旅立ち
今、俺の前には12体の使い魔+リーフが勢ぞろいしている。
ゲームでは揃えられなかった最強の布陣である。
使い魔たちはゲーム中となんら変わらぬ姿だが、主人のパワーアップによって数段強化されている。
「さて、まずは情報収集かな」
この荒野『禁断の地』は一種の緩衝地帯となっている。
南の商業国家『ラザイン共和国』を北東の軍事国家『メルビル帝国』と北西の宗教国家『フラム聖教国』から隔離する形になっている。
その為、帝国と聖教国は小競り合いが多いが、共和国は巻き込まれる事が少ないらしい。
「当面のターゲットは帝国か」
異世界召喚技術を持っているのは帝国で、現在も呼び出した異世界人『英雄』が活躍しているらしい。
一方で聖教国はこの世界の強者である『勇者』で対抗しているとか。
共和国は、なんとか異世界召喚技術を盗もうとしているらしいが。
ちなみに聖教国の崇める『聖神』は白き神とは別物だ。
と、いうより存在しない。
初代法王を導いたとされる天使、聖教国に協力したらしい人間の神種。
これらのイメージを白き神に混ぜて作られた神だ。
初代法王やその神種が泣くぞ……。
これだから宗教家の権力者って奴は。
信じる者は救われるってか。
詐欺じゃん。
とはいえ、教義上「頼るべきは神であり、異世界召喚は邪法」と定めているので、俺とはぶつからないかもしれない。
邪魔したり非人道的な事してたら潰すけど。
神の代弁者とか言って、好き勝手やってそうなイメージなのは偏見だろうか。
「そういや、情報伝達は可能なんだっけな」
リーフや使い魔たちとはテレパシーの様なもので繋がっている。
なら、バラけるのも有りだ。
そうだな、俺は北、帝国に向かうとして……
「ハウルは西に、リンクスは東に行ってくれ」
西には森が広がっている。
聖獣と呼ばれる種族も生息しているらしい。
ちなみに魔力を持つ獣は魔獣と呼ばれ、歪みの影響を受けた獣は妖獣と呼ばれる。
そして魔獣の中で特に高い知能と強い力を持つ者は幻獣、その中でも穏やかで他種族に友好的な者を聖獣と呼ぶのだ。
そして東は山岳地帯となっている。
この森と荒野と山岳が大陸を南北に分断しているわけだ。
「フェイは南だな。ベルクは……サイズがなぁ」
ベルクには聖教国を見てきて欲しい。
だが、5mを超える巨大なグリフォンは目立ち過ぎる。
シミラは俺を隠蔽して欲しいしな。
どうするか……。
〈クアアア!〉
ポン
とか思ってたら、ベルクが小鳥に化けてしまった。
便利だな、オイ。
カモフラージュ用の新能力ってわけか。
じゃ、ベルクは聖教国だな。
「よし、無理はするなよ。適当なとこで切り上げてくれ。頼んだぞ」
去っていく4体を見送り、俺も帝国に向かう事にする。
とりあえずカリスとシミラを残し、送還することにした。
ゾロゾロ大人数で移動すると目立つからな。
カリスに乗ってシミラのステルスを展開する。
これならまずバレないだろう。
快適な空の旅だ。
だが荒野を抜けて少しすると、帝国の調査部隊と思われる部隊を見掛けた。
「荒野の魔力が消失した事に気付いたのかな?」
実はフィオの魔神化の際に放たれた魔力が原因なのだが、彼は全く気付いていなかった。
こうして中央大陸に聖魔の下僕が放たれた。
彼らがもたらすものは希望か、絶望か。
さて、誰から行きましょうかね。
森に向かったハウルにしようかな。