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リバース チェンジ ワールド  作者: 白黒招き猫
第4章 魔大陸決戦編
200/216

奇襲

200話目の投稿てす。


決着つかなかった……引っ張り過ぎですね。

◆フィオ◆ 


 残る敵は2体、邪神を含めれば3体。

邪神の神気は地下で動きなし、か。

なら先に先兵の方を片付けるべきだな。


〈戦闘力を残しているのはゲドガルドの方か……〉


 ワニ野郎は最大の武器である口を封じられている。

破壊されれば急速に再生・復元するのだろうが、開かないように縛っているだけだ。

こうなると奴は拘束を解くことができない。

腹の口から伸びる触手は気持ち悪いが、それだけだ。

後回しでいいだろう。


――ガシャン! ガシャン!


〈む?〉


 頭部と腹部、2門のプラズマ砲を失ったゲドガルド。

主力武器を失った以上大した脅威は無いと思っていたが、甘かったようだ。

いつの間にか両肩に大型の砲身が展開され、破壊された両腕のドリルもパージされていた。

ドリルと内蔵されていた火器は独立していたらしく、両腕はガトリング砲となっている。

さらに、身体のあちこちが展開し、ミサイルらしきものが顔を出している。


〈予備兵装って奴か? いや、これは……〉


 解析してみると驚くべきことが判明した。

これらの兵装の大半は、たった今造られたものだったのだ。

細胞が分化して器官を形成するように、ナノマシンが集合しこれらの兵装を生み出していた。

その場、その状況で最適の武器を造りだす。

物質世界においてはとんでもなく有用な能力だ。


――パシュ! パシュ!


――ヴォオオオオ!!


 両腕部のガトリング砲が火を噴き、全身のミサイルが発射される。

だが、これは囮だろう。

両肩の大型砲塔だけは、こちらを狙ったまま動きが無い。

俺が体勢を崩したところで撃ち込む気だろう。


〈これは電磁気? あの砲塔はレールガンか!〉


 実弾兵器ばっかりだな。

ご自慢のプラズマ兵器はどうしたんだ?

まあ、やることは変わらないが。


〈吹っ飛べ!〉


 手のひらを翳し、台風を圧縮したような暴風を放つ。

そのあまりの風圧に、実弾兵器は軌道を逸らされる。

俺を完全包囲していたミサイルは互いに衝突して誘爆し、ガトリング砲の弾は勢いを無くしていく。

これなら躱すのは容易だ。


 ミサイルの爆炎を突き抜け、ガトリングの弾幕を躱して突っ込む。

慌てたようにレールガンの砲塔が輝くが、もう遅い。

発射される前に砲口に神気の短剣を投擲し、暴発させる。

暴発させるのは、もうお約束だな。


 両手に神気の短剣を生み出し、ゲドガルドの両肩に突き刺す。

突き刺した短剣はそのままにして新しく短剣を生み出し、さらに腹と首に突き刺す。

スパークを纏いながら振るわれた尻尾を躱して、その根元にも突き刺す。

最後に両膝にも突き刺して一旦距離を取る。


〈終わりだ〉


――ドドドドン!!


 突き刺さった短剣が全て爆発し、ゲドガルドの全身を吹き飛ばした。

自動修復される気配は無し。

念のため跡形も無く破壊しておくか。


〈うん? 何だが妙に熱量が……って、まさか!〉


 機能停止するどころか急速に熱量が大きくなっていく。

これは動力炉の暴走、いや、自爆機能が搭載されていたのか。

すでに熱量は2000℃を超えている。

金属が溶ける温度だ。



 このまま行けば、温度は万単位にまで上昇するだろう。

すでにゲドガルド自身も溶け始めている。

爆発すれば地上に太陽が顕現するようなものだ。

俺は死にはしないだろうが、この大陸は吹っ飛びかねない。


〈くそ! 面倒な事を……〉


 崩壊しつつあるゲドガルドを超低温で包み込み、爆発を抑え込む。

しかし、すでに動力炉は溶け落ち、プラズマエネルギーだけが臨界寸前で解放される時を待っていた。

まずは空間隔離して、次は……アイテムボックスにでも放り込むか?

いや、まてよ……。


 プラズマエネルギーの処理法について考えたところで、ちょうど良い奴が目についた。

すでに残念キャラが板についたワニ野郎だ。

確かコイツは何でも食うという触れ込みで、その胃袋は異次元空間になっているはず。

ならば


〈そら、エサだぞ!〉


――ズボッ!


