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リバース チェンジ ワールド  作者: 白黒招き猫
第3章 妖精大陸探索編
135/216

友の旅立ち

どうもPCの調子が悪い……。


まだ新しいんですが、TVの録画で容量使ったせいですかね。

 地獄。

それは咎人が罰を受ける場所。

では、自分はいかなる罪を持って地獄に落とされたのか。

大人の言いつけを守らなかった事か?

美人のメイドさんとニャンニャンした事か?

……後者でないことを祈ろうかな。


 ガシャン


「シリルス様、次が来ました」


「……後どれくらい?」


「山が3つです」


「そう……」


 大都市国家『ロスト・イリジアム』の内政を司る氏族の重鎮、セネリア。

その嫡男であり、都市唯一の希少種族エリフィム。

戦闘には向かないけど、卓越した魔法の技量を持つ秀才。

この肩書だけなら僕はこんな地獄を見てはいない。


 問題はもう1つの肩書だ。

都市最高の魔道具研究者にして古代文明の遺産の解析者。

これが僕を地獄に落とした原因だ。


「シリルス様。回収部隊がまた戻りました」


「そう……」


 チラリと目をやると、山のように積み上げられたゴーレムやパペットが目に入る。

僕はこれを全て1人でチェックしなければならないのだ。

何故なら僕以外に出来る者がいないから。


 命令を出していたプロトタイプ・アンヘルと要塞が排除されたことで、都市に攻め寄せていた魔法生物たちは全て停止した。

破壊された残骸でも貴重なのに、無傷の物が大量に手に入ったのだ。

戦闘による都市の被害を補填してもお釣りがくる大儲けである。


 ただし問題が1つ。

これらが安全かどうかという判断が下せないのだ。

僕以外には。


 祖父や父達による地獄の説教フルコースの後、僕は即座にここに連行された。

そして、それから延々と魔法生物のチェックをやらされているのだ。

あるものは回路を切断し、あるものは動力を停止させ。

貴重な古代文明の遺産だから、粗雑に扱う訳にもいかない。

修復が可能な範囲で、だが決してイレギュラーな起動はしないように。

これが出来るのは現在の所、僕だけだ。


 他の技術者の皆さんは、外装を外して内部を露出させる作業に専念している。

自分にできない事には手を出さず、自分にできる事に専念しているのだ。

素晴らしいねぇ、コンチクショウ。

手術が順番待ちのスーパーDrとかってこんな感じだったのかね……。


 守備隊の半数は森中に散らばる魔法生物や残骸を回収中だ。

機密保持などの観点から冒険者にやらせるわけにはいかないからね。

彼らには冒険者ギルドから相応の報酬や素材が出されてる。

破片や残骸を鋳潰せばいくらでもインゴットは作れるからね。

昨日くらいから都市を続々とドワーフ達が訪れてるみたいだし。


 要塞撃破の手柄はラーマスさんとアリエルのものとなった。

アリエルは死んでしまったから、実質ラーマスさんが今回の英雄という事になるのかな。

複雑な心境だけど政治的配慮ってやつだ。


 肝心のラーマスさんだけど、すでに湾岸都市に帰ってしまった。

無茶をし過ぎた後遺症でしばらくは魔法は使えないけど、あの人は冒険者ギルドの本部長だ。

魔法が使えなくても、字が書けて声が出れば仕事なんて山ほどあるんだろう。

ここの支部長でさえ書類に埋もれてるんだ、あの人も今頃地獄を見ているんだろうな。


 ラームさんは相変わらず治安維持の任務に忙殺されてる。

過去の因縁にケリをつけたのは彼も同じなんだよな。

それとメリアに対してはお咎めは無しだった。

むしろ、僕の脱走に気付いて護衛任務を果たしたって事で評価されたみたいだ。

僕が強く主張すれば、立場上彼女は逆らえないわけだしね。


 そしてフィオさんだけど、意外な事にまだここで復旧作業を手伝っている。

白獅子と黒狼を引き連れた冒険者、ディノの名は結構有名になった。

ちなみにリーフとフェイはマスコット扱いだ。

見た目が可愛いから人気者だけど、知らないって怖いと心から思うよ。


---------------------------


「よう、大変そうだな」


「え? フィ、じゃなくてディノさん」


〈やっふー〉


 突然かけられた声。

振り向くとそこにはフィオさんが立っていた。

毎度の事ながら気配を全く感じないんだよな。

フェイは彼の頭に寝そべっている。

