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リバース チェンジ ワールド  作者: 白黒招き猫
第3章 妖精大陸探索編
131/216

神槍杭打

〈(ガ、ぐぐグ……)〉


《限界が近いみたいだな》


 それは必然の結果だったと言える。

スペックが同等ならば相性が良い方が勝つのは当然だ。

幾度となく浸透攻撃を動力炉に受けた要塞巨人。

そこに憑依したドヴェールは、神気に曝されもう限界を迎えていた。


 攻撃は獣じみた単調なものとなり、さらなる反撃を喰らう。

均衡は一度崩れ出すと連鎖的に崩壊していく。

思考はまとまらず混乱していく。

客観的に言えばドヴェールの敗北は確定した未来だった。

しかし


〈(グぅぅ……。オレハいきル……)〉


 武器に憑依し、他者を喰らってまで生き延びようとした男。

それがこの程度で諦めるはずがない。

肥大化した生存本能が最適解を探し求める。

一周回ってクリアになった思考がある事に気付いた。


〈(マチはドコダ?)〉


 当初はすぐ傍にあった都市。

それがはるか向こうに見える。

ドヴェールはそこでようやく、自分が都市から引き離されていたことに気付いた。

相手の激怒は演技ではないだろう。

だが、怒り狂っていても尚、都市は守るべき対象なのだ。


〈(ナラば……)〉


 古典的な手だが今はこれ以外に活路は無い。

1%でも可能性があるならばそれに賭ける。

要塞巨人の右手が動き、都市に向かって伸ばされた。


《! お前……。無駄な足掻きをっ!》


 ドウッ!!


 ミサイルの様に発射される要塞巨人の右腕。

同時に、装甲騎兵が背中のブースターを全開にして跳躍する。

都市までの距離がもう少し近ければ届いたのかもしれない。

しかし、都市は使い魔達が守っているので被害は無かっただろう。


 グシャア!!


 結局、右腕は半分も距離を詰められなかった。

その前に、急降下してきた装甲騎兵によって踏みつぶされたからだ。

いかに頑丈と言っても限界はある。

装甲騎兵の重量にブースターの推力、落下速度を加えた踏み付けだ。

流星の様なその一撃は、大地にクレーターを穿ち右腕を完全に破壊した。


《よし、これで……》


〈(オアぁぁぁァァ!!)〉


ズン!! ガシィ!


《グッ!? 何ッ!!》


 右腕を破壊した直後の僅かな隙。

動きの止まった一瞬。

背中への衝撃が装甲騎兵を襲う。

そこには文字通りの馬乗りになった要塞巨人の姿があった。


《パンチは囮か!》


〈(死ねェェぇ!!)〉


 肘までしかない右腕も使い、両手両足で組み付く要塞巨人。

装甲騎兵の背中に押し付けられた胸部には、既に主砲が展開されている。

物理攻撃だけで、高等霊的生命体である悪魔を倒し切る事は難しい。

そういった意味では、エントとの戦いで大型魔導砲を失ったのは大きな痛手であった。


 だが、要塞巨人にはこの主砲がある。

至近距離からこれを撃ち込まれれば、さすがの悪魔も大ダメージは必須。

最後にして最大の勝機であった。

しかし


 ドドォ!!


〈(ガッ!?)〉


 突如装甲騎兵が大爆発を起こした。

自爆したわけではない。

全身の反応装甲を一斉に起爆したのだ。

それでもしがみ付く手を緩めない要塞巨人。

だが


 ガコン ガン!


〈(ぐァ!?)〉


 装甲騎兵の背部のブースターが稼働し、要塞巨人を突き飛ばした。

振り落とされそうになる身体を、足でどうにか固定する要塞巨人。

そして体勢を立て直した時


目が合った


 背中を向けていたはずの装甲騎兵。

だが、何故か今両者は向かい合っていた。

理由は簡単だ。

要塞巨人の上半身が泳いでいる間に、装甲騎兵の上半身が180°回転したのだ。

生物ならありえないが、装甲騎兵はゴーレムをモデルにデザインされた。

この程度はできて当然である。


 唖然とする要塞巨人を、今度は装甲騎兵が6本の腕で抑え込む。

その胸部には、主砲よりも1回り小さい筒が展開されていた。

そして、その筒の先端には極光を宿した刃が。

要塞巨人は離れようとするが間に合わない。


〈(ヤメ……)〉


《終わりだ》


 ガゴォォォン!!


