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リバース チェンジ ワールド  作者: 白黒招き猫
第2章 獣人大陸内乱編
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ギフト

 ゲートの先は建物の中だった。

話にあったセーフハウスか、広いじゃないか。

ゾロゾロと獣人達が入ってくるが、次々と部屋に案内されていく。

誘導係はフェイの救出したという元非合法獣人奴隷達か。


「船は?」


〈組織の大型船を確保してありまーす〉


〈手際が良いな。大したものですね〉


 リンクスも感心している。

なら、少し町の様子を見たら出航するか。

おっと、食糧や水は買い込まないとな。

俺達は別に要らんが獣人達はそうはいかないし。

明日準備して明後日出発かな。


〈主様ぁ、実は見てもらいたいモノがあるんですけどー〉


「ん? 何だ?」


〈はい、コレでーす〉


ドチャ


 異空間から放り出されたのは肉塊だった。

いや、もしかして人間か?

両手両足が肘と膝から切り落とされているけど。


「ううう……」


 動いた! 生きてるのか?

上げられた顔はさらにインパクトが強かった。

両目は潰され、歯は全て抜かれている。

顎は砕かれ、舌も半分切り取られているな。

傷口は全て焼いて出血を塞いであるみたいだ。


「お前、これは……」


〈例の犯罪組織のボスですぅ〉


「何で生かしておいたんだ?」


 これなら死んだ方がましだろう。

痛覚は残ってるみたいだし、生きてるだけで拷問だ。

正気かどうかも怪しい。


〈それはですね、ちょっと鑑定してもらえますかぁ?〉


「ん? ああ、いいけど……」


 見れば解るってことか?

鑑定アイテムによってSTとスキルが視覚化される。

名前はシゼムか。

STはヒューマンにしては高めだ。

しかし、目を引いたのは


「スキルがやたらと多いな」


 この世界におけるスキルは才能に依存する。

以前、双子の兄が魔法が苦手で苦しんでいたように、努力だけではどうにもならない壁があるのだ。

職業制RPGに例えると解りやすいだろうか?


 どんなに望んでも戦士に魔法は使えない。

だが、こいつはありとあらゆる種類のスキルを持っている。

しかも実用可能なレベルで。

まだ20歳位の年齢で、ここまでスキルを上げられるものなのか?


 状態が状態なので、ほとんどのスキルが使用不可だ。

適当に流していくと気になる項目が目に入った。


「何だこれは? 『ギフト』?」


〈はい~。それが見て欲しかったものです~〉



『ギフト』


・観察眼・・・・対象の情報を読み取る


・スキル強奪・・条件を満たすと対象のスキルを奪える


・隷属支配・・・降伏した者を支配する



 3つの能力はどれも有用なものだ。

しかし、スキル強奪だと?

