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リバース チェンジ ワールド  作者: 白黒招き猫
第1章 異世界召喚編
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卒業の証

「はあ、はあ、はあ……」


「う~」


 試験が終わり双子はぶっ倒れている。

原因は全力で戦った反動だ。

ほんの3分位とはいえ限界まで消耗してしまったのだ。


「大体、最後の、あれは、なんだよ……」


「まったく、見えませんでした……」


「そう簡単に抜かれるわけにいくか。お前らが弱いわけじゃないから心配するな」


 思い出すのは送還した英雄だ。

彼は素質は十分だが魔法の構成が甘かった。

10の素質を3しか引き出せない者より5の素質を5引き出せる者の方が強い。

2年もすれば双子はあの英雄を超えるだろう。


「それより、ちょっと武器を見せてみろ」


「? はいよ」


「どうぞ」


 案の定、受け取った大剣と双剣の片方はボロボロだった。

刃こぼれだらけでヒビまで入っている。

修理は不能だろうな。


「なあ、どうしたんだよ」


「ほれ。刀身を見てみろ」


 未だ立ち上がれない2人に剣を見せてやる。

ようやく武器の惨状に気付いたらしい。

表情が変わる。


「うわ、なんだこれ……」


「まだ新しいのに……」


「単純にお前らの力量が鋼の武器の限界を超えたんだよ」


 成長が実感できた事はうれしいのだろう。

だが、全力を出すと武器を使い捨てにしなければならないというのは問題だ。

複雑な表情になっている。


「うーん、鋼より良質の武器か……」


「もしくは付加のかかった魔法武器だな」


「どっちも私達がポンと買える物じゃないですよ」


 ふーん。

公爵家の子息が買えないとなると相当な貴重品ってことか。

なら、卒業記念に……ん?


「アレックス様!」


「アリサーシャ様!」


 突然の声に振り向くとこちらに駆け寄ってくる男女が。

そうか、試験が終わったから結界は解除したんだった。

なんだかすごく剣呑な雰囲気だな。


「貴様! 何者だ!」


「お二人に何をしている!」


 殺気に満ちた声と共に2人は剣を抜いた。

男は長剣、女は細剣だ。

っていうか、こいつらこそ誰だ?

殺気に反応して血の気の多い奴が臨戦態勢に入る。

男女の前方の空間が歪む。


「ロイドにリーゼ?」


「何でここに?」


「! 殺すな」


キン


 澄んだ音と共に静寂が落ちる。

男女の構えた剣は刃が切り落とされていた。

首に添えられているのは巨大な鎌。

男と女は呆然と目の前に現れたモノを見つめている。


 黄金の甲殻、4本の攻撃肢、サソリの様な尻尾。

ギリギリで制止が間に合い、シザーは攻撃を止めていた。

しかし、代わりに尻尾が持ち上がり麻痺毒を2人に滴らせた。

麻痺した2人は糸が切れた様に崩れ落ちた。





「で、こいつらは何なんだ?」


 麻痺した2人は地面に転がされている。

俺に殺気を向けて武器を抜いた事が許せないのか、シザーは2人を何時でも切れる位置で待機している。

双子の時と違って真剣だったしな。


「すげー! 何だよこいつ!」


「召喚獣? でもこんなタイプのは……」


 こいつらはこいつらで聞いていないし。

てか、怖くないのか?

シザーは目立つから結界は張り直しておこう。


「こら、説明しろ」


「あ、すいません」


「簡単に言うとお付きだよ」


「ほう、さすが貴族」


「こっちが俺の従者のロイド」


「こちらが私の従者のリーゼです」


 しかし、いきなり切りかかってくるなんて血の気の多い主従だな。

武門の家ってのは脳筋ばっかりなのか?


「で、何でいきなり襲ってきた?」


「貴様が御二人に剣を突きつけていたから……」


「曲者かと思いまして……」


「貴様?」


「ヒッ、あな、貴方が!」


 シザーが無機質な複眼を向けると、あっさり折れるロイド。

まあ、怖いわな。


「へばっていたこいつらに剣を見せただけだ」


「そうだぞ。いきなり切りかかるなんて」


「非常識です」


「お前らが言えた立場か」


「「すいません」」


 誤解を解いた所で2人の麻痺を治す。

シザーはまだ見張っているが。


「じゃあ、改めて。俺はフィオ、流れのデモノイドだ」


 自己紹介をして双子との経緯を説明する。

主の躍進を助けた人物という事が解り、2人の態度は大分軟化した。


「そういえば、何で今日に限ってこいつらを探していたんだ?」


「御二人は次期当主筆頭と次席に選ばれました。先日までとは立場が変わったのです」


「そもそも、今までも供を連れて出かけるようにお願いしていたのですが……」


 双子に目をやるとサッと目をそらした。

なるほど、抜け出してきてたわけね。


「心配しなくても今日でこいつらは卒業だ」


「名残惜しいです……」


「それに武器どうしようかなー」


 ロイドとリーゼも、ほんの数分で武器を使い潰したと聞いて驚愕している。

おお、忘れる所だった。

俺がアイテムボックスに手を突っ込むと、従者二人はまたも驚愕した。


「亜空間収納庫!? あんな高価なモノを……」


 後で聞いた話によると、アイテムボックスの機能を持つマジックアイテムは王族でも手に入れにくいそうだ。

というのも、製造技術が失われており遺跡から稀に発見されるのみなのだとか。

容量に限界のある劣化コピーも、製造技術が秘匿されていて一般には出回らないらしい。


 取り出したのは大剣と双剣。

大剣は頑丈さが売りのメテオライト製。

双剣は付加魔法と相性の良いミスリル製だ。


「ほれ。これなら壊れはしないだろ」


 双子に武器を手渡す。

双子の顔が驚愕に歪んでいく。


「これ、もしかして星鉄?」


「こっちはどう見ても精霊銀なんですけど……」


「「……」」


 従者二人はすでに言葉も無いらしい。

俺はシザーを送還し、結界を解除する。


「卒業記念だよ。おめでとう。お前達はもう一人前の戦士だ」


 長い様で短かった臨時の教師。

その終わり。

別れの時が来た。




次は双子の家の事情や帝国の現状についての説明にしようかと。


話がなかなか進まないなあ……。

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