表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
リバース チェンジ ワールド  作者: 白黒招き猫
第4章 魔大陸決戦編
191/216

邪神顕現

連休も遂に終わりですね。

皆さんもどこかに出かけてきたでしょうか?


私は連休頭が休日出勤、後半が家族旅行でした。

中々10日丸々休みとはいかないものです。

もちろん代休は貰いますが。

 太陽光に焼かれたグラーダが力尽きたように落ちていく。

それを見ても、ジェイスとルーナは油断することなく攻撃を続けていた。

グラーダの魔力反応が感じられなくなるまで。

確実に止めを刺したと確信できるまで。

だが――


「! これは……」


「魔力が変質した?」


 突然グラーダの魔力が変化した。

魔力とは魂の放つ波動だ。

指紋のようなもので、個人によって違い、おいそれと変化するようなものではない。


 グラーダは無数の生物を取り込んでいた。

しかし、それは他者の肉体を自分の魔力に染め上げていたのであり、グラーダの魔力自体に変化はなかった。

だが、今グラーダの魔力は、もはや彼とは認識できない程に変質していた。


「嫌な予感がするな……」


「ええ……」


 グラーダの魔力は変質しただけでなく、急激に膨張している。

2人はようやく攻撃をやめ、グラーダの落下地点に向かうことにした。

そして、その途中で奇妙な光景を目撃する。


「ヘカトンケイルが溶けていく?」


「見て、分体も溶けているみたい」


 フィオによって倒され、すでに活動を停止したヘカトンケイル。

その山のような巨体がドロドロと溶けだしていた。

戦場を埋め尽くしていた分体の亡骸も同様に溶け、周囲の兵たちも困惑している。

その赤黒い液体は、急速に地面に吸い込まれていく。

不自然なほどに。


 それは他の2つの戦場でも同じだった。


     *   *   *


「片付いたか……」


「被害も大きくはないようですな」


「当然です。被害を抑えるのが私たちの役目なのだから」


 鬼王国の戦場には安堵の空気が漂っていた。

カリス、ハウル、シザー、ネクロスによって3体のヘカトンケイルは討伐され、分体の掃討も完了したところだからだ。

途中で明らかに敵の統制がみだれ、ヘカトンケイルが弱体化した事もあり、兵の被害は予想よりもはるかに軽微だった。


 鬼王ゴウエンも議長タラスもようやく緊張から解放された。

アリエルは変わらず淡々としていたが、その彼女がさらなる朗報をもたらす。


「たった今、連絡が入りました。獣魔国と夜の国でも防衛に成功したそうです。ヘカトンケイルは壊滅、首魁のグラーダも……え?」


「うん?」


「いかがなされた?」


 戦勝を報告していたアリエル。

しかし、突然困惑したように戦場に目を向ける。

すると、そこでは夜の国と同じ光景が広がっていた。


「これは、溶けているのか?」


「赤黒い、何とも禍々しい色だが……」


「……ここだけではなく、全ての戦場で起こっているようですね」


 フィオ、そしてプルートと連絡を取ったアリエル。

この現象はここだけの話ではなかった。

それはつまり、偶然ではなく人為的に引き起こされているという事。


 完膚なきまでに破壊された残骸が、焼き払うために集められた分体が、全て溶けていく。

その赤黒い液体は、やはり地面に吸い込まれて消えていく。

だが、アリエルのセンサーは捉えていた。

その液体の向かう先を。


「夜の国で、一体何が……」


     *   *   *


「いたぞ! グラーダだ!」


「まだ生きて……いえ、様子が変ですね」


 グラーダを、正確には焼き尽くされる寸前のグラーダの残骸を発見したジェイスとルーナ。

しかし、状況は2人の理解を超えていた。

グラーダ自身の肉体は干からび、崩れ、崩壊寸前のミイラのような状態だった。

しかし――


「黒い触手? いや、木の根か。なら胸のアレは世界樹の種か?」


「太陽光を浴びて活性化したんでしょうか? でも、それにしては……」


 そのミイラの胸に、へばりつくように黒い触手の塊が存在した。

いや、それはよく見ると変色した木の根であった。

だが、その光景は世界樹という神聖な存在によるものとは思えない。


「何だ、あの色は? グラーダの邪気に汚染されてしまったのか?」


「おぞましいですね。早く取り出して浄化しないと……」