スキルは魂を根源とする能力だ。

それを奪うという事は魂を奪うという事。

まともな能力じゃない。


「うっ!? 何だこれは……」


 気になったのでシゼムの魂を見てみる。

彼の魂は3つの異物によって浸食されていた。

これがギフトか? まるでスライムみたいに魂に絡みついている。


「祝福、あるいは呪いの一種ってところか?」


 外部から与えられた能力の様だが、どっちにせよ碌なものじゃない。

確かに効果は大きいが、使えば使うほど力に呑み込まれていくタイプだ。

この浸食の具合だと相当ギフトを使って来たんだろうな。


「なるほどな。これは確かに実物を見ておきたいものだ」


〈えへへ、やっぱり~〉


「しかし、よく捕まえたな。こいつの能力は結構危険なモノだぞ」


 スキルを奪う。

異世界チートスキルの典型だ。

その凶悪さは鉄板と言える。

フェイの実力は確かだが万が一という事もある。


〈大丈夫ですよぉ。こいつバカでしたから~〉


 シゼムが妙な能力を持っている事を知ったフェイは、まずこいつを調査したそうだ。

本来ならこの手の能力は隠しておくのが鉄則だ。

制約や手順が知られてしまえば、対抗策を取られるのは目に見えているからだ。

しかし、こいつは罠かと思う位フルオープンだったとか。


 まず、観察眼によって相手のスキルを認識する。

次に相手のスキルの発動を直接目にする。

最後に相手の体に手で触れ、ギフトを起動する。

これでスキルを奪えるらしい。


〈すごく気持ち悪い光景でしたよ~〉


 スキル強奪のギフトが発動すると例の異物が相手の魂を浸食し、スキルの関係する部分をむしり取ってしまう。

奪われた魂の一部は異物に吸収され、代わりにそれをコピーしたレプリカを生み出す。

次にシゼム自身の魂を削り、そこにレプリカを埋め込む。

これで相手のスキルを再現できるようになる。


 スキルを奪われた相手は、失った魂が大きいと後遺症が残るらしい。

レプリカは異物の一部なので、スキルを奪うほどシゼム自身の魂も失われていく。

犠牲者とシゼム自身の魂の欠片は異物が食ってしまうようだ。

まるで寄生虫じゃないか。

確かにおぞましい能力だな。

どう考えても、使用者を周りもろとも破滅させる類の力だ。


 それはともかく、これだけ分かれば対処は簡単だ。

目と手を潰してしまえばギフトは発動できない。

そう、フェイの残酷な仕打ちはギフト対策だったのだ。


 視野の外、死角から接近し、妖精郷に放り込む。

脱出には空間操作系の能力が必要だがシゼムは持っていない。

以前、彼自身が「空間系の能力があれば便利なのに」「空間系スキルが欲しい」と漏らしていたらしい。

つまり、今は持っていないということだ。


 あっさり妖精郷に囚われたシゼムは、脱水症状で動けなくなるまで放置された。

どんなに強くてもヒューマンである事に代わりは無い。

生きるためには水と食料が必要なのだ。

フェイは力尽きたシゼムを『適切に処理』し、俺が来るまで生かしておいた。

フェイ……、恐ろしい子……。


〈それで、こいつどうします~?〉


「む、そうだな……」


 色々聞きたい事はあるが、このままではそれどころじゃない。

かと言って下手に治療して復活されても面倒だ。

そもそも、このギフトって俺がどうこう出来るんだろうか?


「とりあえず浄化してみるか」


 胸に手を当て浄化を試みる。

纏っているだけで近付く妖獣が消滅してしまう浄化の波動が、ギフトを削り始める。

だが、そのペースは遅い。

そしてこの感じ、ギフトを構成する力は神力に近い気がする。


「むう、時間かかるな。こっちで行くか」


 今度は槍に浄化の波動を込める。

神具によってブーストされ、銀色の光の刃と化した浄化の波動を一気に胸に突き立てた。

魂に絡みついていたギフトが一瞬にして消滅する。

だが


「ウゴォオオオオオオオ!?!?」


 シゼムは絶叫を上げてのたうち回り、やがて動かなくなった。

浄化の槍は肉体を傷つける事は無い。

しかし浄化の後、彼に残された魂はすでにボロボロだったのだ。

虫に食われた葉の様に。


〈うーん、これはもう駄目ですね~〉


「正気に戻る事は無いか……」


 完全に壊れてしまったようだ。

治療しても再起不能だろう。

これがギフトを乱用した結果か(俺のせいじゃないよ?)。

実にエグイ。


「ふむ……、他にギフトについて話を聞けそうな奴はいるか?」


〈そういえば、こいつの子飼いの奴隷が何人かいましたね~。降伏したから他の奴隷たちと一緒に保護してますけどぉ。特に逆らう様子も無いですよ~〉


「じゃあ、話を聞いてみようか。何か知ってれば儲けもんだろ」


〈了解です~。連れてきますね~〉

基本的にスナッチ系主人公は皆スキル隠しますよね。


十分に成長する前にバレると悲惨という話でした。


それにしてもフェイ、虫を千切る子供の残酷さですね。

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