表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
リバース チェンジ ワールド  作者: 白黒招き猫
第4章 魔大陸決戦編
204/216

悪魔の去った世界

第4章エピローグです。

◆フィオ◆


 特撮映画じみたバトルを制した俺は、表舞台を去ることにした。

転生者や邪神といった外部勢力が原因の混乱は無くなったし、これ以上の干渉はやめておくべきだろう。

ここから先、世界がどう動くかはこの世界の人間たちが決めるべきこと。

彼らにできる事まで俺が口を出すのはやりすぎだからな。



 さて、それじゃあ俺と邪神との戦いの後の話をしようか。 

まず戦場となった北大陸だが、戦いの傷は深かった。

使い魔たちも善戦したが、さすがに戦死者をゼロにできるほど楽な戦いではなかったからな。

とは言え、想定よりはずっと犠牲は少なかったのは間違いない。


 ただ、人的な損失よりも大きな問題があった。

それは北大陸そのものが大きなダメージを受けたことだ。

具体的に言えば、大地に宿る魔力や生命力が邪神に食い荒らされていたのだ。


 地球でもレイ・ラインとか龍脈とか呼ばれる、世界に満ちる力の川のようなもの。

邪神は世界樹の種子の力を使って、それを汲み上げていたのだ。

もちろん本家の世界樹も必死で抵抗していた。

その抵抗が無ければ、北大陸は草木1本生えない不毛の大地と化していたはずだ。

だが、結果的に北大陸の魔力は枯渇寸前になってしまった。


 さすがに見過ごせなかった俺は、世界樹とコンタクトを取り北大陸の復活を手伝うことにした。

まず、他の大陸の世界樹から少しずつ魔力を提供してもらい、枯れてしまった大地の魔力を最低限循環させられるレベルまで回復させた。

次に戦利品である世界樹の種子を通じ、俺の神気を魔力に変換して大地に注ぎ込んだのだ。


 最後の自爆技でかなり減っていたとはいえ、世界中から集まった信仰の力は凄まじく、北大陸の魔力を安全水位で安定させることができた。

俺としても大量の神気を抱えていると、神化が進みそうでちょっと怖かったんだよな。

神クラスが相手じゃなければ自前の力で十分だし。

気のせいかもしれないが、人格も人間寄りに安定したように感じる。


 その後、世界樹に種子を返そうとしたのだが、意外な事に断られた。

盗まれたものだと聞いていたので理由を聞いたのだが、世界樹本人(木?)も良く解らないらしい。

ただ何となく俺が持っていたほうが良いと感じたそうだ。


 まあ、確かに邪神の依り代に使われたりしたからな。

安全であることは確認済みだが不安なのかもしれない。

あるいは将来、俺がこの種子を必要とする日が来るのだろうか?

とりあえず、くれると言うなら貰っておこう。



 北大陸の各国も復興の真っただ中だ。

魔人連合国は人的な被害が一番少なかったこともあり、他国の援助を率先してやっている。

元々中央大陸や西大陸との交易が盛んだったからな。

必要な物資を調達しやすいんだろう。


 大量に輸入する以上、先立つ物は必要なのだが、それに関しては問題なかった。

北大陸中に散らばっているヘカトンケイルの分体の死骸。

こいつを合成獣キメラの素材として輸出したのだ。


 おいおい、何やってんだよ! とか思ったが、意外な事に問題は無かった。

まず邪神が消えた後、分体の死体や残骸はドロドロに溶けてしまった。

溶けなかった部分は集めて燃やしたのだが、2割ほどが燃えずに残ったのだ。

それらを調べてみたところ、邪神の神気はまったく検出されず、それどころか極めて上質な素材となることが判明したのだ。


 通常、合成獣の素材というのは異なる魔物の部位を無理やり接合させたモノ。

獅子の頭の部位は獅子の頭素材だし、蛇の尻尾の部位は蛇の尻尾素材となる。

だが、分体の素材は異なる魔物の性質が融合した、本当の意味での合成獣の素材だったのだ。


 これに目の色を変えたのは西大陸のドワーフたちとエルフたちだ。

ドワーフたちは新たな武器防具の素材として、エルフたちは研究対象として、奪い合う様に買い漁っていったそうだ。

現在存在する分が全てであり、同じものが1つとして無いというのも魅力だったのだろう。

売買はオークション形式で行われ、彼らの頭と懐を心配するほどの価格で落札されたそうだ。

西大陸の新たな火種にならないことを心配してしまうな。


 そう言えばオークションにはシリルスが来ていなかった。

古代の魔道具が専門分野とはいえ、あいつは好奇心の塊だ。

脱走してでもやってきそうなものだが……。


 オークションに来ていた適当なエルフに聞いてみたところ、彼は最近姿を見せていないらしい。

それどころか別荘で療養しているという噂が立っているそうだ。

何でも精神を病んでしまったのだとか。

あいつに何があったのだろう?


