がギフトを抑え込んでいるのかもしれない。


「惜しいな……」


 一騎打ちのつもりなのだろう、周囲の部下たちが距離を取り始める。

決闘は正々堂々って事か。

こっちが構えるのを待っているようだ。

俺は解析メガネで彼の能力を見てみることにした。

モノクル型のマジックアイテムを左目に着け起動する。


 ふむ、種族はハイ・ドラゴノイドで属性は雷か。

STはスピードとパワーに特化している。

しかも何かの要素で強化されている。

これがドラゴン達から吸い取った力か?

竜人の限界を超えているぞ。


 肝心のギフトは……、『超速回復』『ドラゴンスレイブ』『竜化』ね。

うん、予想より悪いな。

回復能力は高速ではなく超速、竜を支配していたのは使役テイムではなく隷属スレイブだ。

奴隷だから主人に搾取されるんだろう。

後者について本人は気にならなかったんだろうか?

まあ、今更か。


 俺が槍を構え翼を広げると、ニクスが猛然と突っ込んできた。

言葉で語り合う時は過ぎた。

後は力で押し通るのみだ。


ギギィ!


「お?」


「なっ!?」


 初めの一合で二人揃って驚きの声を上げる。

打ち合った武器、ニクスの斧と剣が刃こぼれしたのだ。

俺の槍は神具である。

破壊は不可能と言っても良い。

それと打ち合えばどんな武器でも無事では済まないはずなのだが……。

この程度の損傷で済むとは正直意外だった。


「何だその槍は!? 竜の骨と牙と角から作った武器が欠けるなんて……」


「ほう……」


 成程、納得だ。

それだけの素材を使えば相当な強度の武器が作れるだろう。

もちろん、それだけではない。

斧に大剣という頑丈な武器であったこともある。

そして最も重要なのはニクスの技量が高いということだ。


 俺と打ち合う彼の技量は超一流だ。

単純な技量なら俺より上かもしれない。

しかもこの合理的な動き、我流で身に付くものではない。

この動きは


「あんた元軍人か?」


「!」


 図星のようだ。

稀にVRゲームにプロの軍人や武術家が参加することがあった。

シューティングゲームにスナイパー、格闘ゲームに空手家。

条件が同じなら彼等は無敵であり、苦情が殺到したという。

俺も何度か対戦したことはあったが、知覚速度が2倍も違うのに接戦で、勝率は5分5分だった。


 軍人としての経験があり、こちらの世界でも研鑽を積んだ結果がこの強さか。

敵ながら見事だ。

だが、気になることはもう一つ。

そもそも何でこいつはこちらの動きに反応できるのだろう。


 肉体を持つ生物には反応速度に限界がある。

体内の情報は電気信号で伝わるので、逆に言えば雷速以上の反応は出来ない。 

魔法で補助しても、限界を超えれば過剰情報で神経が焼けてしまう。


 筋力にしてもそれは同じ。

通常人間の筋力は半分も引き出せない。

全力を出すと反動で筋肉が断裂してしまうので、脳がリミッターをかけているのだ。

極限状態でそのリミッターが外れた状態が『火事場の馬鹿力』と呼ばれるわけだ。

こちらも魔法で補助しても反動を0にするのは難しい。

少なくとも魔法タイプではないニクスには無理だ。


 一方、俺は悪魔、高等霊的生物だ。

思ったとおりに動けるよう体を作っているから、反動など無く100%の力を出せる。

魔力で構成された肉体は情報伝達に神経など使っていない。

思考はそのまま反応であり、限界速度など無い。

つまり、普通ならばいかに竜人が屈強な種族でも悪魔には勝てない。

そもそものスペックが違うのだ。


パリパリ


パチパチ


 ん? ニクスの体から雷光が漏れている?

もう一度、詳しく解析してみる。

すると


「お前……」


「問答無用!」


 彼は全身に過電流を流して神経伝達速度を上げ、こちらに喰らい付いていた。

当然、神経は焼き切れていくだろう。

筋力にしても同様だ。

筋繊維が引き千切れるのも構わず全力を振るっている。

電流操作で脳のリミッターを強引に解除しているのだろう。

そして崩壊する肉体を超速再生で何とか維持しているのだ。


 半端な覚悟で出来る事では無い。

痛覚を遮断しているのかもしれないが、それでも自分の身を焼き崩壊させるような手段を取れる者がどれだけいるだろう。

見事としか言いようがない。

彼は文字通り命をかけて戦っているのだ。

では、自分は?


 思い起こせば自分はどこか傲慢になっていたのではないか?

圧倒的な肉体的スペックと武器の性能。

強大な下僕たち。

それらを手にした自分は他者を見下していたのではないか?

今の自分に彼らを裁く資格があるのか?


ギィン!


 一際強く打ち合い、互いの距離が開く。

ニクスの一撃は決してパワー負けしていなかった。

眼を閉じる。

目の前の強者への敬意が湧き、慢心が消える。


「謝罪しよう」


「何?」


「俺はあんたを格下と見下していた。だが、違った。あんた自身は紛れもない英傑だ」


 カチリ、と何かが噛み合ったような感覚。

同時に肉体がさらに強靭に再構成されていく。

精神生命体は心がその存在の強さに直結する。

傲慢とは神の在りかたの一つなのだろう。

だが、フィオはそれを否定する。

さらに強く、もっと強く。


「感謝する。そして、本心からあんたを助けたいと思う」


 元々ニクス個人は嫌いではなく。むしろ認めていたのだ。

義務ではなく己の意思で。

眼を開く。

先ほどまでとは明らかに違う輝き。

その紫の魔眼が竜人の勇者を捉える。


リィン


 その意志を祝福するようにわずかに槍が震えた。

そして、互角だった両者の天秤は傾く。

慢心を捨てたフィオは本気を出す。

自分本来の魔法戦士としての全力を。


大将同士の一騎打ち開始。

敵(と思ってる)の言葉を聞き入れるって難しいですよね。


そして調子に乗ってきてたフィオも反省。

暴君フラグは回避です。


だが、結果パワーアップでは相手にとってはたまったもんじゃない……。

ピュアファイターのニクスは魔法攻撃に耐えられるのか?

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