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リバース チェンジ ワールド  作者: 白黒招き猫
第4章 魔大陸決戦編
196/216

その姿

何とかギリギリ月2回更新。


中々ペースが戻せませんね……。


暑いし。

 フィオと宏輝はどちらからともなく手を離した。

フィオはようやく『彼』が何者であるのかを理解する。

彼は自分のバックアップデータのような存在だったのだ。


 プログラムやシステム、あるいはデータに欠損が出た時に、それを復元するための予備データ。

彼は『ハノーバスでの冒険によって得た経験』という追加データによって『自分』を失いかけていたフィオを『修復リカバリー』するために姿を現した。

そして、役目を果たした彼は逆に『フィオ』としての情報を全て失ってしまった。


 では、なぜ彼は佐藤宏輝の姿を取っているのか?

データを全て失ったのなら、さっきまでの自分と同様に、姿を保てなくなるか消えるはずなのに。


「もしかして、佐藤宏輝のデータが残っているのか?」


「……」


 『彼』は何も語らなかった。

だが、穏やかな表情のまま頷いた。

思い返せば、自分が知るはずのない佐藤宏輝の記憶が頭に浮かんだことがあった。

自分の中にはフィオとしてのデータだけでなく、佐藤宏輝の記憶も存在していたのだ。


「そうか、考えてみれば当然か。プレイヤーがゲーム中にリアルの事をまったく考えないはずないもんな」


 自分はRWOのプレイヤーのプレイデータ。

当然そこにはプレイヤーの思考のログも残っているはずなのだ。

もちろんプライバシー保護の観点から、それらの解析や再現は規制されているはずだ。

だが、犯罪プレイなどが行われた際はコンピュータはプレイヤーの思考ログを解析して、意図的な行動だったのかを分析し、オレンジやレッドを区別していると聞いたことがある。


 そして、もう一つ。

自分の人間性をつなぎとめていたのも、おそらくは『彼』の存在だったのだろう。

神に近付き人間性を失うたびに、秘かにリカバリーし続けていたのだ。


 だが、彼は消える。

本来の役目を果たし、リソースの大半を使い果たした今の『彼』は残滓、残りかすのようなものだ。 

さらに、逆に考えれば彼はフィオが神として覚醒する事を妨げているともいえる。

今まではともかく、今はリミッターなど邪魔でしかない。

だから消える。


「あ、おい!」


 『彼』が背を向け歩き去る。

別れの時が来たことをフィオは理解した。

この世界を訪れてからずっと共にあった半身との別れ。

そして、現実世界の自分との別れが。

おそらく神となった自分は、この世界に縛られた存在となる。

それは、かつての世界との繋がりが切れるという事でもある。


 『彼』と入れ替わるように使い魔、いや、神使たちが歩み寄ってくる。

だが、フィオは『彼』から目を離せなかった。

やがて『彼』は光の輪の端で足を止めた。


「さようなら。佐藤宏輝……」


 光の輪の中心で神使たちに囲まれたフィオが別れを告げる。

それを聞いた『彼』は僅かに振り向き微笑んだ。

そして光の粒子と化して消えていった。


「……」


 フィオは目を閉じて祈りに耳を傾ける。

今や祈りは世界中から捧げられていた。

突然現れた光の環という分かりやすい光景が、人々の心に希望を灯したのだ。


「よし、行くか!」


 そして、フィオは目を開き。

己のあるべき姿を定める。

それに合わせるように、巨大な光の輪が収束した。


      *   *   *


〈……準備ができたようだね。待ちかねたよ〉


 呟く邪神の目の前で、光の輪が収束し光の柱となって天と地をつないだ。

やがて、その中に漆黒の影が浮かび上がる。

光の柱が消え去った時、そこには邪神に匹敵する大きさの漆黒の巨人が顕現していた。

体型はやや細身、フィオの体型を再現している。


〈おやまあ、散々待たせておいてそれが答えかい? 初心に帰るのは結構だけど、捻りが無さすぎないかな?〉


 あまりにシンプルな神体に拍子抜けし、嘲笑する邪神。

だが、大いなる闇の巨神は気にした様子もなく、自分の姿を確認する。

手を握り、開く。

腕を曲げ伸ばす。

そして全身を見渡す。


〈確かに、これじゃあ足りないな〉


 闇の巨神、フィオがそう呟く。

すると、その両手両足に光が集まり、虹色に輝く手甲と脚甲が形成された。

さらに胴体には胸当てが形成され、最後にオーロラを束ねたようなコートが体を覆った。


〈あとは……これは、まあ気分の問題かな〉


 ついでとばかりに、頭部の目の位置にアメジストのような紫の光が2つ灯った。

視覚に頼らない神は、目など必要ない。

本当に気分の問題だった。


〈せっかくだし、アレも使うか〉


 次に闇の巨神が目を向けたのは、邪神によって破壊された翼蛇の残骸だった。

手を翳された残骸が光を放つ。

すると巨大な蛇体がまっすぐに伸び、細く集束されていく。

さらにボロボロの翼も白い飾り布と化した。


〈よし、こんなものか〉


 誕生したのは翼蛇をそのまま武器にしたような槍であった。

フィオの神槍杖オルピニスによく似た、しかし比べ物にならない程巨大で強大な力を秘めた槍。

闇の巨神はそれを手に取ると、確かめるように振るう。

それは無造作でありながら、演武のような美しさを感じされる動きだった。

邪神も黙ってその姿を見つめている。


〈問題無しか。待たせたな〉


 準備を終えた巨神が邪神に向き直り、槍を構える。

槍を持たない左手を前に出し、中ほどを水平に持った槍を身体の後ろに回す。

槍を棒としても使用するための、RWO時代からのフィオの構えだった。


〈成程、君は英雄神や武神に近いタイプだったのか。以前とは比較にならないじゃないか〉


 戦闘準備を整えたフィオの姿を見た邪神から、嘲りの様子が消える。

人から昇神した戦いに関する神には人型を取るものが多い。

それは、彼らが最も力を発揮できるのが技術と経験を活かせる人型だからだ。

フィオは分類するなら断罪神の類だが、タイプ的にはこれらに近いと邪神は理解した。


〈いいね! いいねぇ!! そうだよ、そうこなくちゃ楽しくない!!〉


〈こっちは別に楽しくはないけどな〉


 興奮する邪神に冷静に返すフィオ。

だが、言葉とは裏腹に自身も高ぶっている事を自覚する。

だが、それに飲まれる様な事は無い。


〈(集中しろ。奴の思考を読め。奴の動きを見切れ)〉


 フィオの集中に呼応するように、紫の目の輝きが強くなる。

槍が流れ込む神気に反応し、強く輝く。

そして、蠢く邪神の触手がスローになる。


〈さあ、来なよ!!〉


〈ああ〉


――ゴオッ!!


〈は?〉


 フィオは愚直に突っ込んでくると思っていた邪神。

しかし、それを裏切るようにフィオはいきなり槍をぶん投げていた。



フィオ復活。


ゴ〇ラみたいな怪獣×怪獣も良いけど、ウルト〇マンみたいな巨人×怪獣も捨てがたい。

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