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リバース チェンジ ワールド  作者: 白黒招き猫
第1章 異世界召喚編
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皇帝の思惑

「……て感じで、たった5日で30人も貴族が殺されているんです」


「全員、評判の悪い奴らだったけどな。何やってても不思議じゃなかったぜ」


「ホウホウ、ブッソウデスネー」


 犯人は目の前にいるぞ、双子よ。

ちなみに悪い噂の9割は事実だったぞ。

害虫駆除してる様な気分だ。


 双子を指導し始めてから数日。

早速皇帝を始末しに行ったのだが、異世界人と同じく城にいない様だった。

情報収集の結果、異世界人と共に別の町に行ったらしい。


 情報収集はシミラにやってもらった。

パワーアップした幻術で、貴族達の脳味噌から情報を引っ張りだしたのだ。

彼なら夢魔を夢の中で圧倒できるだろう。


 その過程で貴族自身の悪行も暴く事になった。

人間って抑えが無いとここまで外道になれるんだなあ、と感心するほどだった。

そこで彼らには実験に付き合ってもらう事にした。


 具体的には、アイテムボックスに満載されているアイテムの効果を確かめる事にしたのだ。

大体は知ってるままの効果だったが、ライフポーションクラスになると欠けた部位も復元してしまった。

時間をかけないために1人で実験するアイテムは数個だ。

最後は毒物を飲ませて御臨終してもらう。

貴族同士の暗殺合戦など珍しくないみたいだしな。

運が良ければごまかせるだろう。


「で、そんな状況で皇帝はどこ行ってるんだ?」


「なんでも、新たな異世界人の方と一緒にどこかの砦に行かれたんだそうですけど……」


「マイク様がいなくなってビビってるんだろ」


 ほう、今も2人一緒なら手間が省けるな。

双子の指導が一段落したら行くか。

地下水路の魔法陣は呪文や記号は削り取り、魔具や仕掛けは破壊した。

修復できる者がいなくなったので再生不能だろう。

もはや痕跡を探すのも難しい。



「むむむ、回転、回転……」


「高速で……」


 今双子がやっているのは、長時間の強化の訓練だ。

イメージは、纏った魔力を螺旋状に回転させるといったものだ。

竜巻をイメージすると解りやすい。


 イメージを掴みやすくするために、双子には回転=強化という認識を持たせることにした。

紐の先に石を付け、グルグル回して投げる。

当然、回転を速くすれば投石の飛距離も威力も上がる。

それを見せることで魔力を練る手本にさせたのだ。


「ふむ、やっぱり兄の方が上達は早いな」


「そ、そうか?」


「お兄ちゃんは無能なんかじゃありませんから」


「上手く出来るようになったら、次は瞬間強化との併用だぞ」


 兄の方はこのままで問題はなさそうだ。

次は妹か。

感覚派の兄に対し、妹は理論派だ。

剣術も双剣を詰め将棋のように振るって、相手を崩すタイプが合うだろうな。

まあ、もう少しかかりそうだが。


------------------


 帝国最大の軍事施設『バハル要塞』。

皇帝はここに逃げ込んでいた。

異世界人達の失踪、貴族たちの暗殺。

これらは皇帝の恐怖心を大きく煽っていた。


 一刻も早く、新たな異世界人を使い物になるようにしなければ。

皇帝は出来るだけ異世界人の近くにいる事で、彼を手なづけようとしていた。

幸い今回の異世界人は皇帝の望んだとおり、マイク・ハワードの様な倫理観は持ち合わせていなかった。

ミッションやクエストといった言葉を使うだけでどんな事でもした。


 その度に報酬は与えているが、纏めて大量に渡すより少しずつ小出しに与える方が好みの様だ。

まだ10代半ばだがすでに女に多大な興味を持ち、実際に報酬として与えている。

今は訓練と並行して、殺人に対する抵抗感を取り除く処置を施している。

反乱の疑いのある町の制圧、税を払わず傭兵を雇った村の鎮圧、などだ。

最も意外なほど抵抗なく人を殺していたが。


 頼もしさと共に警戒心も湧く。

この先成長した彼を、自分は御しきれるのだろうか?

彼は実はとんでもない災厄の種なのではないか?



 新しい異世界人、『チャ・ファンピョン』。

周囲はファンと呼んでいる。

プライドが高く攻撃的だが、自分の欲求が満たされると非常に素直に言う事を聞く。

他者を傷つける事を何とも思わず、どんな汚れ仕事も『クエスト』『ミッション』といった言葉を使うと納得する。


 兵達からの評判は、マイクより低い。

実績が少ない事と他者を見下すような性格のせいだろう。

お世辞にも人の上に立ち、導けるような人間ではない。


 しかし、強い。

訓練の結果は上々で、すでにかなりの力を付けている。

異世界人は魔力の少ない世界から来るため、召喚時に砂が水を吸い込むようにこの世界の魔力を吸収する。

結果莫大な魔力と身体能力を得るのだ。


 彼は戦力としては十分に英雄に足る。

ならば問題は自分がいかにうまく彼を利用するかだろう。

大丈夫、出来る。

異世界召喚を与えられた自分達皇族は、選ばれし者なのだから。


 先ほどファンが謀反人の討伐を終えて帰還した。

さて、報酬は何を与えようか。

そういえば強力な武器を欲しがっていたのだったか。


 飼い犬に餌を与えるような心境で、皇帝は英雄候補の元へと向かった。

次回はファン視点です。


身勝手な民族と言うとどうしてもあの辺の国のイメージが……。


偏見かな。

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