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リバース チェンジ ワールド  作者: 白黒招き猫
第4章 魔大陸決戦編
199/216

神ならざる破壊者たち

久々のフィオ視点です。

◆フィオ◆ 


 まず最初に突っ込んできたのは、2足歩行のワニのような怪物だった。

本能剥き出しで知性とか理性とか、そういったものは感じられない。

大きく開いた顎は、俺の上半身を一飲みにできそうだ。


〈『終焉の捕食者』ね。何でこんなモノ造ったんだか……〉


 邪神の手駒ではあるが、神とは直接関係ない存在のようだ。

普通に鑑定できるな。

ふむ、コイツの口は異次元に繋がっていて、どんなものでも食べることができるのか。

さらに胃袋の容量にも限界が無く、いくらでも食べることができる。


 しかし、エネルギー効率が非常に悪く、慢性的にエネルギー不足状態なのだ。

だからこいつは、常に飢えて発狂している。

口と胃袋を維持するために、常に何かを食っていなければいけない、か。

暴食の大罪を具現化したような奴だ。


〈グギョアアアアアアァ!!〉


 口から涎を垂らしながら怪物が飛び上がった。

どうやら俺を頭から丸呑みにするつもりのようだ。

もちろん食われてやる気など無い。


〈考え無しのケダモノごときに……っと!〉


――バシュ! バシュ! バシュ!


 飛び上がった怪物に意識を向けた俺に、無数のエネルギー弾が撃ち込まれた。

横に跳躍して噛みつきと銃撃を回避する。

撃ってきたのはトカゲサイボーグの方か。

ヤマアラシロボの方はそれほど機敏じゃないようだな。


〈名前は……型番長いな。通称は『ゲドガルド』ね〉


 外見は機械を組み込んだ生物だが、実際は少し違うようだ。

生物っぽい部分は有機機械バイオコンピュータで構成され、骨格や外殻など強度が必要な部分は無機機械で構成されている。

心臓は無く、代わりにプラズマジェネレーターという高出力の動力炉が胸部に存在しているようだ。


 武装は両腕のドリルアームと、そこに内蔵されたプラズマビームガン。

さらに口部のプラズマビームキャノン、胸部のスプレッドプラズマキャノン。

他にも様々な兵器が内蔵されているようだ。


――ズドォ!!


 おっと、飛び上がっていたワニ野郎が頭から地面にダイブしてしまった。

前足が無いせいで頭が抜けず、必死にもがいている。

さっさと潰すか。


〈オラァ!〉


〈ギョワ!?〉


――ボヨーン!!


〈んん!?〉


 犬〇家状態のワニ野郎の無防備な背中。

そこを背骨をへし折るつもりで蹴りつける。

しかし、返ってきた感触は予想外のものだった。


〈ゴムボールみたいな感触だな。つくづくよく解らん生物だ……〉


 爬虫類っぽい見た目とは裏腹に、ワニ野郎の身体は物凄い弾力だった。

あのスタートダッシュもジャンプも、このしなやかな身体のおかげのようだな。

とはいえ、ボールのように吹っ飛んでいったので、まずはゲドガルドだ。


――ギュイイイイィ!!


 ゲドガルドの両腕のドリルが輝き、回転し始めた。

超合金製のドリルをプラズマフィールドでコーティングしているのか。

背中のスラスターが火を噴き、滑るように接近してくる。


――バリバリバリ!!


 ゲドガルドのドリルと俺の槍が接触し、スパークする。

明らかにこちらが優勢。

たった一度の激突で向こうのドリルはボロボロだ。


 不利を悟ったゲドガルドが口を開き、ビームキャノンを展開する。

だが、撃つのを待つほどお人好しじゃない。

左手にシールドを展開して奴の口につっこみ、砲身を塞いでやった。


――ドォン!!

 

 爆風を利用して後方に跳躍。

シールドは破壊されたが、ビームキャノンは暴発し、もう発射不能だ。

というか、頭部が半壊している。


〈やれやれ、そっちもか〉


 少し距離が空いたので気付いたが、ゲドガルドの胸部にも砲身が展開されている。

同時に展開されたみたいだが、口部のキャノンよりチャージが遅いようだ。

神気で投擲ナイフを作り出し、投擲。

おそらく主力であろう兵装を両方無力化した。


――パシュ!!