〈!?!?!?〉


 腹の口に小型の太陽を押し込まれ、ワニ野郎は大パニックだ。

腹の口から出た触手も困惑するように蠢いている。

さて、念のため結界で包んでおくか。


――ボフン


 起きた現象自体は大したことなかった。

腹の口と縛られた口から、僅かに閃光が漏れただけだ。

しかし、その閃光が消え去ると同時にワニ野郎の命の火も消え去っていた。

さすがに太陽を飲み込めば、胃袋が焼けてしまうようだ。

外に熱量が漏れなかったのは見事と言えるだろう。


――ズズン


 ワニ野郎は崩れ落ち、動かなくなった。

完全に死んでいる。

口を縛っていた槍はもういいだろう。

手元に戻すとしよう。


〈さて、これで残るはラスボスだけだな〉


 邪神の神気はいまだに地下。

逃げるかと思ったが、逃げなかったらしい。

いい加減決着を――


〈な、なんだ!?〉


 突然、何かに包み込まれて視界が真っ暗になる。

纏わりつく何かを振り払おうとするが、スライムのように絡みつき上手く行かない。

抵抗空しく、俺は赤黒い何かに飲み込まれてしまう。

くそ、一体何が……。


     *   *   *


 フィオが先兵と戦っている間、邪神は回復に努めていた。

しかし、それだけではない。

囮となるダミーの力の塊を残し、秘かに地上に向かって移動していたのだ。

隠密に長けた邪神だからこそできる事だった。


〈悔しいが直接戦闘では奴が上。何とか不意を突かないと……〉


 インターバルを置いたせいか、邪神は少し冷静さを取り戻していた。

コレクションを使って稼いだ時間で逆転の一手を模索する。

黒き巨神は別世界の最終兵器3体を難なくあしらっている。

このままでは全滅するのは時間の問題だろう。


〈奴に気付かれずに接近できれば手はあるんだが……。む、そういえばあいつは……〉


 と、そこで邪神は気付いた。

口を塞がれ、いいように転がされている怪物『終焉の捕食者』の能力を。

捕食者は、空間を削り取る顎で何でも食べることができる。

さらに腹の口はあらゆるものを飲み込むことができる。


 だが、食べた物は同じ1つの胃袋に送り込まれる。

そして、この胃袋は一種の異空間になっているのだ。

同じような能力を持つ魔物は存在するが、捕食者の胃袋は格段の高性能だった。


〈よし、こいつを利用すれば!〉


 頭から地面に突き刺さり、もがいている捕食者。

邪神は地中を慎重に移動し、近づいていく。

そして、腹の口から捕食者の胃袋に入り込んだ。


〈よし、後はチャンスがあれば仕掛ける!〉


 そして、そのチャンスは来た。

プラズマが放り込まれた時はさすがに驚いたが、なんとか耐えることができた。

胃袋は壊れたが、自身の隠密能力で奇襲を仕掛けることができた。


 そして今、邪神はスライム状に変形した身体で黒き巨神を飲み込むことに成功した。

後は逃がさないように神気を奪っていけば、巨神の力は全て邪神のものとなる。

決着はついたかに見えた。


     *   *   *


〈これは、力が吸われているのか?〉


 一方、邪神に取り込まれたフィオは、自身の神気が周囲の闇に奪われている事に気付いた。

脱出しようにも水の中で暴れているように全く手ごたえがない。

むしろ暴れるほどに消耗が速くなっていった。


〈そうか、これが奴の神域って事か。らしいと言えばらしいな〉


 神域。

それは神が持つ自身の領域。

黒き神と白き神が転生の輪を神域としているように、神域はその神の在り方に深く結びついている。

世界を捨て、自身の在り方を放棄した邪神。

その神域は邪神の内側に存在したのだ。


〈奴の異様な隠密性の秘密がこれか〉


 自分の内側に存在する神域に逃げ込む。

それが邪神の切り札だった。

もっとも、そこにいると認識されてしまえばばれるし、外側から破られることもある。

ついでに言えば、最近邪神は切り札を切り過ぎていた。


〈さて、どうするかね……〉


〈くくく、真正の神ならともかく、半端者のお前に神域を破壊できるものか!〉


 脱出手段を考えるフィオに、邪神の嘲笑が投げかけられた。

もはや取り繕う気も無いのか、余裕のない小物臭の漂う口調だった。


〈確かに、半端な手段じゃ無理だな……仕方ない〉


 フィオは自身も多大なリスクを負う手段を採用する。

そして決意を込めて邪神に問いかけた。


〈なあ、お前は極楽浄土って信じるか?〉



この章もあと数話。


それが終わればエピローグとなる最終章です。

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[一言] >週末の捕食者 明らかに誤字とわかるんだけどワロタwww
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