表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
リバース チェンジ ワールド  作者: 白黒招き猫
第4章 魔大陸決戦編
183/216

獣魔国での戦い②

少し時間が取れたので久々の投稿です。

 総勢6体の使い魔たちは、分体を無視してヘカトンケイルに襲い掛かる。

しかし、巨体を誇るギア、ヴァルカン、バイトでさえ正面から戦うには小さすぎた。

身体が大きく重量がある方がパワーで勝る。


 ボクシングやレスリングでは、なぜ階級がわけられているのか?

それは重量の差を努力や鍛錬で覆すのが困難だからだ。

同種族ならば身体の大きさはある意味では才能である。

パワーが、耐久力が、そして体格差によるリーチが、厳しい現実を突きつけるのだ。


 ほんの数キロ、数センチの差でさえそれだけの影響がある。

ヘカトンケイルの身長は30m。

一方、ギアの身長は5m、ヴァルカンの体長は10m、バイトの体長は20m。

普通に考えれば大人に挑む幼児や子犬、勝ち目など無いだろう。


 だが、ここは超常の力が渦巻く異世界。

そして戦うのは神の眷属たち。

常識など当てはならない。


 そもそも、使い魔たちは普段からその力をセーブしている。

大型で高火力が持ち味のカリスやシザー、ヴァルカンやギアなどは呼び出すこともまれだ。

だが、この戦場は広い荒野。

味方は全て後方。

手加減など必要ない。


 全力を持って敵を殲滅する。

周囲の被害は考える必要は無い。

使い魔たちは全てのしがらみから解き放たれる。


---------------------


〈ベルク、バイト。1体の動きを止めろ……〉


 プルートの指示で、ベルクが巨大な竜巻の中にヘカトンケイルを1体閉じ込める。

もちろんただの竜巻ではなく、内部は雷と真空刃が荒れ狂う地獄だ。

さらに、そこにバイトのディザスター・ブレスが撃ち込まれる。

撒き散らされれば獣魔たちを全滅させかねない猛毒だが、ベルクの操る風が拡散を防ぐ。


 切断、電撃、猛毒、まるで拷問部屋に閉じ込められたようなものだ。

強力な再生能力を持つヘカトンケイルを倒す事はできないが、足止めは十分にできる。

時間をかければ相当弱らせることができるだろう。


〈ヴァルカン、迅速に1体討ち取れ……〉


〈ゴアアアァァァ!!〉


 咆哮と共にヴァルカンの全身を覆う黒い溶岩の外殻がドロリと溶け落ちる。

内部から現れたのは赤銅色に輝くヴァルカンの本体。

そこに新たな変化が現れる。

紫色の炎を纏うヴァルカンの全身が、さらに高熱を発し変色していく。

赤から黄色へ、黄色から白へ。


 白い砲弾と化したヴァルカンは、溶岩の湿地を疾走する。

その身体から発される高熱に、溶岩はさらに高温になっていく。

粘性は失われサラサラとした液状に。

色は赤から輝くような黄色に。


 液状化した大地は、ヴァルカンの重量を支え切れない。

その巨体は徐々に溶岩の沼に沈んでいき、遂には完全に見えなくなった。

獣魔たちも『アレ?』といった表情で呆気にとられ、リュケウスに叱責されて我に返る始末だ。

ヘカトンケイルも興味を失い、残る使い魔たちに注意を向ける。

だが


 ゴゴゴゴゴゴゴ……


 大地が静かに振動し、溶岩の表面が波打つ。

そして巨鯨が浮上するように、巨大な何かが浮かび上がってきた。

一番近くにいたヘカトンケイルが異変に気付き、視線を向ける。


 立ち上がったのはヘカトンケイルに匹敵する巨体を持つ巨獣だった。

ただし、その身体は黄色く輝く溶岩で構成されている。

形状は立ち上がった亀に近いだろうか。

しかし、それは『そんなシルエットに見える』というだけだ。

これは『溶岩を纏った生物』ではなく『生物の形をした溶岩』なのだ。

その名は『溶岩巨獣ラヴァベヒモス


 ヴァルカンは大地の底で『材料』を生成し、『溶岩巨獣』に供給している。

そしてヴァルカンを倒さない限り『溶岩巨獣』は不死身だ。

何しろ生物ではない溶岩の塊だ。

そもそも生きていないものを殺すことはできない。


 ガシィ  ボボン!!!


〈グギイイイイイイイイィ!?!?〉


 溶岩巨獣がヘカトンケイルに掴みかかる。

灼熱の溶岩に接触したヘカトンケイルの身体は、燃えることなく爆発した。

木を素体とするヘカトンケイルの身体は水分量が多い。

あまりの高熱に体内の大量の水分が一気に気化し、水蒸気爆発を起こしたのだ。


 傷は瞬時に再生を始めるが、その再生力の源である世界樹の樹液が沸騰しはじめる。

内側から焼かれる苦痛に悶絶するヘカトンケイル。

しかし、溶岩巨獣は容赦なくその身体を押さえつけ、溶岩の沼地に沈めようとする。

ヘカトンケイルも必死に抵抗する。

純粋なパワーではヘカトンケイルに分があった。


 ズボッ!! ジュウウウゥ!!!


