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リバース チェンジ ワールド  作者: 白黒招き猫
第4章 魔大陸決戦編
149/216

暴走王女

 さて、議長から聞かされた衝撃の事実。

王女がジェイスと(勝手に)婚約しちゃいました! だが、なかなか面倒な問題だ。

まず、簒奪者グラーダは間違いなくキレる。

その結果、変に暴走されると被害が大きくなりかねない。

聞いた限りじゃ短慮な性格みたいだしな。


 次に問題になるのは外交関係だ。

夜の国が再建されればルーナ王女は次期女王、夜の国のトップだ。

そうなると、王配がこの国出身なのだから2国の関係は深まるだろう。

それを残りの2国がどうとらえるか。

獣魔国はともかく、鬼王国は夜の国と関係が深かった分面白くないだろう。


 最後に、この国内部の問題だ。

ジェイスは影人族の族長の血筋、言ってしまえば有力貴族の直系だ。

国の防諜に貢献する実力者であり、彼が抜ければその穴は大きいだろう。

しかも、諜報部隊の長として様々な機密情報も知っている。

彼を国外に出すというのは、国益の面から大きな問題となるだろう。


 ん? もしかして……。

あの王女、これらを承知の上でやったのか?

普通なら大問題で、間違いなく反対されるだろう。

だが、あの状況なら人命救助という大義名分がある。

そして、やってしまえばもう取り返しはつかない。


 確信は無いんだが、王女はチャンスを狙っていたような気がしてならない。

既成事実を作るチャンスを。

そういえば、シリルスも疲れた顔で『女って怖い……』とか言ってたことがあったな。

女ってのは、俺が思うよりもずっと強かな存在なのかもしれない。


「一先ず王女とジェイスが目を覚ましてからだな」


「うむ……、今更騒いだところでどうにもならんか」


「その通りですな……」


 そうして会議は進んでいく。

幸か不幸かグラーダとの対決という方針が定まったので、以前よりは話が進んでいるようだ。

もはや話し合いでの解決は望めないし、俺という戦力も加わったからな。


 よって会議の中心となったのは第3国との関係。

獣魔国と鬼王国に対するスタンスだった。

獣魔国はある意味簡単だ。

夜の国で働いていた労働者の現状さえ分かれば動くだろう。

彼らが無事である可能性は低いので、少なくともグラーダに付く可能性は低いはず。


 問題は鬼王国の方だ。

元々夜の国との関係が深かった分、現状最も混乱している。

グラーダのシンパもそれなりに多いため、国が真っ二つに割れているそうだ。

鬼王自身は殺された夜王との友誼を考え、ルーナ王女に助力したいようだ。

しかし、有力氏族や豪商にグラーダと繋がった者が多いらしいのだ。


 グラーダは前世の知識であれこれやってたみたいだしな。

利害関係は結構広いはずだ。

実際この国にも協力者がいたわけだし。

まあ、ほぼ駆逐されたみたいだけど。


「やはり直接話してみるべきか……」


「議長自らが鬼王国に行くのですか?」


「危険では?」


 ふむ、鬼王国は議長が説得し、夜の国には調査隊を送り込む。

情報を集めた上で獣魔国と交渉し、可能なら3対1に持ち込む、か。

まあ、妥当な方針だな。

この場合、俺が調査隊に同行するべきだろう。


  コンコン


「失礼します」


「どうした?」


 ガチャ


「ご報告を。お二人の意識が戻りました」


「そうか……」


 議長が会議を中断し、2人を呼ぶように指示する。

病人を呼びつけるのかって思うかもしれないが、医務室にこの人数は入らない。

かと言って、事情聴取しないわけにもいかない。

さて、どうなることやら。


------------------------


 意識が回復し、会議室に戻ってきた2名。

まずは処置が終わったので、これ以上はジェイスには手を出さないことを確約しておく。

まあ、邪魔するなら潰すが敵の敵は味方だ。

少なくともグラーダを始末するまでは味方という事でいいだろう。


 ジェイスの状態だが、ギフト能力は劣化してスキルとして残ったそうだ。

しかし、ステータスには表示されているのに使用できないようだ。

