表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
リバース チェンジ ワールド  作者: 白黒招き猫
第2章 獣人大陸内乱編
55/216

蛙の末路

久々にオンライン更新したからかな?

ランキングに再浮上してました。

楽しんでもらえたのなら幸いです。

ガシャ ガシャ ガシャ


 霧のように霞む森の中から異形の影が現れる。

六腕竜尾のアンデッド、漆黒のオーラをまとう黒きスケルトン。

その腕に握る武器はどれも規格外の魔法武器。

『風化の戦鎚』に殴られた者は石化し、砂となり崩れ去る。

強酸の鎌『アシッドシックル』に斬られた者は、焼けるような苦痛と共に溶けて消える。

腐食の斧槍『ロトンハルバード』に付けられた傷は爛れて腐り落ちる。

魂喰いの刃盾『リバースグリード』は攻撃した相手の精神力を奪い、斬った相手の生命力を喰らう。

軍滅の大剣『レギオンバスター』は一振りで無数の不可視の刃を放つ。

そして自身の骨で構成されたクロスボウ『タナトスガンナー』は魔力を矢に変えて撃ち出す。

数々の装備を構えた竜骨の戦王ネクロスが、ファグルたちの退路を断つ。


キチ キチ キチ  ザン!  ズズン!


 右側の木々が一瞬で切り倒され、そこから黄金色の巨体が現れる。

それは甲殻をまとったカマキリのような威容。

2本の鎌は高周波ブレードのような切れ味を誇り、その下には三又の槍とチェーンソーの様なノコギリを備えた攻撃肢が獲物を求めている。

下半身にはサソリのような尾が生え、頭部にはカブトムシの様な角が生えている。

生粋の殺戮者シザーが、感情の見えない複眼で獲物を見つめる。


トン


 音も無く、静かに左側に降り立ったのは巨狼。

夜空のような深い蒼黒の毛皮に、星のように輝く銀の目。

その爪牙は人間など紙クズのように引き裂く凶器となる。

そもそも、広域攻撃能力を持つ彼にかかれば100人程度一瞬だ。

だが、それはしない。

ハウルは狩りは楽しむ性質なのだ。


シュー シュー


 最後にリーフの背後から3頭の大蛇が這い出してくる。

リーフが結界を張り、そこにバイトが霧を発生させているのだ。

結界には認識阻害効果もあるが、五感の鋭い獣人が気付く可能性もある。

目撃者を出さないための処置だった。

やはりというか、バイトの視線の先にいるのはファグルである。

ガパリとバイトの口が開く。


ゴバアアアアア


「くあ……」


「か、体が……」


 吐き出されたディザスターブレスが半数以上を麻痺させる。

あえて麻痺だけに留めているのは恐怖を味わってもらうためだ。

気絶したらつまらないし、毒で死んだらあっけない。

彼らには後悔してもらわなければならないのだ。


 基本的に使い魔たちはフィオの指示に盲目的に従う。

しかし、フィオ自身がそれほど細かく指示を出さない状況では、自分で判断して行動する。

今回の場合フィオは『わざわざ殺すまでもない』と判断した。

ここで『殺すまでもない=殺すなとは言っていない⇒殺っちゃってもOK』と解釈する者が現れる。

まず、リーフとネクロスは『無礼者は許せん。例え後で主人に怒られてもコロス!』派である。

次にシザーだが、女王を狙われた兵隊蟻や兵隊蜂のようなもので、本能的に敵を抹殺することを誓っている。

最後にハウルとバイトは『皆が行くなら折角だし付き合うか』という、言わばノリである。


 バイトなら睨むだけで体どころか心臓を麻痺させられる。

ハウルならアルマゲストの一撃で皆殺しにできる。

ネクロスもレギオンバスターを振るえばあっさり殲滅できるだろう。

シザーなら特大の閃刃を放つだけで一太刀だろう。

だが、そんな事はしない。

そして各々が処刑を開始する。



「ヒイイイイイイ! グェ……」


「化け物だぁ! あぐ!?」


「に、逃げ、ガ?」


 ネクロスはわざと致命傷を与えない。

武器のえげつない特殊効果をじっくりと堪能させている。

ある者は溶けた傷にのたうちまわり、ある者は崩れ去っていく自分の体を茫然と見ている。

逃げようにも真っ先に足を切られ、それも叶わない。

そもそも結界の外には出られない。


 シザーは手足を切り落とし、酸のブレスで止めを刺している。

