結魂の儀式
エロは二の次なので描写はあっさりしています。
護衛対象の2人が隠し通路を通り離れていく。
それをシミラは黙って見送った。
別に話せないわけではない。
ギアやネクロスと同じく、念話は使えるが寡黙なだけなのだ。
言葉ではなく行動で示す。
それが彼らの性格だった。
〈……開始〉
白銀の球体が急激に薄れ、拡散していく。
視認できない微細な粒子、その1つ1つがシミラなのだ。
使い魔の核はフィオの内側に存在する。
ゆえに彼らは撃破されても、しばらくすれば復活する。
そして、自分自身を偏在させる事も理論上は可能なのだ。
もっとも、現在それを実行できるのはシミラのみ。
精霊出身であるシミラだからこそ、生物としては不自然な在り方に適応できるのだ。
他に可能性があるのは同じ人工物出身のギアだろうか。
しかし、彼の場合は存在を分割する事による、単体戦闘力の低下のデメリットの方が大きい。
その辺は戦闘タイプと支援タイプの差と言えるだろう。
凄まじい速さで王城を制圧したシミラは、次に城の中にいる者達を調べ始める。
やり方は当然のように記憶の覗き見だ。
プライバシーも何もないやり方だが、ほぼ確実に真実を探れる。
記憶が改ざんされていてもその痕跡が発見できる。
シミラが意図的に嘘をつかない限り、冤罪はあり得なかった。
〈……完了〉
王城内の生命体を示すマーカーが赤と青に色分けされる。
敵と味方の選別が完了したのだ。
この情報はフィオやフェイ達にも共有される事になる。
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「ここが……」
「そう、本当の儀式の間。城の中心部に巧妙に隠された秘中の秘よ」
ルーナに手を引かれたジェイスは、ついに目的地へとたどり着いていた。
そこそこの広さの立方体の部屋。
床や壁には当然のように魔法陣や文字が刻まれている。
ぼんやりと輝くそれらが部屋を幻想的に照らし出している。
まるで、部屋全体に月光が差し込んでいるようだ。
「あれは、泉? 祭壇じゃないのか」
ダミーの部屋との差異。
祭壇があったはずの中心部には水を湛えた泉が存在していた。
ぱっと見は円形の浴槽のように見える。
「これは儀式に使われる触媒なの」
「触媒? 魔法薬のようなものか……」
ルーナと共に水をすくい取ってみる。
温度は温く、僅かに粘性がある。
まるで、新たな自分を生み出すための羊水のようだ。
「時間が無いし早速始めましょう」
「あ、ああ……」
するりと躊躇うことなく衣服を脱ぐルーナに対し、ジェイスは緊張でガチガチだった。
王族であるルーナは侍女に着替えを任せるなど、人前で肌をさらすことに慣れている。
浴室にも当然のように世話係が付いてきたほどだ。
「ジェイス? 貴方も脱がないと」
「う、ああ……解った」
大人びたジェイスと子供っぽいルーナ。
兄と妹の様だった2人の立場が完全に逆転していた。
腹を据えた場合は女性の方が度胸があるのだろう。
単にルーナが肉食系であるだけなのかもしれないが……。
「さあ、こっちよ」
「ああ……」
ジェイスが服を脱ぐと、ルーナはその手を取り、泉へ入る。
妹のように思っていた少女が、すでに女性である事を認識させられるジェイス。
顔は真っ赤で表情は茫然、話しかけられても『ああ』としか答えられない。
そして2人は泉の中央で向かい合った。
「じゃあ、始めるわ。覚悟は良い?」
「良くないと言ったらやめる気があるのか?」
「ふふ、まさか。もう、逃がさないわよ」
妖艶に答えるルーナ。
熱っぽく輝く真紅の瞳に、ジェイスは両手を上げて降伏した。
そんなジェイスにルーナは正面から抱き着く。
「まず私が貴方の血を吸い、眷属にするわ。そしたら今度は貴方が私の血を吸うの」
「どれくらいかかるんだ?」
「普通なら変化には一晩くらいかかるわ。でも、ここならそんなに時間はかからないの」
「そうか。じゃあ、始めてくれ」
ルーナの口から牙が伸び、ジェイスの首筋に埋められる。
痛みは無く、むしろ痺れる様な快感が全身を襲う。
一方のルーナも、極上の美酒を味わうように恍惚とした表情を浮かべていた。
