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リバース チェンジ ワールド  作者: 白黒招き猫
第4章 魔大陸決戦編
198/216

破滅のコレクション

寒暖差が大きいと、持病の副鼻腔炎がキツイ……。


蓄膿症まで行くと頭痛とダルさでダウンです。

 姿を消した邪神。

フィオは周囲を見渡すが、影も形も無い。

神気を探ってみても反応無し。


 元より隠れるのが大の得意な邪神だ。

本気で隠密モードに入られたら見つけるのは難しい。

相手もうかつに動けないはずだが、奇襲には注意しなければならない。

そこまで考えたフィオは下を見た。


〈(見失った場合のセオリーは上下と背後の警戒。そして相手は植物ベースのボディ。なら、疑わしいのは下か……)〉


 足元に意識を集中するフィオ。

だが、やはり何も感じない。

逃げてしまったのだろうか、と一瞬考えるが即座に打ち消す。

ああいうプライドが高く、他者を見下した小物は引くべき時に引けないものだ。


 奴は必ず仕掛けてくる。

フィオはそう確信していた。


   *   *   *


〈ぐ、クソ……。あの野郎……〉


 一方、邪神はフィオの読み通り地中に退避していた。

何重にも隠蔽の結界を重ねた領域を展開し、その中に隠れ潜む。

その技術は敵ながら見事なものだった。


 このまま逃げ出すのが最善手であり、事実普段の邪神ならそうしていただろう。

だが、格下と見下していた相手にいいように叩かれた屈辱が、冷静な判断をさせない。

やはり彼はボードゲームの指し手であり、自身が戦うVRゲームプレイヤーではないのだろう。

邪神は客観的に状況を捉える事が出来なくなっていた。


〈ふん、この世界樹の種子がある限りエネルギーは無限。最後に笑うのはこっちだ!〉


 邪神の神気に犯された種子は、大地に満ちる魔力を邪神に供給し続ける。

少し時間をおけば消耗した神気を回復できる。

屈辱だが、それまで隠れているべきだ。

根本の判断は間違えていても、何とか冷静に思考する邪神。

だが――


〈何だ? 急に暑く……いや、熱い!〉


 突然、周囲の温度が上昇し始める。

見れば、暗い地中にオレンジ色の輝きが満ちていた。

結界の外はまさしく地獄のような光景に変わっていく。


〈これは溶岩? そういえば、あいつの下僕にそんな能力を持ってるやつがいたか。だが、こんな程度で……〉


 邪神は結界を強化し、熱を遮断する。

たかだか数千度の高熱では、物理法則を超越した神を焼くには不足なのだ。

だが、邪神はフィオの本当の狙いにまでは気付けなかった。


     *   *   *


 居場所が分からないなら炙り出す。

フィオは地上で大人しく待つような性格ではなかった。

大地に槍を突き立て、ヴァルカンの能力を再現する。

すると地面はあっと言う間に赤熱化し、溶けだした。


 範囲は限定し、しかし深く深く。

邪神が潜んでいるであろう深さまで深く。

火山の噴火を逆にしたように溶岩は沈んでいく。


〈見つけた!〉


 溶岩の湖の中、異物を発見する事はできなかった。

そもそも、何かを探そうとするから見つからないのだ。

ならば逆に全てを何かで埋め尽くしてしまえばいい。

その時生まれる空白地帯。

それこそが邪神の隠れている場所だ。


〈真下か。確かに一番の死角だし、反撃するにも都合がいいな〉


 溶岩生成に回していた神気をカット。

神槍に神気を集中する。

そして――


――ドン! ドン! ドン!


