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リバース チェンジ ワールド  作者: 白黒招き猫
第1章 異世界召喚編
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派手な魔法は使いにくい

 非常用通路を抜けると、そこは大聖堂の内部だった。

ベルクによると幹部達の私室のある場所だとか。

大分奥の区画らしいが、なんだか人気が無い。


「なあ、ここってホントに国の中枢なのか?」


「いえ、こんなはずは……。これは一体……。」


「まったく気配がしませんね……」


 普段は違う様だ。

聞かれた2人も困惑している。

でもまあ、好都合か。


「ま、人が多いよりは楽だ。さっさと行くぞ」


「はあ、そうですね……」


「法王の私室はあちらです」


 ところが、法王の部屋には誰もいなかった。

他の部屋も空なので、どこかに集まっているのかもしれない。

2人に心当たりを聞いてみる。


「そうですね。最上階の祈りの間でしょうか」


「その下の階には大会議室があります」


「そうか、上だな。……おや?」


 上の階を調べようと探知の範囲を広げる。

球状に広がるので当然横の探知範囲も広がる。

すると、この階の端っこに集団の反応がある事に気付いた。


「……行ってみるか」


----------------------


「どうしたんで……ウェイン隊長?」


「ああっ! キュロム! 貴様よくも!」


 俺に続いて入ってきたAとBによって、凍っていた空気が動き出す。

偉そうにしているリーダー格の男は知り合いの様だな。


「こいつは?」


「その男はキュロム。私達を牢に入れたのはこいつです」


「元勇者隊の法王派の人間です。人格面に問題があって幹部になれなかったのですが……」


 キュロムを憎々しげに睨む2人。

成る程、法王の犬か。

それも汚れ仕事も引き受ける類の。


「貴様ら、脱獄の上に侵入者の手引きか? 審問官といえども許される事ではないぞ!」


「お前達、なぜ彼と一緒に?」


 キュロムとウェインが同時に声を出す。

おお、そうだ、ウェインだ。

あの英雄君と斬り合っていた騎士だ。

やっと思い出した。


「はいはい、ちょーっとどいてくれ」


「え? ああ」


 ウェインを入口の方に逃がしてキュロムと向かい合う。

奴の手勢は30人。

騎士が20人の聖職者が10人か。


 聖職者とは教会所属の魔法使いの総称だ。

当然、攻撃魔法も使用可能なはず。

それが10人、結構な戦力だな。


「やあ、どうも。俺の名はフィオだ。法王に用があってね。でも見当たらないんだよ。あんた知らない?」


「……殺す前に聞いておこう。法王様に何の用だ?」


 馬鹿にするように煽ってみると顔を真っ赤にしてしまった。

ブチ切れない分ファンよりマシかな?

指揮官ならもっとどっしり構えるべきだと思うけど。


「もちろん始末する」


「もういい! 貴様も審問官共も裁判にかけるまでも無い! この場で裁いてやる!」


 キュロムの怒声と共に10人の聖職者が魔法の準備に入る。

紡がれる詠唱。

しかし


ボウッ


「「「「「「!」」」」」」


 俺の頭上に突如発生した巨大な火球。

驚愕のあまり聖職者たちの詠唱が止まる。

ただキュロムは偉そうな態度を崩さない。

どうやら部下の魔法と勘違いしているみたいだな。

おめでたい奴だ。


「……? おい、どうした?」


 初めは部下の攻撃と思っていたようだが、何時までも火球が動かないので不審に思ったらしい。

後ろを振り返り問いただすキュロム。


「あ、あれは我々の魔法ではありません……」


「無詠唱、それになんて魔力だ……」


 震えながら答える聖職者たち。

一方


「ちょ、フィオ様! ここ室内です! でか過ぎです!」


「大聖堂が吹っ飛んじゃいます! もう少しお手柔らかに!」


「な、なんという……」


 AとBから突っ込みが飛んでくる。

ウェインはオーバーヒート中の様だ。

尖塔がある部屋なので天井は高いが、それでもスレスレだ。

確かにちょっとデカ過ぎかな?


 ファンと違い狙ったモノだけを燃やし、それ以外は燃やさない事など容易い。

しかし、火球が爆発すれば凄まじい衝撃波が発生するだろう。

副産物である衝撃波は俺の制御を離れ、荒れ狂う事になる。


 炎弾と火球の違いはそこだ。

火球は爆発の衝撃波も込みで1つの魔法なのだ。

瞬間的な温度の上昇による空気の膨張……、などなど面倒な理屈はともかく。

うん、確かにマズイな。


 俺は魔法を切り替え、火球を圧縮する。

火球は縮小するにつれて密度と温度が増していく。

赤から黄、黄から白、白から青へと色が変化していく。

星や精鉄などが例としてあげられるが、赤は低温で青は高温なのだ。


 拳大の青い火球はさらに31個の炎弾に分裂する。

『またブレットかよ』と思うだろうが、またです。

と、いうより派手な魔法は非常に使いにくい。


 魔法自体は完璧に制御できても、おまけの物理現象はそうはいかない。

身体能力強化では物理的反作用が発生しないのに、色々ややこしいな。

ついでにゲームじゃないので、破壊された物や荒らされた地形が勝手に修復される事も無い。


 もちろんそれらを抑える事は出来るが、それ用の術式を組まなければいけないので二度手間だ。

そんな訳でこの前の帝国軍戦ならともかく、普段はこういう地味な魔法の方が使いやすいのだ。

同じ理由で、攻撃が派手なカリスやヴァルカンは活躍の場が限られる。


「き、貴様は……」


「俺は悪魔だよ」


ボボボボボボン


 キュロムに最後までしゃべらせず、全ブレッドを発射。

着弾したブレッドは相手だけを焼き尽くし、消滅させた。

青い炎は数万度の超高温、金属だって蒸発する温度だ。

人体など灰も残らない。


「はい、終わり」


 何ともあっさりした終わり方だ。

キャラ濃いのに。

いや、濃かったのに。


---------------------------


 その後、どうにか落ち着いたウェインと情報交換を行った。

法王達は大会議室で作戦会議中。

囚われた司教たちは別館にいるそうだ。


「……あの」


「ん?」


 ウェイン、A、Bには司教の救出に向かってもらう事にした。

俺と一緒だと巻きこむ恐れがあるからだ。

さあ、いくか、という所で別れ際にウェインが訪ねてきた。


「彼は、マイク様は……」


「記憶を消して時間軸も修正して元の世界に返した。あいつにとっては何も無かった事になっている」


「そう、ですか」


 ホッとした顔になるウェイン。

マイクは敵国からも慕われていたらしい。

まさに英雄だったのだろう。


「じゃあ、お仲間を救出したら最上階に来い。そこで司教連中とも話そう」


「ええ」


「お願いします」


 その辺はアフターケアだ。

混乱のあまり暴発されたら面倒だし。


「ついでだ。護衛を連れていけ」


 フィオの影から黒い子犬が姿を現す。

もちろん擬態したハウルである。

まさか、これが噂の黒狼の神獣だとは夢にも思わない3人。


 しかし、偶然か必然か、時を同じくして司教たちの元に向かう集団があった。

彼らは司教たちのシンパであり、独自に救出の機会をうかがっていたのだ。

当然のように、その中にはミレニアの姿もあったりするのだった。


敵ばっかりなら纏めてドッカンなんですけどね。


そういう訳にもいかないのが現実です。


予約投稿し忘れてたので一日遅れでした。

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