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リバース チェンジ ワールド  作者: 白黒招き猫
第4章 魔大陸決戦編
184/216

夜の国での戦い

改稿作業の合間の更新です。


月1でギリギリです。


書籍化しながら連日更新する作者さんて凄いですね……。

 鬼王国と獣魔国での戦いが始まる少し前。

5体のヘカトンケイルは、夜の国の王都からも見える距離に接近していた。

その周囲には、数えるのもバカらしいほどの分体がひしめいている。

一体どれだけの民が犠牲になったのか想像もつかない。


「もう来たのか……」


「まあ、他の国に向かうより近いからな」


 王城の玉座の間で報告を受けた夜王ジェイスは、ため息交じりに呟いた。

防衛戦の準備はほぼ完了しているが、もう少し猶予が欲しかったというのが正直なところだった。

そんな彼に身も蓋も無い答えを返したのは、ヘカトンケイルを担当する予定のフィオであった。

ただし、さすがに万に届こうかという分体までは相手にしていられない。

それらを撃退するために王都の全戦力が動員されていた。


「それじゃあ、俺は行くぞ。俺たちはこっちにかかりきりになるから、援護はできない。自分たちで何とかしてくれよ?」


「ああ、そこは心配ない。王城の機能が完全なら、そう簡単に防壁は破られない」


「ヘカトンケイルさえ押さえてもらえれば、数ヵ月でも籠城可能です」


 ジェイスとルーナの言う通り、王城が完全に起動している今、王都は巨大な要塞と化している。

城壁は魔法障壁で強化されているし、自軍の兵士に対する強化機能まであるのだ。

数だけで攻め落とすのは非常に困難。

ゆえに恐ろしいのは強大な個であるヘカトンケイルだけだった。


「2人は前線には出ないんだよな?」


「……ああ。王城の機能を維持するためには、最低でも城内にいる事が望ましいらしいからな」


「王城から離れると精度が落ちるんです」


「そうか。ならいい」


 ジェイスはやや不満なようだが、自分の立場は理解していた。

チェスのキングである2人は倒されたら終わりだ。

前線に出ることなど認められるはずがない。


 議長と獣魔王は死ねば次代が擁立されるし、鬼王にも世継ぎがいる。

だが、吸血鬼の王族はジェイスとルーナのみ。

世継ぎはまだおらず、片方が死ねばもう片方も死んでしまうのだ。


「前線の指揮はラルヴァ卿が執ってくれます。素人の私たちは余計な口を出すべきではないでしょう」


「トケビー卿が補助してくれるしな」


「ああ、ドゥモーアの親か……」


 優秀な武官であるラルヴァ卿を、コウモリに分身する能力でトケビー卿が補助する。

さらに戦闘能力の高い貴族たちは、みな動員されている。

これ以上の布陣は無いだろう。

フィオは分体を意識から外し、ヘカトンケイルを倒すべく王城から飛び去った。


   *  *  *


〈あ、マスター!〉


〈キュキュ!〉


〈……〉


 王都の城壁とヘカトンケイルの中間地点。

そこでフィオはフェイ、リーフ、シミラと合流した。

もう分体の群れが目の前の距離である。


「どうだ? 見つかったか?」


〈う~ん、わかんない〉


〈キュ……〉


〈……〉


「そうか……」


 フィオは3体にグラーダの捜索を頼んでいた。

この期に及んでまだ彼の所在が分からないのは、正直想定外だった。


「そうなると、やっぱりヘカトンケイルに取り込まれたか?」


〈そういえばアレ、なーんか変な感じなんですよね〉


「変な感じ?」


〈キュ! キュ!〉


〈……〉


 ヘカトンケイルに違和感を感じたと言うフェイ。

リーフとシミラも肯定する。

漠然とだが、まるでエントのような感じがするのだという。

群体、あるいは端末のような。


「まあ、やってみるしかないだろう。足止めを頼むぞ」


 言うが早いか、フィオは【悪魔化】を起動する。

黒きオーラが爆発的に放出され、巨大な異形を形作る。

大悪魔をベースに使い魔のパーツで補強された姿。


 狂竜と化したニクスを倒した半魔王形態だ。

しかし、今回はサイズが違う。

ヘカトンケイルよりは小柄だが、その身長は20mを超えている。

右手に持つ槍は30mはあるだろう。


〈グゲ?〉


〈グギョ?〉


 突然進路を阻んだ巨大な影に、ヘカトンケイル達の視線が集中する。

だが、元より彼らは本能中心のケダモノだ。

何者であっても喰らわんと、迷う事無く襲い掛かる。

だが――


〈あははははは!!〉


〈グギュウ……〉


 1体はフェイの作り出した超重力空間に押しつぶされた。


〈キュイ!〉


〈グ? ググゲ?〉


 もう1体がリーフの隔離結界に閉じ込められた。


〈……〉


〈グウゥ……〉


 さらに1体がシミラの幻術にかかり、虚ろな目で棒立ちになった。 


〈オオオオオオォ!!〉


――ザン!!

