設定資料①
世界観設定
・ハノーバス
主人公が転生した異世界。魔法中心の文明の世界で、元の世界の物質文明とは対極の文化を持つが、異世界召喚によって技術流入が起きている。
世界には強大な創造神によって『作られた』世界と、始まりの混沌より『自然発生した』世界があり、ハノーバスは後者である。
誕生してからそれほど時間の経っていない若い世界であり、人口も少なく文明もまだ発展途上。
時折、特異個体である神種が誕生し一気に技術が発展する事があるが、大抵その個体の死と共に衰退し失われている。
ハノーバスは異世界と接触した経験の少ない世界だが、中にはゲートで連結された世界や接触したまま安定した世界も存在する。創造神が元からそういう風に作った世界も有り、『作られた世界』は『自然発生した世界』より安定している傾向がある。異世界との接続は物質、非物質問わず技術の成熟した世界同士だからこそできる事であり、誕生したばかりで不安定な現在のハノーバスでは不可能である。
・神々
『作られた』世界においては、世界と同じく創造神によって創造された世界の管理者。『自然発生した』世界においては、世界のシステムの具現化した存在。当然後者の方が力は強いが、代わりに制約も大きい。その最たるものは世界への直接的な干渉の禁止である。彼らの仕事は世界の維持であり、余程の事が無い限り個人や個別の利害に干渉する事は無い。代わりに世界全体に影響がある場合、特に悪影響がある場合は一致団結して手段を選ばない。
・神種
偶発的に発生する突出した能力を持つ特異個体。単純な魔力の大きさに関わらず、異常なスキル、圧倒的な知能など様々な『強さ』を持つ。神人、神獣、神霊、神竜など、神に準じる存在として認識されている。しかし、その能力は次世代に引き継がれる事は無く、神種として存在できるのはその個体限りである。古代においては神種が率いる国が武力で他国を隷属させたが、その神種の死と共に反乱が起き逆に滅ぼされたケースがある。同様に天才的な知能を持った神種が一代で凄まじい魔道文明を築き上げたが、本人以外に原理が理解できず本人の死後数世代で文明が衰退したケースもある。
・歪み
負の思念や異世界からの異物によって発生する『世界に悪影響を与える因子』の通称。通常は精霊や時間経過によって浄化されるが、一定ラインを超えると浄化が困難になる。そのラインは世界によって異なるが、若い世界であるハノーバスはそのラインが低い。
局所的な悪影響としては歪みが強い場所では死者がアンデッドに変わったり、動物が妖獣と呼ばれるモンスターに変異したりする。全体的な悪影響としては、生物の精神を負の方向に傾けたり自制心を失わせたりする。また、転生の輪による魂を浄化する期間が長くなり、行きすぎると転生の遅延、出生率の低下などが起きてしまう。さらに歪みによる浸食が強いと、浄化の際に魂も削られ密度が薄くなってしまう。
・魂
その生命体の根源情報となる核。種族によって大きさが違い、個体によって密度が違う。密度はその個体の精神活動によって変化し、自身を高めた者は密度が増し、上澄みである魔力も増加する。一定以上の密度を持った魂は、転生時に分裂し密度が均一化される。よって肉体的な血筋による系譜の他に魂の系譜も存在するが、それを知るのは神々のみである。逆に一定以下に密度が低下した魂は、より下等な生物の魂に再構成される。
また、魂は魔力の源泉であるため、魂を消費する事で莫大な魔力を生成できる。しかし、これは魂の密度の低下を意味し、来世を閉ざす行為であると言える。また、魂を完全に消費してしまうという事は、転生すらできない消滅を意味する。
本来なら循環するはずの魂を使い捨て、消滅させる。大量の魔力を得るために他者の魂を消費する生贄の儀式が、神々からも忌避されるのはこれが理由である。
・中央大陸
ヒューマンが人口の大部分を占める大陸。西部の森には聖獣『天狼』が生息し、東部は険しい山岳地帯となっている。現在は北西部に『フラム聖教国』、北東部に『メルビル帝国』、南部に『ラザイン共和国』の3国が存在する。
・中央大陸の歴史
神々が様々な種族を創造した際、中央大陸には何種族かのヒューマンの祖先が誕生した。その中で知恵と技術に優れる種族が勢力を増し、他の種族を吸収する形で現在のヒューマンの祖となった。
彼らは無数の部族が村単位で生活していた。ある時は合併し、ある時は分裂し、戦いも頻繁に起きていた。そんな時、ある部族に1人の異端児が生まれ落ちた。彼は自分が率いる者たちの力を増幅する特殊能力、原始のスキルを備えていた。彼が率いる部族は連戦連勝を続け、ついに中央大陸を統一する事に成功する。
彼の部族名を取り『メルビル帝国』と名付けられたこの国は、各部族が秘匿していた技術を統合し飛躍的な発展を遂げる。その結果、各種技術に魔法、スキルといった能力が体系化され、広がっていく事になる。各部族の有力者たちは貴族として領地を与えられ、新たに台頭した有力者たちは未開発だった南部を開発していった。初代皇帝の死後も2代目皇帝は堅実に国力を高め、帝国の未来は明るいとだれもが思っていた。
