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リバース チェンジ ワールド  作者: 白黒招き猫
第4章 魔大陸決戦編
170/216

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投稿再開しました。


間を開けたせいか、前話との矛盾点が……。


慌てて直しました。

 城壁の上は静寂に包まれていた。

眼下に広がる地獄のような光景に誰もが呆然としている。

それはフィオと共に行動してきたジェイスとルーナ、そして魔人連合国の諜報部員たちも同様だ。


〈ちょうど良いから訂正しておこうかな〉


「……訂正? 真実を公開するのか?」


 彼らを先導してきた緑髪紅眼の子供がジェイスに話しかける。

リスのような大きな耳と額に一房入った赤いメッシュが特徴的な獣人、人化したリーフだ。


〈あの時は勘違いさせておいた方が都合が良かったからね。でも状況が変わった。ある程度は情報公開した方が良い〉


「……アレが彼の本当の姿なのか」


〈ん~、まあ、アレで3割ってとこかな。当然アリエルより強いよ?〉


 そこでジェイスは思い至る。

他の者達にはフィオ(=ディノ)は天使に見いだされた魔人。

つまりはアリエルの部下と説明してあったことを。


 パンパン!


〈はい、注目~〉


 いつの間にかリーフの隣に浮かんでいたフェイが、手を叩いて注意を集める。

そしてリーフは最低限ではあるが真実を話した。

主人である冒険者ディノの正体こそが神の眷属であること。

グラーダが何らかの方法で眷属に匹敵する戦力を得たこと。

次の戦いでは主人も全力を出す必要があるだろうこと、などを。


 フィオの正体が悪魔であるという事実は、むしろ肯定的に受け入れられた。

元々魔族は悪魔とヒューマンのハーフが起源とされることもある種族だ。

味方であり、自分たちを助けるためにここにいるというなら文句などあるはずがない。

問題はグラーダの方だった。


「先ほど聞いた怪物か……」


「しかし、神の眷属に匹敵するかもしれないだと?」


「奴の合成獣は確かに強力だが、そこまでの物が創れるのか?」


 リーフの言葉を疑うわけではないが、吸血鬼たちもすぐには受け入れられないようだ。

目の前でグラーダ軍を蹂躙する怪物。

それと同等となると、それは同じく神の領域ということだ。


「やはり聖域か……」


「巨人……」


「それに世界樹か……」


 一人が聖域の名を上げる。

周囲もようやく受け入れ始めた。

元々グラーダは聖域の周囲の森で魔獣を狩っていたのだ。

さらに欲を出して聖域に手を出す可能性は十分にある。


 すぐには信じられないのは『聖域への干渉を禁じる』というのが北大陸の住人の常識だったからだろう。

だが、可能性があるとしたら聖域に住まう巨人族と世界樹以外考えられない。

そもそもグラーダが、世間一般の常識に縛られるとも思えない。

一度割り切ってしまえば理解も納得も容易だった。

だが問題は、現実的にそれが実行可能なのかという事だ。


「しかし、巨人族をどうこうできるものなのか? 数体で一軍に匹敵する種族だぞ?」


「それに、聖域は不可侵の結界で守られているのだぞ?」


「うむ、勝てる戦力を揃えたとしても聖域に籠城されれば何もできん。結界がある以上、世界樹に手を出すなど不可能だ」


「そうなると、侵入する何らかの方法があったのかもしれんな……」


 欲に駆られ聖域に手を出す者は、今はほぼいない。

だが、歴史上では数えきれないほどの愚者たちが手を出し、そして滅んでいった。

しかし、現実問題グラーダは神気を宿した合成獣を引き連れて進軍中だ。

今、ここで議論する意味など既に無い。


〈事態の深刻さは理解できた? じゃあ、準備を始めてね〉


 すでに戦闘が終わったかのようなリーフの言葉。

いや、事実戦いと呼べるようなものはもう終わっていた。

慌てて退却していくグラーダ軍に向かい、大悪魔アークデーモンが口を開く。

そこに黒い光が収束し、放たれた。


 閃光は無い。

音も無い。

ただ、必死に逃げていた数百の敵兵だけが消え去っていた。




〈(やっぱ、強いのかな~)〉


〈(だろうね。マスターが準備運動するなんて初めてかもしれないし)〉


 リーフとフェイは言葉を発さずに念話で話し合う。

そもそも、あの程度の数の軍など悪魔化せずとも殲滅できただろう。 

わざわざ力を消耗する悪魔化を使ったのは、そうする必要性があったからだ。


 準備運動、あるいは微調整。

以前魔神化を使用して暴走しかけたように、頻繁に使用できない能力はどうしても習熟が遅れる。

そして、今回フィオは明らかに魔神化の使用も視野に入れている。

だから、変身能力の習熟のために悪魔化を使用した。

