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リバース チェンジ ワールド  作者: 白黒招き猫
終章 東方諸島開拓編
213/216

始まりの地 崩壊期

◇老島亀◇


 さて、東大陸を滅ぼすといっても手段は選ばねばならんかった。

下手なやり方をすれば瘴気が他の大陸に流れ込みかねんからのう。

やるなら一瞬で、一気に滅ぼさねばならんかったのじゃ。

そのために、神々は世界樹を利用することにしたんじゃよ。


 東大陸は瘴気まみれになっておったからのう。

それを浄化するために、世界樹は大陸全土に根を張り巡らせておった。

それも直径数十、下手をすると数百mもの太さの根をのう。


 ここまで言えばわかるじゃろ?

もはや大陸を支える土台となっておった根を一気に引き抜けばどうなるか。

地下に巨大な空洞ができて崩落、そこに海水が流れ込み大地は海の底に沈む。

そういう事じゃ。


 儂が世界樹を背負う事になったのもその時じゃ。

島亀は儂の他にも少数いたが、儂が一番大きかったからの。

そういえば、同胞たちはどこで何をしているのやら……。

死んではいないと思うがのう。


 ともあれ、他の神獣や天使たちの手で世界樹は儂の背に根を下ろしたのじゃよ。

正確には儂の甲羅に根を絡ませて固定しておるだけじゃがの。

世界樹は普通の植物と違い、根から養分を吸い上げる必要などないわけじゃし。

もちろん海水に浸かったところで何の問題もない。

世界樹はすべての植物の祖でもあるんじゃ。

マングローブや海草の祖でもあるのじゃからの。


 ……正直、それが正しい選択だったのかは、今でも儂には断言できん。

神々も同様じゃろう。

じゃが、あの時は世界全体のことを考えれば仕方ない選択じゃった。

そして、傲慢な儂らの一方的な裁きが実行されたんじゃ。


 凄惨な光景じゃった。

大地はひび割れ、陥没し、そこから大量の海水が吹き上がってきおった。

東大陸に残された者たちは、訳も分からず大地の崩落に巻き込まれて死んでいったんじゃ。


 もちろん生き残る者もかなりおった。

何しろ神々が直接創造した始祖種族に極めて近い者たちじゃ。

妖獣化していることもあり、未曽有の天変地異にあっても、それを切り抜けたのじゃ。

……残念ながら、のう。


 彼らを逃すわけにはいかんかった。

生かしておくわけにはいかんかった。

残さず抹殺せねばならんかった。


 儂らは心を鬼にして彼らを殲滅したんじゃ。

海に投げ出され苦しみ藻掻く者たちを。

必死に助けを求める者たちを。

そして、そんな状況でも争いあう者たちを。

老若男女、種族を問わず完全にのう。


 そして、全てが終わり、僅かな島を残して始まりの大陸は消え去ったんじゃ。

儂らも神々も正直言って疲れ果てておった。

高等霊的生物には肉体的な疲労は無いが、その分精神的な消耗が大きく影響するんじゃよ。


 この事件をきっかけに多くの神々が自我を捨て、世界のシステムへと己を作り変えてしまいおった。

同様に神獣や天使たちも大半が神々と共に地上を去ってしまいおった。

儂のように地上での役目を持つ者以外は、疲れ果て、地上に残る気力を失ってしまったんじゃよ。


 他に地上に残った者たちと言えば……神竜、神狼、神樹、それに古巨人くらいかのう。

儂と同じく世界樹の守護を担う者たちなんじゃが、今はどうしておるのか……。

ん? 何か知っておるのか?

ほう? 神樹は健在のようじゃの。

他の連中は眷属に任せて自身は地上を去ったのやもしれぬな。


 それと、実はグラシアル・ダイバーたちは儂の眷属ではないのじゃよ。

友であった神獣、神鯨の眷属たちなんじゃ。

神鯨は地上を去る時、せめてもの助けにと眷属の聖獣たちを残していったんじゃ。


 世界の危機なんぞ、そうそう起きるものではないからの。

本来なら神獣が地上に留まる必要はあまりないんじゃ。

防衛戦力としては聖獣クラスで十分のはずなんじゃよ。

まあ、そのめったに起きないはずの危機が起きたせいでお主が生まれたんじゃがの。


 その後はお主もある程度は知っておるじゃろ?

4つの大陸に送り込まれた各種族たちは、最初は種族、部族ごとに暮らしておった。

しかし、時とともにそれぞれが接触し、時に争い、時に融和し、数を増やしていったんじゃ。


 もちろん、瘴気は発生しおった。

じゃが、その頃には始祖種族ほどの力を持つ者は少なくなっておったからの。

各大陸に設置された世界樹が十分処理できるレベルじゃった。

異界の邪神がおかしな干渉をしなければ、少しずつ安定し、発展していくはずだったんじゃよ。


 転生者の登場には儂らも驚いたわい。

能力やギフトもそうじゃが、何より恐ろしいのはその価値観じゃ。

モラルや倫理を軽視し、興味と欲のままに禁忌を犯すことも厭わない。

やれるからやる、それの何が悪い、という自己中心性。


 そういった者たちを選んでおったのじゃろうが、神樹が自ら動かねばならんかったほどじゃからの。

世界は急速に不安定になっていきおった。

人の心や国のルールが整わぬまま、技術ばかりが先行した結果じゃな。

行き過ぎた技術をもたらしたのは転生者じゃが、その暴走を許したのはこの世界なんじゃ。

まだまだこの世界は未熟であることを痛感させられたわい。


 さて、こんな所かのう。

知りたかったことは知れたかの?

たとえば……お前さんが今後どうするべきか、とかのう?


 ふぉふぉふぉ、これでも同じ神種の遥か先輩じゃ。

儂らのような存在は必ず同じ迷いを抱くんじゃよ。

何しろ儂らの力は強すぎる。

神々ほどではないが世界に与える影響が大きすぎるんじゃ。


 ましてやお主は眷属神じゃ。

真正の神を除けば最高位の存在じゃからの。

役目を果たしている間は良いが、その後どうするか?

さぞかし悩んでおるじゃろう。


 まあ、お主自身の問題じゃから、最後に決断をするのはお主自身じゃ。

じゃが、アドバイスというか情報提供はしてやれるぞい。

まず大前提として、お主は地上を離れるべきではない。

それはお主自身も理解しておるじゃろ?


 異界の邪神を排除したばかりじゃというのに、自ら異界から異神を招こうとした連中がおったんじゃろ?

今後も同じことは必ず起こるはずじゃ。

そして、今はまだ人間たちにはそれを解決できるだけの力が無いんじゃ。




 世界という庭園への侵入者を排除する番犬にして害虫を排除する庭師。

お主の存在は世界に必要なんじゃよ。





そろそろ終わりが近づいてきました。


あと数話ですかね。

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