 ウネウネと蠢く根に嫌悪感を覚えながらも、種を回収しようとするルーナ。

この世界の住人にとって世界樹とは神に次ぐ神聖な存在だ。

この冒涜的な光景に彼女が耐えられなかったのは仕方が無い事だった。

しかし――


「ルーナ!!」


「きゃっ!?」


 とっさにジェイスは影人シェイド族のスキルでルーナを彼女の影の中に沈める。

直後にグラーダを中心に地面から、赤黒い液体が間欠泉のように吹き上がった。

自身の影からルーナを引っ張り出しながらも警戒を緩めないジェイス。

一方のルーナは突然の事に混乱するが、目の前の光景を見て言葉を失う。


 吹き上がった液体は粘性を持っているようで、泥の山のように徐々に堆積していく。

噴き出す勢いは一向に衰えず、ジェイスとルーナは大きく距離を取って飲み込まれないようにする。

理解不能な光景だが、2人は直感的に良くないことが起きている事だけは解っていた。


「この液体、さっきの……」


「ヘカトンケイルの残骸ですね。じゃあ、グラーダはまだ生きているの?」


 山のように膨れ上がった液体。

これがスライムだとすれば規格外の大物だ。

しかし、ソレはさらに、圧倒的に質の悪い存在だった。


――グジュリ グジュリ


「うっ……」


「気持ち悪い……」


 粘液が撹拌されるような音と共に、液体のあちこちから黒い根が飛び出してきた。

何本も何本も、ウジが腐肉から飛び出すように。

そして粘液と絡み合い、グチャグチャ、ネチャネチャと音を立てる。

そのあまりにおぞましい光景に、ジェイスもルーナも口を押えて絶句した。


「これはグラーダの仕業なのか?」


「でも、さっきみたいな状態で生きているとは思えないわ……」


 明らかな異常事態にグラーダの意思の存在を疑うジェイス。

しかし、ルーナの言う通りあのミイラのような姿で生きているとは思えない。

そもそも既にグラーダ自身の魔力など全く感じられない。


〈GUGYOOOOOO……〉


「なっ!」


「ひっ!」


 混乱する2人を嘲笑うかのように、粘液塊に変化が現れる。

黒い根を中心に、赤黒い粘液を肉としてまとったような触手が何本も生えてきたのだ。

しかも、その触手の表面にはタコの吸盤のように無数の目と口が現れていく。

生理的嫌悪感を掻き立てられる2人。


〈GEGYOGYOGYOGYOGYO!!〉


「その声は……」


「グラーダ?」


 だが、フリーズしかけた思考を化物の嘲笑が引き戻す。

理性も何も残されていないが、声そのものは紛れもなくグラーダのものだったのだ。

相手がグラーダなら自分たちが戦うべき。

そう考えた2人の心に戦意がともる。


 そんな2人を見て怪物は無数の目を細め、口元を歪ませる。

嬲るように、嘲弄するように。

だが――


――ズズン!!


〈GYO?〉


「うわっ!?」


「きゃっ!?」


 2人が無謀な戦闘に突入する前に、2人と化物の間に巨大な影が舞い降りた。


〈騙されるな。こいつはもうグラーダじゃない〉


「え?」


「で、でも、この声は……」


 それは巨大な大悪魔アークデーモン、フィオだった。

フィオは2人の困惑を断ち切るように続ける。


「騙されるなと言っているだろう。声などいくらでも模倣できる。模倣できない魔力はどうだ? あいつの魔力はグラーダのものか? 冷静になれ」


「え? あっ!」


「そういえば……」


 そう、そもそも2人がここに来たのはグラーダの魔力に異常を感じたからだ。

冷静になってみれば、目の前の怪物の魔力はグラーダのものとは全く違う。

いや、生物が放つ魔力かどうかすら疑わしい。

それほどの禍々しさだ。


〈まさか直接出張ってくるとはな。この2人を甚振って遊ぶつもりだったのか? 邪神!!〉


「じゃ、しん?」


「これ、が?」


 フィオには感じ取れた。

神を知るフィオだから解った。

この怪物から感じる禍々しい力。

これは魔力ではない。


 神気。

神が放つ魔力より上位の力。

フィオでさえ現状では神槍杖の補助でようやく使いこなしている力。

それを平然と放つ存在。


〈くくく、勝手にネタバラシなんてひどいなぁ……〉


 無数の口が、目が楽しそうに歪んだ。


書籍が販売されてから1ヵ月と少し。


1巻の売れ行き、良好だといいんですが。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