ホントに従者なんだろうか……。


「都市もだいぶ落ち着いてきたからな。そろそろ出ようと思う」


「……急ですね」


 元々フィオさんは北大陸に向かう予定だった。

今の今まで残っていた方が不思議なのだ。

だというのに、急に切り出された僕は言葉に詰まってしまった。

これは、この感情は、ああ、そうか。


「寂しくなりますね」


「まあ、お前とは気が合ったからな」


 祖父に両親、そしてメリア。

今の僕には大切な人が沢山いる。

でも、前世という秘密を共有できる人はいなかった。

彼が滞在している間、僕は本当に楽しかったのだ。

でも、だからこそ、ここは笑って見送ろう。


「メリア」


「はい。ディノ様、これを」


「これは?」


 渡された紙を見たフィオさんの目が鋭くなる。

それは北大陸の情勢を調べた調査書だ。

余りよろしくない状況だという事がすぐに分かる内容のはず。


「僕にできるのは、ここまでです」


「いや、助かる」


 調査書にざっと目を通したフィオさんは、僕に右手を差し出した。

僕はその手を取る。


「全てが終わったら顔を見せに来るよ」


「それまでにはアレを片付けておきますよ」


 目をやった先に見えるのは要塞巨人の残骸。

彼が僕らを守ってくれた証。

僕には解る。

彼が冷酷な裁きの神というだけではないことを。


「メリアと婚約者さんと仲良くな」


「はは、善処します……」


 最後に憂鬱になる話題を投下して、彼は背を向ける。

そして馬車に乗り込み出発する。

と、その時、馬車の中に誰かがいる事に気付いた。

あれは、まさか……。


「メリア?」


「フードを被っていたので顔までは。ですが、背中が膨らんでいたように見えます」


「髪の色は?」


「おそらく薄い銀か白金です」


「そうか……。生きていたのか」


 考えてみれば当然だ。

あのフィオさんが、みすみす仲間を死なせるはずがない。

死んだことにされた以上、姿を見せるわけにはいかなかったのだろう。

それでも一言言って欲しかったと思うのは傲慢なんだろうか。

恨めしく思う反面、心が軽くなるのを押さえることはできなかった。


-------------------------


「マスター、私にも見せて下さい」


〈私も~〉


 ハウルが高速で馬車を引く中、都市では大人しくしていたアリエルがフードを外して話しかけてきた。

シリルスから貰った調査書を受け取り、フェイと共に読み始めるアリエル。

彼女の持つデータは西大陸の事が中心で、しかもほとんどが古い。

新しい情報に飢えているのだろう。


「湾岸都市を経由して連合の国へ行くのですね」


「そうなるな」


 北大陸の北部は世界樹のある聖域だ。

そこは巨人達が守る領域で国は無い。

中央部には吸血鬼族の国『夜の国』。

東部には鬼人族の『鬼王国』。

西部には獣魔族の『獣魔国』。

南部に雑多な種族が暮らす『魔人連合国』。


 俺たちは、まず魔人連合国の港に向かう。

そこから問題がありそうな夜の国を調べる事になるだろう。

シリルスに貰った調査書によると、かなり面倒な事になっている。


 まず夜の国でクーデターが起き、王族が王女以外殺されてしまったという。

普通ならノーブルがロードに勝つなどありえないし、そんな事をする気にもならないだろう。

まず間違いなく転生者絡みだ。


 一方逃げのびた王女は魔人連合国に身を寄せている。

殺された国王は魔人連合国に友好的だったので、その伝手の様だ。

当然、夜の国からは引き渡し要求が来ているらしい。

だが、魔人連合国はこれを拒否。

両国は緊張が高まっている。


 これに対し獣魔国は傍観の立場だ。

元々吸血鬼と獣魔族は仲が悪い。

何でもかつては少数の吸血鬼族が多数の獣魔族を支配していたらしい。

内輪揉めで混乱するのは望む所なんだろう。

夜の国が魔人連合国に攻め込めば、おそらく動く。

ただし、今のところ攻め込む気配はない様だ。


 一方、鬼王国は両国を取りなそうとしている。

だが、クーデター政権も魔人連合国も譲るわけにはいかない。

何とか鬼王国を自陣に引き込もうと、水面下で活発に動いているようだ。

何ともまあ、複雑な状況だ。


「実際に目で見ない事には判断できないな、これは」




  第3章  END


設定や人物紹介を挟んで第4章です。

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