 神槍が3度大地を穿った。

収束された神気は地中を走り、誘導ミサイルのように邪神に襲い掛かる。

溶岩はすでにただの地面に戻りかけており、それが逆に邪神の動きを阻害する。

不意打ちという事もあり、回避は困難のはずだ。


――パキィ


 何かを砕いた感触が伝わる。

直後、地下深くに邪神の気配が現れた。

フィオはさらに神槍を振り上げ追撃する。


〈さあ、出てこないなら一方的にやらせてもらうぞ?〉


   *   *   *


〈な、なんでだ!? なんでこっちの居場所が!?〉


 悠々と神気の回復を図っていた邪神。

しかし、突然の衝撃にその余裕は一瞬で吹き飛んだ。

隠蔽結界領域は一瞬で破壊され、灼熱の溶岩が邪神を焼く。


――ドン ドン ドン


 再び頭上から襲い掛かる神槍による攻撃。

躱そうとするが溶岩の中では上手く動けない。

直撃は避けることができたが、身体の一部を削り取られてしまう。


〈……仕方ない。出し惜しみはしていられないか〉


 ここでようやく邪神は切り札を切ることにする。

フィオも所有している保管空間、いわゆるアイテムボックスと呼ばれる能力。

邪神はそれを開き、目的のものを取り出す。

いや、呼び出す。


〈壊されたらコレクションが減るけど、また集めればいいし……〉


 邪神はこれまでいくつもの世界に干渉してきた。

その結果、無事だった世界もあったが、滅んでしまう世界もあった。

邪神にとってはゲームであり、楽しむことができればそれでいいのだが、実はあるこだわりもあった。

それは自分が気に入った戦利品をトロフィーとして持ち去る事だ。


 例えば邪神の干渉によって、世界規模の全面戦争が起きた世界があった。

その結果として技術革新が進み、最後には核を超える最終兵器が作られた。

しかし、その世界の人類はギリギリで踏み止まり、最終兵器は封印され戦争は終結した。

邪神は世界を離れる際に、その最終兵器を戦利品として持ち去った。


 例えば邪神の干渉により、バイオテクノロジーが異常に発展した世界があった。

生命科学こそが至上となり、法や倫理は置き去りにされ、非道な実験が平然と行われた。

その結果、人類の手に負えないクリーチャーが生み出され、人類は滅ぼされてしまった。

その後クリーチャーたちは共食いを始め、最後に最強の1体が残った。

邪神はそのクリーチャーも連れ去った。


 数多の世界から集められた破滅のトロフィー。

それらはコレクションにして邪神最大の戦力。


〈さあ、行け!!〉


 それが今、解き放たれた。


   *   *   *


〈……これは、何かが来る? 邪神本体じゃないな〉


 フィオを囲むように現れた3つのゲート。

どう考えても邪神の仕業だが、その内部からは神気を感じない。

一瞬の判断でゲートの中心から飛びのき、3つ全てを視界に収める。


〈何だ、あれは……〉


 ゲートから現れた存在を目にしてフィオは困惑した。

なぜなら――


 1体は直立したワニのような巨大生物。

ただし、前足が無く、口が異様に大きい。

腹部にもイソギンチャクのような口があり、その体色は真っ白だ。


 もう1体は金属でできたヤマアラシのような機械。

背中の無数の針は、アンテナの様にも、ミサイルの様にも、ビーム砲の様にも見える。

全身が何かの特殊コーティングがされているようで、鏡のように輝いている。


 最後の一体は2足歩行のイグアナをサイボーグにしたような怪物。 

口と胸部にはパラボラアンテナのような大型の砲身が設置されている。

両腕はドリルのようになっており、そこに空いた穴は銃口なのだろう。

他にも多数の武器を装備しているようだ。


 あまりにもこの世界の技術とかけ離れた存在たち。

逆にそれが彼らの正体をフィオに知らせてくれた。


〈なるほど、異世界の怪物軍団か。本当に手段を選んでいられなくなったみたいだな〉


 体格はほぼ同じ。

数は3対1。

だが、フィオに負ける気は一切ない。


〈哀れな虜囚たちよ。俺がお前たちを解放してやる〉


 フィオは自分に流れ込む祈りを感じる。

その圧倒的な力は、まったく衰えることがない。


 邪神は勘違いしていた。

自身の力が世界樹の種子によって無限に供給されるように、フィオもまた信仰によって無限に力を得ているのだ。

持久戦になったところで息切れなどしない。

むしろ不利になる可能性が高かった。


 もっとも、信仰を得たことがない邪神がそのことに気付けないのは、仕方が無い事ではあった。

彼は真正の神ではあったが、信仰を受けることがないほどの末端、下っ端であったのだから。


〈グァ?〉


〈キュイ―ン ピピピ!〉


〈……〉


 ワニのようなクリーチャーが、その口をフィオに向ける。

ヤマアラシのような兵器が、フィオをターゲットに設定する。

イグアナのようなサイボーグが、ドリル状の両腕をフィオに向ける。


 フィオもまた右手に神槍を、左手に魔剣を構える。

そして、音を置き去りにする速さで踏み出した。




じゃしんは【おんみつ】をつかった。


しかし、みつかってしまった。


じゃしんはなかまをよんだ。


くりーちゃーAがあらわれた。


ましーんAがあらわれた。


さいぼーぐAがあらわれた。

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