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リバース チェンジ ワールド  作者: 白黒招き猫
第1章 異世界召喚編
20/216

港町にて

 所変わって大陸東部。

山岳地帯を抜けたリンクスは、海岸線に広がる港町を発見した。

帝国と教国は戦争状態だが、共和国は今のところ中立だ。

よって、どちらの国とも貿易がおこなわれている。


 だが、大陸の中央部は天狼の森、禁断の地、山地で分断されている。

よって貿易ルートは陸路ではなく海路という事になる。

この港町は帝国との貿易に使用する東側の海路の中継ポイント、補給地として発展してきたのだ。

かなりの飛び地だが、一応共和国最東端、最北端の町という事になる。


 延々と何も無い山を探索していたリンクス。

ようやく見つけた町に早速潜入する事にした。

もちろん巨大な白獅子が現れたら大パニックだ。

猫の姿に変身してである。


 

 港には大型船がずらりと並び、船員達が忙しく作業している。

船に満載された物資は全て帝国行きだ。

帝国から戻ってくる船の荷の量とは明らかに違う。

戦争は第3国からすると稼ぎ時なのだろう。


「ほれ、さっさと降りろ」


 声の方に目をやると船から獣人達が下ろされていた。

手枷に鎖、一目で奴隷と解る。

船の整備の為に降ろされたらしい。


 奴隷たちは1カ所に集められ、簡単な食事を与えられている。

商品の品質は落とさないようにしているようだ。

最も全ての奴隷商が同じとは限らないが。


 と、1人の商人が奴隷商に近づいていく。

知り合いらしい。

2人はそのまま立ち話を始めた。

リンクスはなんとなく気になって盗み聞きする事にした。




「おいおい、竜人族なんてどうやって捕まえたんだよ? しかも男の大人じゃねえか」


「腹減らして倒れてたんだよ。こう言っちゃなんだが俺は餓死から救ってやった命の恩人だぜ」


 そう言えば獣人たちの暮らす南大陸は食糧問題で戦争中らしい。

そして戦争難民は次々に奴隷商に掴まって売られているとか。


「毎回毎回よくもまあ何十人も捕まえてくるよな」


「まあ、な」


「ん? どうかしたのか?」


「いや、こっちとしちゃありがたいんだがな。志願してくる奴もいてな」


「奴隷になりたいってか? そりゃまた……」


「戦争で殺し殺される位ならってことらしいがね」


「ふーん」


 南大陸の状況は相当悪い様だ。

奴隷という形を取ってでも避難したいとは……。


「しかし、何時までやってるのかねぇ。畑耕す代わりに戦争してんだろ? 食糧事情が良くなるわけ無いじゃねえか」


「確かにな。もう人口は開戦当時の半分以下だって話だ」


「は? じゃあ、もう戦争続ける意味無いじゃないか。人が増えて食糧が足りなくなったのが原因なんだろ?」


「ああ。すぐに戦争をやめれば、感情的なわだかまりはともかく復興に取り掛かれるだろうな」


「何だよ、引くに引けないってのか? でも、このままじゃ南大陸の獣人は滅んじまうぞ」


 そうだ。

このままでは獣人達は共倒れだ。

滅びの道を突っ走るほどの馬鹿ばかりなのか?

それとも他に戦争をやめられない理由があるんだろうか。


「ああ。それは俺も気になっている。で、奴隷たちに色々聞いてみたわけだ」


「何か事情があったのか?」


「今までははっきりした情報が無かったんだがな、例の竜人が信憑性のある話をしてくれたんだ」


「竜人がらみなのか?」


「まあ聞け。以前は獣人達は各種族や部族にわかれて戦っていた。協力したり連合を組んだりもしていたようだがな」


「ああ、それは知ってる」


「ところが今は2つの勢力に別れて戦っているらしい。穏健派と過激派だ」


「あの竜人の兄ちゃんは?」


「穏健派だそうだ。穏健派ってのは今すぐ戦争をやめて戦争前の状態に戻ろうって連中だ」


「過激派は?」


「これを機会に獣人は一つにまとまるべきだって考えらしい」


「それだけ聞くと過激派もまともに思えるな」


「ああ、王になるべきなのは過激派のトップで、逆らうやつは皆殺しって所が無ければな。ちなみに穏健派は各種族の代表者による合議制でまとまるべきって考えだ」


「王政と共和制か。俺達としては穏健派に1票だな」


「まあ、そんなわけで種族も部族もごちゃ混ぜになって、思想で真っ二つになって対立しているらしい」


「今まで以上の泥沼ってわけか。そりゃ奴隷になってでも逃げたくなるわな」


「そして過激派のトップは竜人らしい」


「へえ、意外だな。連中は強いけど閉鎖的で内向的な種族なんだろ? 南大陸の王になるーなんて考えるもんなのかな」


「ああ、だからあの兄ちゃんも大半の竜人も穏健派らしいんだけどな」


「そもそも、文化も性質も全然違う種族を一つにまとめるなんて出来るのかよ」


「現実的じゃないな。だから穏健派の方が数では勝っているらしい」


「でもケリが付いてないんだろ? よっぽど強者が過激派に集まってるのかね」


「うーん、どこまでホントか解らないんだが過激派のリーダーがえらく強いらしい」


「例えば?」


「同じ竜人の戦士10人を軽くあしらうとか、ドラゴンを従えているとか」


「おいおい、何の冗談だよ」


「俺だってまた聞きだからな。事実かどうかなんて解らんよ。……おや?」


「どうした?」


「猫だ」


「ん? へえ、真っ白で綺麗だな。飼い猫かな」


「魚食うかな」


 中々面白い話を聞かせてくれた2人に、愛想を振りまいて感謝するリンクスだった。

そして、さすが港町。

魚ウマ~。



別に忘れ去られていた訳ではありません。


共和国に向かったフェイも。

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