それどころか、通常のスキルも使用不能になってしまったらしい。

スキルは魂に由来する能力という事を考えると、まだ回復しきっていないのが原因だろうな。


 しかし、魂の回復には時間がかかる。

このままだとグラーダとの戦いにジェイスは参加できない。

そんな理由からジェイスが俺を見る目は厳しい。


 グラーダを倒してからでもよかっただろう、って言いたいんだろうな。

だが、甘い。

彼はギフトの危険性を軽く見積もっている。

アレは邪神がその気になれば即座に暴走させられるリモコン爆弾だ。

何でか邪神が大人しい今のうちに消去すべきなのだ。


 話が逸れたな。

現在、王女は俺の予想通りの回答をしている。

つまり、ジェイスを救うための人命救助だったという主張だ。

実に嬉しそうな彼女の態度から本音はバレバレなのだが、それを突っ込む者はいない。

いまさら何を言っても遅いからだ。

……そういえば気になる事があるな。


「なあ」


「なんだ?」


 話しかけた相手はジェイル。

ジェイスの叔父、影人族の長の弟だ。

ジェイスに諜報員としてのノウハウを教えた師匠でもあるらしい。


「ジェイスを引き抜かれると、影人族としてはどうなんだ?」


「手練れを失うのは痛いが致命的ではない。次期族長は長子のジェイドだからな」


「(似た名前ばっかだな……)ん? じゃあ、その兄の方が強いのか?」


「いや、ジェイスの方が実力は上だな」


 ジェイルの話によると、族長には統率力や指導力に優れた者が選ばれるらしい。

現族長も実力的には弟のジェイルより劣っていたが、人を動かすのが得意だったそうだ。

当時最高の手練れだったジェイルが諜報員として国に仕える。

そして、族長は後進の育成に専念する。

そういった役割分担がなされているそうだ。


 それはジェイスたちの世代でも同じという事か。

もっともジェイスは指導力も高かったので、ジェイルは諜報部隊の長の地位を早々彼に譲ったそうだ。

逆に言えば、ジェイルはまだまだ現役なので長に復帰することも十分に可能ということだ。

機密の流出に関しては……ジェイスの誠実さに期待するしかないか。

あるいは魔術的に制約をかけるか。

ま、そこはこの国が考える事か。


---------------------


 お? ようやくひと段落したみたいだな。

まあ、国側が折れるしかないんだけどな。

この王女様も良い性格してるよ、まったく。


 この王女、元から結構なお転婆だったらしい。

当然、周囲から説教ばかりされていた。

そんな彼女を、在るがままに受け止めてくれたのがジェイスだったそうだ。


 さっき見たジェイスの前世に出てきたファザーの孫娘もお転婆だったしな。

ジェイスからすれば懐かしく、同時に慣れっこだったんだろう。

まさしく優しいお兄さんに憧れる少女の構図だ。

しかし、彼女は本気も本気だったのだ。


 彼のために淑女としての振舞いを身につけた。

必死に教養を深めた。

そして虎視眈々とチャンスを狙っていた。

そして、ピンチはチャンスとなった。


 もとより夜王は2人の仲には肯定的だったそうだ。

だが、他国の異種族が王女の相手となると貴族の反発は大きかっただろう。

家族を失い国を追われた事は間違いなく不幸であるが、それはそれ。

結婚に反対したであろう邪魔者は全て敵となった。

そして遂に彼女は獲物を仕留めたのだ。


 ……怖っ。


「実は私からも提案があります」


「ふむ。聞こうか」


 ある意味被害者のジェイスは縮こまっているが、王女は堂々としたものだ。

もはや恐れるものなど何も無いといった態度。

王族としては正しい態度なのかもしれんが……。

この王女いわゆるヤンデレ、重い女というやつなのではないだろうか。

ジェイスの将来が不安になって来たな。


「夜の国への潜入部隊。それに私とジェイスも参加させて欲しいのです」


 おいおい、何を言い出すんだこの暴走王女様は……。


前章のヒロインだったメリアと全く違う性格のルーナ。


好みが分かれますね。

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