全身を焼かれる苦痛に、ダルマ状態の犠牲者が絶叫する。

しかし、シザーの複眼には何の感情も浮かばない。

ただ、淡々と処刑を続けていく。


 ハウルは子供が虫をバラす様にいたぶっている。

手を足を一本一本食いちぎり、最後に頭をゆっくり噛み砕く。

その眼には嗜虐的な輝きが宿っていた。


--------------------


 ファグルは現状を認識できなかった。

いや、認識するのを拒んでいた。

自分は指一本動かせない。

目を逸らす事も出来ない。

自分を縛る3頭の大蛇がゆっくりと近づいてくる。


 聞こえてくる悲鳴から、絶望的な状況である事だけは解る。

例え体が動いたとしても、決して目にしたくない光景が広がっている事だろう。

ファグルは『やる側』としての耐性は持っていたが、『やられる側』としての耐性は持っていなかった。

もうファグルの精神は限界だった。

しかし、蛇眼は気絶すらさせてくれない。


「(何でだ? 何でこうなった?)」


 工作員として自分の行動は間違っていなかったはずだ。

このまま帰還すれば、その功績を持って幹部になれるはずだったのに。

輝かしい未来が待っているはずだったのに。


〈そこの蛙と手に包帯巻いた奴。君らだよね? フィオ様に手を出した奴と命じた奴〉


 フィオ。

そう、奴だ。

奴がすべての元凶だ。

奴の所為でこんな目に。


〈君らには思いっきり苦しんでもらわないとね。バイト、やっちゃって〉


 ガパァとバイトが大きく口を開く。

そして隣で自分と同じく動けなくなっている部下を


丸飲みにした


「~~~~~~~~!! ~~~~……」


 部下はしばらく足をばたつかせていたが、やがて完全に飲み込まれてしまった。

嫌だ、やめてくれ……。

いくらなんでもこんな……。

心の中で絶叫するファグルの目の前で、絶望の顎が開かれる。

そして


「~~~~~~!?!?」


 初めに感じたのは痛み。

牙が体を削ったのだ。


 次に感じたのは息苦しさ。

腹の中に空気などあるわけがない。


 最後に感じたのは熱さ。

消化液によって焼かれ、溶かされていく身体。


 真っ暗な視界。

動かない身体。

しかし、鮮明な意識。


 地獄のような時間はファグルが息絶える瞬間まで続いた。

窒息が速かったのか、消化が速かったのか。

それは誰にも解らなかった。


------------------


 惨劇の時間が過ぎた。

リーフたちは念のため死体を始末し証拠を隠滅していた。

騒ぎになると主人に迷惑がかかるかもしれないからだ。


「うう……」


〈おや?〉


 なんと奇跡的に一人の女性兵士が生き残っていた。

ダルマ状態で酸に焼かれているが、治療すれば助かるだろう。

女性の元に歩み寄ったリーフは顔を覗き込んだ。


「た、助けて……」


〈へえ、話す元気があるんだ〉


「何でも言う事聞くから……、お願い……」


 感心するリーフに懇願する女性兵士。

リーフは彼女に指を突き付ける。


「奴隷にでも何でもなるから……」


〈ふーん〉


 リーフの指に白い光が集まる。

女性兵士の目に『回復魔法をかけてくれるのか?』という期待の色が浮かぶ。


「助け……」


〈1つ教えてあげよう〉


 懇願する女性兵士の声をリーフは遮り言った。

満面の笑顔で。

冷たい目で。

冷たい声で。


〈僕は女性があんまり好きじゃないんだよ〉


「!」


 光は矢となって放たれ、女性兵士の頭を貫いた。

女性兵士の身体はビクンと一度跳ねた後、動かなくなった。

そして次にシザーの酸に溶かされ完全に消滅した。

こうして、工作員たちは一人残らず殲滅された。




〈よし、戻ろうか〉


 処理を終えた使い魔たちは、ズブズブと影の中に消えていく。

そして唯一残った死臭も、やがて風に吹かれて消えていった。



今回はグロ回でした。

リーフの設定、地味にまだ生きてました。

心の傷は消えにくいのです……。


敵キャラの退場が非常に早い。

基本的に見敵必殺なので、出会った瞬間ほぼ退場決定なのです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