 打ち出されたのは巨大な神槍。

それは主砲を破壊し、内部機構を粉砕し、丈夫な外殻を貫き、要塞巨人を貫通した。

当然、主砲の奥にあった動力炉は神槍によって串刺しにされていた。

モズの早贄の様になった要塞巨人。

その頭部の眼から遂に光が消え、糸が切れた様に巨体が脱力した。


《『ロンギヌス・バンカー』ってとこかな。色々ギリギリなネーミングだが……》


 そして、フィオの呟きと共に装甲騎兵も光の粒子となって消え去った。


---------------------------------


 一方、慎重に森を進んでいたシリルスとメリアは、ようやく目当ての物を見つけていた。

それは金属製の大きな箱のようなものだった。

拉げてはいるが、まるでエレベーターのようにスライド式のドアが付いている。

そして、そのドアは開いていた。


「シリルス様、これは?」


「脱出ポットってやつさ。……中にはいないみたいだね」


 かなりの勢いで飛ばされてきたらしく、箱の周辺はかなり荒れている。

これでは足跡など見つけようがないだろう。

メリアの気配察知にもシリルスの探知魔法にも反応は無い。

状況からして、それ程遠くに行けるはずが無いのだが。


「彼の精霊魔法は上の中くらいだったと記憶していますが……」


「そうか……。もしかすると古代の魔道具を使ってるのかもね。なら……」


 シリルスは地面に手を着き複雑な呪文を詠唱する。

そして、しばらくすると目を開けた。


「こっちだね」


 迷い無く歩き始めるシリルス。

しばらくするとメリアにも、彼が何を目印にしているのかが分かった。

それは血だ。

見えにくいが、点々と血が垂れた跡が残っているのだ。


 そして、一際血臭が強い場所でシリルスは足を止める。

大きな木の根元。

これだけ臭いがするのに何も無いのが逆に不自然だった。

だが、よく注意してみると不自然な魔力の揺らぎが微かに感じられる。


「もう、バレてますよ」


「……そうみたいだな」


 何も無い場所から帰ってくる応え。

次の瞬間空間が揺らぎ、1人のダークエルフが姿を現した。

本来ならば貴公子然とした美男子なのだろう。

しかし、その顔は疲弊しやつれ、顔色は青い。

さらに右腕が無く隻腕であった。


「手酷くやられましたね、ゴラーさん」


「お前がシリルスか。直接会ったのは初めてだな」


 左手に持っていた魔道具を放り捨て、フラフラと立ち上がるゴラー。

メリアが警戒しシリルスの前に出る。

だが、ゴラーは満身創痍だ。

どう見ても、このままでは死ぬ。


「見ての通り俺は助からん。わざわざご苦労な事だな」


「まあ、それは結果論ですから。万が一逃げられたら後が面倒ですし」


「もう俺には何もできんさ。部下も全員失ったしな。フォーモルは終わりだ」


 苦笑するゴラー。

シリルスは無言でそれを肯定する。


「一つ聞いても良いですか?」


「答えられる事ならな」


「なぜ、こんなことをしたんです?」


 ゴラーは元々かなり優秀な人物だったと聞く。

その彼が『爛れた牙』の危険性に気付かなかったとは思えない。

メリアにしても、正面から想いを伝えていれば将来的には結婚できた可能性が高かったはずだ。

シリルスには彼が自ら未来をぶち壊したようにしか思えないのだ。

もっとも、そのおかげで自分はメリアと出会えたのだが。


「! それは、お前が……」


「はい?」


「……」


 突然、ゴラーの眼に浮かんだ怒りと憎悪。

しかし、それはすぐに消え去り絶望と諦観に変わる。

意外な反応にシリルスは困惑を隠せない。

何しろシリルスとゴラーはこれが初対面。

当時の事件にはシリルスは全く関わっていないのだ。


「鏡だ」


「え?」


「フォーモルから押収された魔道具に鏡があっただろう」


「ああ、そういえば……」


 魔道具の第一人者であるシリルスには多くの調査依頼が来る。

その中にはフォーモルから押収されたものも含まれていた。

その中に確かに用途不明の鏡があった。

正確には、割れていてどんな効果があるのか分からなかったのだ。


 押収されたマジックアイテムは多くが呪われた物だった。

特にゴラーの私物と思われる物は、ほとんど全てが呪われていたのだ。

そんな中、数少ない呪われていないマジックアイテム。

シリルスの印象にも残っていた。


「あれが何だというんです?」


「くくく、アレは確かに呪われていない。だが、多くの使用者を破滅させてきたマジックアイテムなのさ」


「……どんな効果があるんです?」


「ふん、あれは……」









「未来を映し出す鏡なのさ」


1人と1機の赤い主人公からのパクリっぽくなってしまいました。

セーフだと信じたい!


後半は中途半端だけど長くなってしまうので分割で。

次回完全決着。

……の予定。

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