綻びは最初は小さなものだった。元々の領土を治める北部の貴族と、新たな開拓地である南部を治める有力者の間に意見の食い違いが出てきたのだ。それが皇帝の急死によって大きくなってしまう。皇帝はまだ若かったため後継者を決めていなかった。候補者は2人、北部よりで貴族重視の皇太子と、南部よりで国民重視の皇弟である。二人の関係は周囲を巻き込んで急速に悪化し、ついには武力衝突に発展する。大陸中央に在った首都は度重なる戦いで崩壊し、皇太子は北に、皇弟は南に本拠地を移して内乱は継続される事になる。
当初は技術力や兵の練度で勝る北部が優勢だったが、南部は貴族が独占していた技術や知識を民に開放し急速に追い上げる。その結果戦力は並び、泥沼の内乱は数十年にも及ぶ事になった。内乱後半には魔法使い数十人、数百人が儀式によって発動する戦略級魔法が連発され、戦場となった大陸中央部はかつての面影すら残らぬほど荒廃した。
内乱末期、北部は決着を付けるために副作用は大きいが桁外れの威力を誇る『禁呪』を開発した。
これは対象範囲内の霊子を暴走させ、あらゆる生命体を崩壊させるという恐ろしい魔法であった。しかし、暴走した霊子は元に戻らないため、使用された場所は永遠に死の荒野に変わるという副作用があった。勝利を確信する北部だったが、禁呪の情報は内通者から南部に洩れ、南部も禁呪の開発に成功してしまう。そして、最後の戦場で両軍は禁呪を行使し両軍ともに全滅した。
2発の禁呪は互いに干渉しあい、相乗し、南北両軍を完全に飲み込むほどの超広範囲に降り注いだのだ。
結果、大陸中央部は暴走した霊子が吹き荒れ、立ち入った者を崩壊消滅させる『禁断の地』となった。
軍を失い、大陸中央部を天狼の森、禁断の地、山岳地帯で遮断された事により内乱は帝国の分裂という形で終結した。北部はそのまま『メルビル帝国』を名乗ったが、南部は戦後さらに民が力を持ち皇弟も権力に執着しなかった。その結果、彼の死と共に議会制民主主義に制度は変更され『ラザイン共和国』が発足する。
ちなみにラザインとは、皇弟の一人娘と初代国民議会議長の間に生まれた息子の名前だとされている。
発展を続ける共和国に対し、帝国は貴族による国民軽視が深刻化する。そんな時、帝国西部に1人の人物が勢力を持つようになる。フラムというその青年は天使の導きを受け、強き者はその力を弱き者の為に使う事を正義とした。帝国の思想とは相いれないフラムの思想だが、賛同者は次々と集まりついには帝国西部は独立を果たす事となる。厳格な法ではなく教典による教えによって繋がるコミュニティーの延長ではあったが、これが後に『フラム聖教国』となる。
当然、帝国は兵を向けたがフラムは初代皇帝もかくやという圧倒的な力で帝国を撃退し、防衛のための軍も鍛え上げた。この軍が後の天翼騎士団となる。
絶頂期の4分の1にまで縮小した帝国は追いつめられた。最大の要因は一部の人間による技術、知識の独占なのだが、民に不信感を抱く上層部は頑なに民を搾取する対象と見なし続けた。そんな時、帝国に救世主が現れる。幼少時から天才と呼ばれていたある貴族の子息が、異世界から望む物を呼び寄せる魔法を開発したのだ。呼び寄せられた武器や道具を量産し、帝国は少しずつ力を付けていく。しかし、救世主は突如として早逝してしまう。彼は自分でも気付かない内に、命を削って異世界召喚を行使していたのだ。
魔法陣は残されたがまともな方法では起動できなかった。そこで帝国は生贄という禁忌の手段を使い、物ではなく人を召喚する事にした。技術者を1人召喚すれば、物を幾つも召喚するのと同様に成果が出せる。生命体の召喚は必要魔力が跳ね上がるが、物を何度も召喚するよりは安上がりだった。以後帝国の発展は『異世界召喚』によって呼び出された者達に依存する事になる。
フラムの死後弟子たちが建国した『フラム聖教国』と帝国は何度も戦う事になる。と、言っても基本は帝国が攻め込み聖教国が防ぐというものだった。しかし、国境に強力な悪魔が現れたことで両国は手を組むことになる。そして帝国は今まで技術や知識を得るために使用してきた異世界召喚を、戦力を得るために使用する。召喚された少年マイク・ハワードはまさに一騎当千の活躍を見せ、悪魔の討伐に大きく貢献する。悪魔討伐後、両国の関係が改善される事を多くの民が期待した。しかし、英雄の圧倒的な力の目の当たりにした帝国上層部は、失地奪還を掲げ聖教国に攻め込む事になる。英雄を先兵として。
そして、物語は始まる。
思ったより長くなった……。
オープニングで黒き神に説明させようとしてカットした中央大陸の歴史です。
設定はなるべく穴が無いようにしたのですが、細かい点はご容赦下さい。