〈!?!? ピギャアアアァ!!!!〉


 だが、業を煮やした溶岩巨獣は、ヘカトンケイルの巨大な口にいきなり片腕を突っ込んだ。

ヘカトンケイルは反射的にそれを噛み千切り、飲み込んでしまう。

噛み千切られた腕は溶岩の塊だ。

当然のように腹の中を焼き尽くす。


 溶けた鉱物に体内を焼かれ悶絶するヘカトンケイル。

溶岩巨獣は瞬時に腕を再生させると、容赦無くヘカトンケイルを引き倒す。

さらにうつ伏せになった背中にのしかかり、溶岩の中に沈めにかかる。


もはやヘカトンケイルは満身創痍に追い込まれていた。


------------------


〈ギア。リンクスが援護する。フルパワーだ〉


〈……〉


 プルートの指示にギアの眼が光り、了解の意思を伝える。

そして、内蔵されたすべての魔導機関の出力が全開となる。

ギアの全身から低い駆動音が発せられ、それが徐々に大きくなる。


 炎熱機関『アグニ』-フルドライブ


 雷電機関『インドラ』-フルドライブ


 暴風機関『ヴァーユ』-フルドライブ


 閃光機関『ブラフマー』-フルドライブ


 ハイパーアサルトモード-限定開放


 ヴウゥゥゥゥゥゥ……


 駆動音はさらに大きくなり、ギアの全身から赤、紫、緑、白の光が漏れだす。

放出される膨大なエネルギーはギアの周囲でスパークし、エネルギーフィールドを形成していく。

そして、直径10mの流星と化したギアがヘカトンケイルに突撃する。


 それを援護するのはリンクスだ。

太陽の獅子の名のごとく、地上に顕現した恒星のようにリンクスの身体が輝く。

そして放たれるのは極太のレーザーブレス。


 的が大きいため狙うのは容易。

動きが鈍いヘカトンケイルは、光速で迫るレーザーを回避できない。

レーザー攻撃を受けて体勢が崩れたところに、ギアの体当たりがヒットする。

ボクサーのラッシュのようにギアは連続で突撃し、方向転換の隙をリンクスのレーザーが埋める。

2体の猛攻にヘカトンケイルは追い詰められていく。



 一方、獣魔たちは数千を超える分体を必死に抑えている。

だが、使い魔たちがヘカトンケイルにかかりきりになったため、徐々に劣勢に追い込まれていた。


「怯むな! 我らが負ければこの化け物は我らの国を蹂躙するぞ!!」


 リュケウスが必死に戦士たちを鼓舞し、戦士たちも死力を尽くして戦う。

だが、分体は知恵をつけてきたのか、倒された仲間の死体を盾として使い始める。

投槍という遠距離攻撃をメインとする獣魔たちにとっては、この行動は非常に厄介だった。


「くそっ! 厄介な……」


「せめて動きを止められれば……」


 ついに分体が防衛陣地に接近し、近接戦闘が開始される。

接近されては水爆弾は使えず、分体の体が冷えてくると槍の効果も薄くなる。

せめてもの救いは溶岩が固まって動きが鈍い事だろう。

鎧代わりにもなってしまうが、戦士たちの技量をもってすれば隙間を狙う事はたやすい。


〈……さあ、同胞たちの危機だ。お前たちはどうする? どうしたい?〉


「賢者殿?」


 突然、虚空に向けて語り掛けるプルート。

それをリュケウスは訝しげに見つめる。

だが、プルートは問いかけを無視して語り掛け続ける。

何者かに。


〈ならば、我が声に従え。我が力を受け入れよ。さすればもう一度、仮初の命を与えよう……〉


「これは……」


 ようやくリュケウスは気付く。

プルートの周囲に不可視の何かが渦巻いている事に。

いや、その正体にも思い当っていた。


〈汝らの怨嗟に相応しき力を。汝らの望みに相応しき姿を……〉


「これは、死霊術ネクロマンシー……」


 それは無数の怨念。

非業の死を遂げた者達の魂。

それらが今、再び形を得る。


〈顕現せよ、『レイス・レギオン』〉


 プルートの呼び声と共に、戦場に無数の影が現れた。

その数は軽く数千はある。

影の正体はゴースト系モンスターの一種であるレイスだった。

ただし、プルートの力で強化された特別製のレイスだ。


 あまり知られていないが、レイスには生前の人格が強く残っている。

時間が経つと正気を失い狂暴化するが、無条件に悪というわけではない。

人を襲うレイスの大半は生前から悪人だったり、死の記憶で発狂している者達だ。


「え? あ、あんたは……」


〈……〉


「な、なんであなたが!?」


〈……〉


 現れたレイス達は、獣魔たちに助力して分体と戦い始める。

だが、獣魔たちはその姿を見て呆然としてしまう。

何故なら、その姿はグラーダ達の手にかかり命を落とした者達ばかりだったからだ。


 獣魔たちは彼らの仇を取らんと猛っていたのだ。

その死者たちが生前と同じ姿で隣に現れれば、呆然とするのも仕方ないだろう。

さらに


「そんな……、兄貴なのか?」


〈……〉


「せ、戦士長……」


〈……〉


 同胞の仇を取らんと暴走し、ヘカトンケイルに敗れた者達。

彼らの魂もレイスとして舞い戻り、分体を相手に戦っていた。

まるで雪辱を果たすように。


「け、賢者殿、これは……」


〈彼らはずっと無念を抱え、成仏できずにお前たちの危機を見つめ続けていた。お前たち同胞の危機に、何もできぬ己を嘆いていた。だから機会を与えてやったのだ。同胞を守り、戦う機会をな……〉


「彼らが我らを守らんと……」


〈そうだ。さあ、兵たちを鼓舞せよ……〉


「そうですな……」


 リュケウスは涙をこらえて吠える。

レイス達は味方だと。

我らに助力するために同胞たちが舞い戻ったのだと。


 理解が及んだ瞬間、獣魔たちの感情は振りきれた。

涙を流し、咆哮を上げながらレイス達と共に分体に挑みかかる。

その士気はまさに天井知らずだった。


 獣魔国での戦いも激しさを増していく。


使い魔たちもフルスロットルです。


次はようやくフィオ視点。


いつ投稿できるかはちょっとわかりませんが……。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