大悪魔形態の使用までなら、決戦までに消耗を回復できると踏んだのだ。


〈(場合によっては邪神が自ら出てくるかもね)〉


〈(それは嫌だね~)〉


------------------------------


 時は少し遡る。


 グラーダ達の執拗な侵攻に巨人たちは辟易していた。

どうせ連中は聖域の結界には入れない。

うっとおしくはあるが、無視しても問題は無かった。

だが、血気盛んな若い巨人たちはそうもいかなかった。


 彼らは世界樹の枝から作られた自慢の武器を手に、侵入者たちを蹴散らし始めた。

気味の悪い怪物を使役する侵入者たちだったが、巨人たちにとってはさして手強い相手ではない。

若者たちはまるで狩りの訓練のように、侵入者を狩り始めた。

だが、事態は急変する。


 慢心、油断、それらは強者の命を奪う猛毒だ。

その毒に侵された若者の一団が、深追いしすぎて帰ってこなかったのだ。

聖域は大騒ぎになった。


 若者たちの自業自得ではあるのだが、見捨てるわけにもいかない。

合成獣を容赦なく叩き潰してきた彼らだからこそ、同胞があんなものに作り変えられることは我慢できなかった。

しかし、救出に行った者が捕まり、ミイラ取りがミイラになっては意味が無い。

巨人たちも結論が出せず困り切っていた。


「おい! オラドが返って来たぞ!」


「ボグーも一緒だが酷い怪我だ!」


 しかし、2人の巨人の若者が帰還したことで事態は急変した。

全身を切り刻まれ瀕死のボグーを、オラドが背負って帰ってきたのだ。

ボグーは心臓を抉り取られており、このままでは助からない重傷だった。


「おい! 蔵を開けろ!」


「世界樹の樹液なら助けられるかもしれん!」


 巨人たちの眼は重症のボグーに集まる。

彼らはボグーを助けようと世界樹の素材が納められた宝物庫を開き、高い治療効果のある樹液を取り出した。

そして、ボグーの元に駆け出す。

虚ろな目をしたオラドをそこに残したまま。


「しっかりしろ!」


「もう大丈夫だぞ。ゆっくり飲め」


 巨人たちが世界樹の樹液を飲ませると、ボグーの傷は徐々に消えていった。

そして閉ざされていた瞳が開く。

だが


「あああああああああああああああああああああああああぁ!!」


「ボ、ボグー!?」


「どうした!? 落ち着け!」


 意識が戻るなり恐慌状態に陥るボグー。

彼が落ち着くまで実に数時間もかかった。

そして彼は語りだす。

深追いしてしまった自分たち5人が、どのような目に遭わされたのかを。


 敵は大掛かりな罠を用意して待ち伏せしていた。

結界に閉じ込められた彼らは、延々と合成獣に襲われ続け、全員囚われてしまった。

敵のリーダーは、吸血鬼とは思えないほど邪悪な気配を宿したナニカだった。

そいつは自分たちの血を抜き、心臓を抉り、生きたまま解体しようとした。

だが、そこでナニカは聖域の情報を教えれば助けてやると言い出した。

そして、それに応じてしまった。

オラドが。


「オラド、が?」


「おい、オラドはどこだ!?」


「そいうえば……」


「あっ!」


 思わず声を上げてしまったのは、世界樹の蔵を開けた巨人だった。

あの時、確かにオラドは自分たちと一緒に蔵に向かった。

だが、その後……。


「いかん! 蔵だ!」


「何だと!?」


 巨人たちは慌てて蔵に向かう。

しかし、たどり着いた蔵は無残に荒らされていた。


「なんてことだ……」


「世界樹の素材が……」


 持てるだけ持って行ったのだろう。

貴重な素材を中心に、蔵の中身はゴッソリと減っていた。

そして巨人たちを最も絶望させたのは、決して失くしてはならない秘宝が失われていたからだ。


「そんな……」


「種が……」


「世界樹の種が奪われてしまった……」


-----------------


「お待たせしましたご主人様」


「あア、オ帰り。オラド君」


 グラーダは、いや、グラーダの皮を被ったソレは穏やかにオラドを出迎えた。

真紅の瞳に魅入られたオラドの表情は恍惚としており、そこに理性は欠片も見いだせない。

オラドは故郷から奪い取ってきた素材を、1つ1つグラーダに差し出す。


「素晴らシい……。葉や樹液デモあれバと思っていタガ、まサか種子がアッたとハ」


「世界樹に不測の事態が起きた時のために巨人族に託されていた秘宝です。貴方にこそ相応しい」


「ウむ。君たちノ持っテイた武器も併せレバ十分な量だ。さテ、そレデは……」


「了解しました」


 グラーダに促されるまま、オラドは大きな台の上に横たわる。

同胞を含む多くの犠牲者たちが解体された作業台の上に。

自ら。


「君ノ素材も有効利用さセテもらオう」


決戦間近。


ここから、ちょっと視点があっちこっちに飛びます。

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