「(これは? 何かが入り込んでくる……)」
吸いだされていく自分の血。
それとは逆に、注ぎ込まれてくる何かをジェイスは感じ取った。
それは首筋から全身に広がり、染みわたっていく。
「……なあ、ルーナ。君に伝えておきたい事があるんだ」
ルーナは目を開けるとジェイスを見上げた。
喋れないが、先を促しているようだった。
「話しておきたいのは、君の知らない俺の事情だ」
コクリ
ルーナが軽く頷く。
それを確認したジェイスは話し始める。
自分の前世、転生、邪神、悪魔。
自分が知る範囲で、話せる範囲で全てを伝える。
それはジェイスなりの誠意だった。
そして、ルーナはその告白を噛みしめる様に聞いていた。
ジェイスの告白が終わると、ルーナは牙を抜き彼をじっと見つめる。
そして、これが答えだと言う様に、唐突に唇を重ねた。
ジェイス自身は分からなかったが、変化は目に見える形で表れていた。
影人族の浅黒い肌は透けるような白に。
黒い髪は黄金のような金色に。
青黒い瞳は鮮血のような赤に。
「ふふ、似合うじゃない」
「そうですか?」
唇を離したルーナがジェイスの全身を見て、揶揄う様に笑う。
何故か敬語で答えたジェイスは水面に目をやる。
そこには生まれ変わった自分の姿があった。
王族の眷属の力はほぼ貴族と同等だ。
ジェイスの身体には、以前とは比べ物にならない力が漲っていた。
「さあ、次よ。このままじゃ貴方は、力量はともかく立場は眷属でしかないの。その口調も似合わないしね」
「自分が貴女の血を吸う、ですか……」
眷属の本能が、禁忌の行為に抵抗感を抱かせる。
しかし、ルーナが自らジェイスを抱き寄せると抵抗感が少し弱くなる。
目の前にさらされた白い首筋。
ジェイスに吸血鬼としての本能がなすべき事を教えてくれる。
「いきます」
先ほどとは逆にジェイスの牙がルーナの首に埋まる。
ジェイスは流れ込む極上の甘露に体を震わせ、ルーナも身体を貫く快感に震える。
眷属による主人からの吸血が齎すのは上下関係の破壊。
ゆえに主人が許さない限りは行えない禁断の行為。
やがてジェイスの牙が引き抜かれた時、2人の立場は対等になっていた。
だが、まだ2人は王族と貴族だ。
「さあ、次で最後よ」
「え? 終わりじゃなかったのか」
互いの吸血行為によって、2人は完全に発情状態になっていた。
白い肌は赤く紅潮し、息も荒い。
それは最後の儀式のための下準備。
「見て、この触媒を」
「これは……」
2人の首筋から流れ出た鮮血。
それは体を伝って触媒に交じり、泉を赤く染め上げていた。
『月下の血介』という儀式名のごとく。
それに呼応するように部屋の魔法陣も輝きを強めている。
「ここに、もう1種類の血が加わることで儀式は完了するの」
「もう1種類?」
「そう。私の、王族の女性の破瓜の血」
「は、破瓜!? それって……」
ここでいたせって事か、という言葉を飲み込むジェイス。
全く予想していなかったと言えば嘘になる。
女性が生涯に1回というヒントもあったのだ。
ルーナの態度や結魂という言葉からも、予想するのは簡単だ。
「その、やっぱり嫌だった?」
「そんなわけない!」
混乱するジェイスを正気に戻したのは、不安そうなルーナの声だった。
そして、ジェイスは覚悟を決める。
「男のちっぽけなプライドだけど、プロポーズの言葉をかけさせてくれ」
「! はい、喜んで!」
「ルーナ。俺、影人族……じゃなくて。私、元影人族のジェイスは生涯を貴女と共に生きる事を望みます」
「はい。私、夜の国の王女ルーナ・ニュクシアは貴方と共に生き、共に死すことを受け入れます」
2つの影が近づき、一つに重なる。
そして、その口から誓いの言葉が紡がれる。
「永遠に」
「誰よりも」
「貴女を」
「貴方を」
「「愛します」」
月光のように淡い光が重なり合う影を照らす。
やがて、最後の血が捧げられ、儀式場に満ちていた光が強くなる
そして、その輝きが収まった時、新たな王族が、いや、夜王が誕生した。
ついに儀式完了。
ジェイスは復活&パワーアップ。
グラーダはブチキレ&暴走か?




