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リバース チェンジ ワールド  作者: 白黒招き猫
第4章 魔大陸決戦編
144/216

諜報部隊訪問

ちょっと短いです。


今年のお盆は忙しくて。

「じゃ、後はよろしく」


「「「「「……」」」」


 叩きのめした不審者たちを諜報部隊の皆さんに任せて港を後にする。

いや~、治安良さそうな街にあんなに害虫共がいるとはね。

奴らは外国人を狙った人身売買組織だった。

俺とアリエルに襲い掛かってきたのでササっと返り討ちにしたのだが、自白させてみるとこいつ等は全員ただの実行犯でしかなかった。

そこで善良な市民の義務という事で治安維持に協力することにしたのだ。


 詳細については語る必要は無いだろう。

表向きは健全な商会が、裏では非合法の奴隷売買に手を染めていたというありふれた設定だ。

街の衛兵にも協力者がいた、というのもよくある話だ。

俺が取った行動も、いたって単純だ。


 まず半殺しにした賊の脳ミソを、シミラの幻術でシェイクして情報を全部引き出した。

そして、コッソリ後ろを付いてくる諜報部隊の皆さんと一緒に商会に突入して制圧。

ワシに手を出すと~とか喚く会長や、俺様に勝てると~とか吠える筋肉ダルマがいたが、アリエルが天井に収束魔力砲を発射して室内からお空が見えるようにすると静かになった。

大人しく、素直になった彼らから情報を聞き出した後、商会を包囲していた諜報部隊の皆さんに全てを丸投げして任務完了。


 会長の自白は聞こえていたはずだし、衛兵内部の協力者の捕縛は問題ないだろう。

あの手の皆さんは、物的な証拠なんぞ無くても黒だと判断できれば即行動する。

現代日本なら人権団体が騒ぎそうだが、実に頼りになる方々なのだ。

うむ、良い事をすると気分も良い。

話しかけた影人シェイド族のおじさんの顔が引きつっていたが、些細な事だろう。

それに


「奴隷を集めている、か。あんまり良い予感はしないな……」


「戦争準備目的の確率が大です」


「それはそうだが、問題はその利用方法なんだよな」


 奴隷の販売先は夜の国だった。

普通、単純な戦力にしたいのなら、健康な者とか若い男とかが条件になる。

戦場で慰安婦にしたいのなら若い女とか条件を付けるはずだ。

だが、相手からの条件は特に無く、極論すれば生きていればオッケーだったようだ。

そして簒奪者は『他人は道具』というタイプ、悪い予感しかしない。


 ちなみにこの世界では、長期にわたる戦争では普通に慰安婦が存在する。

兵士のこの手の処理を怠ると内部の規律が乱れるからな。

具体的に言えば、周辺の村を襲ったりするものが現れるのだ。

戦闘による高揚は理性を上回ることも珍しくない。


 地球でも第2次世界大戦以前は、多くの国で普通にあった制度だ。

職業売春婦ってやつだな。

現在でも紛争地帯などでは秘密裏に行われているらしいし。


 人権団体の皆さんには悪いが根絶は難しいだろう。

人権問題ってのは、相応の文化レベルが無いと問題であると認識すらされない。

自分が生きることに精一杯の人間は、他者を尊重することが難しいものだ。

そして継続的な生活水準の向上など簡単にはできないからな。


「まあ、もう俺には関係ないか」


 この世界はある意味弱肉強食だ。

命の価値が軽く、一般人は自分の命を守るのに精一杯な地域もある。

魔獣や妖獣という話の通じない脅威も多い。

地球の常識で行動すれば長生きはできないだろう。


「マスター?」


「何でもない。じゃあ、行こうか」


-----------------------------


 意外というか魔人連合国は治安が良かった。

探知に盗賊の類が引っ掛からないのだ。

代わりに影人族の皆さんがあちこちに点在している。

忙しい方々だな。


 俺もアリエルも飲まず食わずでも平気なので、一直線に首都へ向かう。

地上で音速を超えるとさすがにいろいろ目立つので上空を飛行中だ。

ソニックブームを撒き散らさないように風の防壁で身を包むのはマナーだな。


「分析完了です」


「おう……」


 アリエルが眼鏡の機能解析を完了したようだ。

返すのかと思ったら、メガネは顔にズブズブとめり込み吸収されてしまった。

忘れそうになるが彼女は人工群体生物、性質的にはスライムに近いのだ。


「返却が必要でしたか? こちらの方が簡単で確実に機能追加できるのですが」


「いや、沢山あるから別にいいよ。ただな……」


 見た目が美少女だから、よりホラーに見えてしまった。

なんか昔のノベルに結構いたな。

少女型スライム。

ともあれ、眼鏡っ子卒業は早かった。


「見えてきたな。この辺で降りるか」


「ここが首都? 城が無いですよ?」


「王族なんていないからな」


 魔人連合国の首都『デモニア』は、国の中心からやや北寄りにある。

経済の拠点として造られているので、魔物対策用の防壁はあるが城は無い。

他国からの侵攻に対する防衛は、国境の近くにある3ヵ所の城塞都市が担っているのだ。


〈マスターこちらです〉


「お、ベルクか。ご苦労さん」


 首都に近づくと空色の小鳥が飛んできた。

空の王ベルクの擬態した姿だ。

本来の姿は3眼4翼の巨大なグリフォンだが、そんなものが現れれば軍が出動してくるからな。

この姿のベルクは飛べることもあり非常に優秀な密偵となる。


〈どうやらあの男、結構な大物だったようです。隠し通路を通ってですが、あの中央の建物に入っていきました〉


「ほう、あの街の責任者だったのかもな。あそこは政府官邸みたいなものか?」


〈そのようです。国の首脳が連日無駄に騒いでいます〉


「無駄に騒ぐってお前……」


 議会制のこの国は意思決定が遅い傾向があるのだろう。

ベルクからすれば、有事なんだからスパッと決めろってとこなんだろうな。

だが、俺からすれば方針だけでも定まっているだけマシだと思う。

時として、有事であっても足を引っ張りあうのが人間だからな。


 もちろん絶対君主制が上とは言わない。

地球でも会社のワンマン経営には賛否両論があるしな。

国王にせよ社長にせよトップが優秀なうちは上手く行くが、そうでなくなるとあっさり傾く。

今回の夜の国のクーデターも、夜王という絶対者が殺されただけで国が簒奪者の手に落ちたわけだし。

魔人連合国ならそうはならなかっただろう。

もちろん大混乱にはなっただろうけど。


「正面から入れるのか?」


〈さすがに騒ぎになるかと〉


「別に問題ないような気もしますが?」


「アリエル、お前な……。ベルク、隠し通路ってやつに案内してくれ」


〈了解です。む?〉


「お?」


〈キュキュ?〉


「これは?」


 首都に入った瞬間、全員が違和感を覚える。

暇そうに寝ていたリーフまで反応して目を覚ました。

これは、結界? いや、探知か?


「発信源を特定。あそこです」


 アリエルが即座に逆探知を行い、何らかの能力の発生源を特定する。

場所は官邸らしき建物だ。

まあ、ある意味予想通りか。

それより問題なのは


「よし、ショートカットだ。正面から行くぞ」


「え?」


〈あの、隠し通路は……〉


「今のはギフトだ」


 そうと分かれば問答無用。

さて、話の通じる奴だと良いな。

主に相手側にとって。



祖母が亡くなったので、今年は新盆ってやつです。



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― 新着の感想 ―
[一言] ソニックブームを撒き散らさないように風の防壁で身を包むのはマナーだな。 魔法による加速は物理現象を引き起こさないってあった様な…。
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