――ズン!!


 悪魔の振るった左の爪撃が、残る2体の片方を縦に引き裂きさいた。

同時に、もう1体のヘカトンケイルの巨大な口に槍が突き込まれ、その巨体を貫いた。

まともな生物なら間違いなく致命傷となる傷。

しかし――


〈何っ!?〉


 大きく深い傷が、一瞬にして十分の一ほどに小さくなった。

その小さな傷も徐々に薄くなっていく。

ヘカトンケイルが強力な再生力を持っている事は知っていたが、予想以上だった。


〈ならば……〉


 フィオは凄まじい速さで攻撃を繰り返し、一瞬で2体をズタズタに引き裂いてしまう。

核と思わしき巨大な心臓も破壊し、再生力の源と思われる樹液も毒で汚染し、内部を焼く。

だというのに、ヘカトンケイルは再び再生し立ち上がった。


〈どうなっている? いくら何でも異常だぞ?〉


 あまりに常識外れの生命力に、フィオは疑問を抱く。

神気を宿しているとはいえ、所詮はまがい物の眷属だ。

ランクとしてはニクスよりも下だろう。

完全に不死身などという事はあり得ない。


〈瘴気の吸収は俺の方が上回っている。どこからあんな回復エネルギーを引っ張っているんだ?〉


 フィオの攻撃が緩んだと見るや、ヘカトンケイルが反撃に転じた。

複数の腕を振り回し、フィオを殴り飛ばさんとする。

それを回避し、翼を広げて飛び上がるフィオ。


――グイッ!


〈何!!〉


 しかし、地面から無数の腕が生えフィオの右足を掴んでいた。

もう1体のヘカトンケイルを見ると、そいつは一見何もしていないように見えた。

しかし、体中に生えていたはずの腕が無くなり、頭と胴と足だけになっている。


〈このっ!!〉


――ボコォ!!


 フィオが力任せに右足を引くと、掴んでいた腕はブチブチと千切れる。

同時に、何故か腕無しのヘカトンケイルが仰向けにひっくり返った。

そして、その姿が明らかになる。


〈足の裏に腕だと!?〉


 そう、ヘカトンケイルは自らの腕を足の裏に移動させていたのだ。

彼らの腕は小さなパーツの寄せ集めだ。

ゆえに、どこにどのように生やすのも自由自在だった。

足の裏に腕を生やし、その腕の先にさらに腕を生やして伸ばすことも。

先端部分を枝分かれさせ、タコがしがみ付くように相手を捉えることも。


〈気色悪いんだよ!!〉


 千切れても動いて足に纏わりつく腕を、全身からオーラを放出して吹き飛ばすフィオ。

さらに、ひっくり返ったヘカトンケイルにブレスを叩き込んで爆散させる。

しかし、バラバラになる程のダメージを受けたのに、その傷も瞬時に軽傷になる。

流石のフィオも焦り始める。


〈落ち着け……。何かカラクリがあるはずだ〉


 冷静さを失わぬよう気を落ち着け、敵を観察する。

軽傷にはなったが、すぐには立ち上がれないようだった。

さらに、もう1体にも視線を向ける。

すると――


〈は?〉


 フィオは驚きの声を上げてしまった。

何故か、もう1体のヘカトンケイルまで火傷を負っていたからだ。

こちらのヘカトンケイルの傷は、すでに回復していたはず。

いったい、いつの間に?

予想外の事態に驚くフィオに、躊躇いがちに声がかけられた。


〈あの、マスター? なんかこいつら、勝手に傷ついては回復してるんだけど……〉


〈キュウキュウ……〉


〈……〉


 使い魔たちの声に、彼らが足止めしている3体を見てみる。

すると、まったく攻撃していないはずの3体まで軽いが傷を負っていた。

それも、3体が全く同じ深さと場所の傷を。

それを見た瞬間、フィオの脳裏で答えが導き出される。


〈そうか、そういうことか! こいつらはダメージを共有しているのか!!〉


 ヘカトンケイルは11体でダメージを共有している。

例えば、ヘカトンケイルの最大HPが10000で、毎ターン1000自動回復するとしよう。

フィオの攻撃で10000ダメージを喰らえば本来なら即死だ。


 しかし、その10000ダメージを11体で分割すれば、1体あたりのダメージは1000以下。

1ターンで自動回復できる軽傷となる。

最初にいきなり傷が小さくなった時、あれがダメージが共有された瞬間だったのだ。

ようやくフィオ、はヘカトンケイルの不死身の秘密を暴いた。


〈カラクリは解ったが、問題はどうやって共有しているかだな。おそらく核の様なモノがあるはずなんだが……〉



ちょっと書籍化の形式を使ってみました。


RWOは改稿で内容がかなり加筆されてます。

それだけ描写が薄かったという事でもあるんですけど……。

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