〈おっと、最後の1体か〉


 上空から降り注ぐ青いレーザーを躱す。

忘れていた最後の一体。

ヤマアラシロボが背中のトゲから放った攻撃だ。


 鑑定によると名称は『アポカリプス・リベンジャー』。

全身が特殊なミラーコーティングで守られていて、衝撃、高温、低温、電気などあらゆる攻撃を無効化する能力を持つ。

そして受け流されたエネルギーは背中のトゲに収束され、撃ち返されるのだ。


 では、攻撃しなければ無害かというとそうでもない。

巨体が歩き回ればそれだけで脅威だし、自然界に普通に存在するエネルギーも収束すれば脅威となる。

例えば、さっきのレーザーは光を収束して発射したもの。

放射線や静電気も、こいつにかかればⅩ線レーザーや高圧電流に早変わりだ。


 普通に考えれば、あらゆる攻撃が効かないこいつを倒す手段など無いだろう。

少なくとも物質世界の科学技術では。

だが、ここは魔法が存在するファンタジー世界。

さらに今の俺は神クラスの存在だ。

やりようはある。


〈鎧が頑丈なら、まずはそれを剥がす〉


 左手を前に突き出し、水属性中級魔法【アシッド・ミスト】を展開。

さらに土属性中級魔法【ロトン・サンド】を並列起動する。

強酸の霧と腐食の砂塵、特殊コーティングとやらはこれを防げるかな?


〈食らえ!〉


 ゲームではアシッド・ミストは防御低下、ロトン・サンドは攻撃力低下の効果があった。

装備の耐久度も下げるので、スライム並みに嫌われる攻撃だったが、さて効果のほどは……。


〈無傷か。魔法まで受け流すとは、少し甘く見ていたか……って、邪魔!〉


 しつこく噛みついてきたワニ野郎。

それを躱して顎の下に潜り込み、下から槍を突き刺して串刺しにしてやる。

顎を貫通した槍は蛇のように巻き付き、奴の大口を縛り上げてしまう。


 どんなものも喰らう口も、開かなければ意味は無いだろう。

ついでにゲドガルドの方に蹴り飛ばしてやると、2体はぶつかってひっくり返ってしまった。

ふむ、あれでも同士討ちをしないのか。


 マシーンのゲドガルドはともかく、本能丸出しのワニ野郎は敵味方関係無さそうなんだが。

俺だけを敵と認識するように操られているのは確定だ。

まあ、どうせ全員倒すんだから関係無いけどな。

まずはヤマアラシロボからだ。


 酸も腐食も効かないことは以外でも何でもない。

金を始め劣化に強い物質などいくらでもある。

あんな兵器を造れる文明なら、劣化対策などなされていて当然だろう。

と、なれば――


〈これならどうだ?〉


 再び展開した【アシッド・ミスト】と【ロトン・サンド】。

その2つを重ねて収束し、球体を形成する。

さらに、そこに魔剣サマエルを突き込む。


 サマエルから耐性貫通の呪毒が流れ出し、魔法を禍々しく浸食していく。

つくづく反則的な性能だよな、コレ。


〈これでどうだ?〉


 ヤマアラシロボも反撃にレーザーを撒き散らす。

さっきの俺の魔法を受け流し、収束した魔力光線。

何だかんだで凄い技術だよな。


〈!?!?〉


 ヤマアラシロボの巨体が禍々しい気体に包まれる。

さて、上手くコーティングを剥がせたかな?

どれどれ……。


〈うわぁお……〉


 魔法の効果が切れてヤマアラシロボの姿があらわになる。

その姿は見るも無残なものだった。

表面のコーティングどころか装甲全体がボロボロに腐食してしまっている。

内部も魔法の影響を受けたのか、あちこちから火花が散っている。


〈GIGIGIGI……〉


――バシュ! バシュ! バシュ!


 最後の抵抗とばかりに背中のトゲが発射される。

1本1本が槍のように長く鋭いが、ヒビだらけだ。

槍はワニ野郎に使っているが素手で十分だ。


 手刀で叩き落すとトゲは粉々に砕け散る。

<おいおい、これだけ脆くなってよく機体を維持できてるな。>

何度も思うが凄い技術だ。


〈ていっ!〉


 もはや動く事もできないヤマアラシロボ。

その頭部に蹴りを叩き込む。

すると衝撃で、すでに限界だった装甲に亀裂が走り砕け散る。

崩壊は連鎖し頭部から上半身へ、上半身から全身に亀裂が走り、ついにヤマアラシロボは崩れ去った。


 オーパーツみたいに部品が残っても困ったが、その心配はなさそうだ。

崩れた残骸は、風化し塵となって消えていく。

自分でやっておいてなんだが、恐ろしい光景だ。


〈さて、ちゃっちゃと片付けるか〉


 残るは半壊したサイボーグと口の開かない大食いモンスター。

大した脅威でもあるまい。

邪神の悪あがきもここまでだな。





次くらいで決着にしたいですね。


邪神の末路やいかに?

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