 ともあれ、物資の調達に関しては問題ないようだ。

まあ、タラス議長を始めとした文官たちは死ぬほど忙しいだろうけど。

さらに素材をめぐって、ドワーフの技術者とエルフの研究者がしょっちゅう乱闘しているらしい。

それを鎮圧するのは当然兵隊さんたちだ。

文官と武官、どっちが大変なんだろうな。



 そして鬼王国。

鬼王国の武人たちは数こそ他国に劣るが、その力量は高い。

分体相手に一歩も引かずに国境線を守り抜いていた。

また、国土を荒らされなかった分、戦後の混乱は小さかった。


 先王ゴウセツの死は大きかったが、致命的ではなかった。

それどころかあの事件以来、ゴウライ王子が目に見えて精力的に文武を鍛え始めたという。

一人っ子という事もありどこか甘えのあった王子だが、命の危機にさらされたことで一気に覚醒してしまったようだ。


 特に武術にかける気迫は並々ならず、その剛の剣は同年代の頃の父、鬼王ゴウエンを凌ぐのではないかと噂されているそうだ。

鬼王はそんな息子の姿に感動し、鎧一式を王子に贈ることにした。

その鎧は王子のリクエストによって、両の肩当てが黒い狼を模しているのだとか。

憧れは少年を英雄に至らせるってやつかね……。



 次に獣魔国。

同胞の奪還はならなかったが、怨敵は討てた。

これによって国内の過激思想はほぼ鎮火したらしい。

まあ、そもそも過激派の大半が物理的に全滅しているわけだしな。


 軍の規模が大きく、攻め寄せた分体の数も多かったので犠牲者の数はそれなりに多かった。

しかし、元々総人口が多いので割合的に見れば鬼王国とそう変わらない被害だったはずだ。

連合国から順調に物資が届いているし、直に復興はなされるだろう

今後は先代夜王の時代のように、夜の国とは友好関係を築く方針みたいだしな。

プルートを相談役として貸して欲しいと、上層部総出で頭を下げられたときは対応に困ったけど。



 最後に夜の国だが、2人の王族ロードは精力的に働いている。

他国出身の夜王ジェイスはひたすらに内政に打ち込み、貴族ノーブルたちと協力して殺人的な書類仕事を必死に捌いているらしい。

一方生粋の王族である王妃ルーナは外交などの外向きの仕事に取り組んでいる。

武官出身のジェイスには荷が重いのかもしれないが、外交や貴族との折衝はルーナの方が向いている。

どちらか選べと言われれば、彼は間違いなく書類仕事を選ぶだろう。


 それに激減していた文官も意外に早いペースで補充されている。

今回の反乱騒動でグラーダに協力した連中。

彼らは実力があるのに活躍の場が与えられなかった天才秀才たちだ。


 連中は死んだ訳だが、反乱に参加しなかった同じような境遇の者達は探せば結構いたのだ。

簡単に教えればすぐに仕事を覚える彼らを、穴だらけのポジションに埋め込んでいく。

そうすれば1人にかかる負担はどんどん減っていく。

デスマーチなのは今だけだろう。


 と、いうか絶対にそうなる。

なぜなら、貴族たちがそうなるように裏で動いているからだ。

今の夜の国が抱える致命的な弱点、それは王族の少なさだ。


 現在、国の要たる王族は僅か2名。

普通の国の基準からしても少なすぎる。

鬼王国だって直系の王子はゴウライ1人だが、公爵家にあたる王族の分家は存在している。

だが、現状の夜の国にはそれすら無いのだ。


 これは由々しき事態である。

何とかしなければ。

義憤に燃える貴族たちが、夜王夫妻に一刻も早い世継ぎを求めるのは自然な流れだろう。

王に時間が無いなら作ればいい。

まあ、そういうことだ。


 ただ、俺が気になるのは一連の流れだ。

不自然なところなど何も無く、極めて自然な流れではある。

だが、スムーズ過ぎる気がするのだ。

まるで誰かが裏で糸を引いているような……。


 そう、例えば新婚なのに忙しくてイチャラブできない新妻とか。

連日貴族と会議を行っていて、自然に思考を誘導できそうな王族とか。 

誰にも損をさせずにむしろ利を与え、その中で自分が最も利益を取る……怖っ!

逆境で成長するにも程があるだろ……。

真っ直ぐなゴウライ王子が眩しく感じる。



 それと巨人族だが、世界樹の守護者を自認する彼らにとって今回の一件は大きなショックだったようだ。

犠牲の大きさもさることながら、種子を奪われたというのは致命的だったらしい。

鬼気迫る気迫で自身を鍛え直す戦士たちに、使えそうな武術を教えてやると大喜びしてくれた。


 巨人族は身体の大きな人間だからな。

人間の技術は基本的に再現可能だ。

大型魔獣を圧倒するパワーに繊細な技術。

素晴らしいじゃないか。

……各国と冒険者ギルドには、世界樹の聖域に近付かないように釘を刺しておこう。



 まあ、そんなこんなで世界は勝手に動き出している。

俺があれこれ世話は焼かなくてもなるようになるだろう。

明確な敵がいなくなった以上、働く義務も無くなったからな。

ここらで長期休暇を取っても罰は当たらんだろう。


 幸いにしてこの世界の瘴気や歪みはほぼ消え去った。

俺と邪神がエネルギー源として大量消費したからな。

妖獣なんぞ絶滅してしまったかもしれないくらいだ。


 考えてみれば、この世界に来てからずっと戦いっぱなしだった。

寿命の無い神種の基準からすれば、ありえない程に生き急いでいるはずだ。

少しギアを落とさないと今後の人生(?)が大変になるだろう。


 問題はどこで過ごすかだが……。

木の葉を隠すなら森の中。

やはり西大陸が目立たなくていいか。

揶揄からかう相手もいるしな。




  第4章  END


ようやくメインストーリーが終了しました。


この後は人物紹介を経て、後日談となる終章となります。


第4章は新キャラが多いから人物紹介がエライ事になりそう……。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 後日談、楽しみに待ちます
[一言] お疲れ様でした。 後日譚やその後のお話楽しみにしております。
[一言] 長かったですね、この物語も 少し早いですけど、お疲れ様でした
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