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リバース チェンジ ワールド  作者: 白黒招き猫
第3章 妖精大陸探索編
127/216

悪魔、さらに退場

腰をやってしまった……。


何とか仕上げたけど不備が多いかもしれません。

 要塞巨人のブーストの余波でふっ飛ばされた2人と1匹。

幸い防御が間に合い無傷だったが、着陸地点は問題大有りだった。

とにかく遠い。

ひたすら遠い。

敵よりも海の方が近いくらいなのだ。


「おい、あっちに海が見えるぞ……」


「方角的には大陸の南端だと思うが……」


〈キュゥ……〉


 着地したのは良いのだが現在地が不明。

方角も結界内でグルグル回っていたので確証が持てない。

迷子と言ってもよい状況だった。


「まあ、良いさ。都市にはフェイがいるからな」


「フェイ? 仲間がいたのか」


 フィオはフェイ自身ほど空間制御能力は高くない。

しかし、彼女をマーカーとして門を開く位の事はできる。

彼女が都市に居れば帰るのは簡単である。


「よっと。……さて、都市はどっちだ」


 空高く跳躍し周囲を見渡す。

すると遥か地平線の彼方に光が煌き、爆発音が聞こえてくる。

どうやらエントと要塞のバトルが続いているようだ。 


「あっちか。よし、これで……へ?」


 都市の方角を確かめ、フェイの存在を感知したフィオ。

即座にフェイとのリンクを確認し、門を開こうとする。

だが、気を逸らしたその一瞬。

気が付いた時には、天地を切り裂く様な閃光がフィオに襲い掛かっていた。


「ぬぐうぅぅぅぅぅぅぅ……」


「キュキュウ!」


「ディノ!」


 とっさに左手を悪魔化させ盾にするフィオ。

だが、閃光の正体は要塞巨人の主砲。

エントを飲み込み大陸を横断しても尚、その威力は馬鹿げたものだった。

悪魔化した左手が無残に焼かれ、その体は水平線の向こうに吹き飛ばされていく。


 要塞巨人は狙ったわけではない。

ただの流れ弾にフィオは偶然当たってしまったのだ。

だが、当人にとっては運が悪かったですむ話ではない。

海面に叩き付けられたフィオの眼が剣呑な光を宿した。


------------------------------


〈あらら~、マスター達飛んで行っちゃった……〉


〈むう、あの要塞は相当な戦闘力だぞ〉


〈はっ。いざとなったら俺がやるさ〉


 都市防衛を任されていた3体の使い魔、フェイ、リンクス、ハウル。

彼らは魔法生物が停止し、アンヘルもいなくなったため暇を持て余していた。

だが、要塞が変形しエントと戦い始めると流石に無視はできなくなった。


 彼らの主人が手を出し過ぎないよう厳命していたので、先制攻撃できないのが悩みどころだ。

デカくて硬くて動きも柔軟、彼らでも真っ向勝負で勝てるか分からない強敵。

正面から組み合えるのは、巨体のカリスか巨大化したハウルくらいだろう。

ギアやヴァルカンでさえ体格的に1対1は厳しい。


 挙句の果てに腰らへんに主人たちが現れ、数十秒後には消え去ったのだ。

空の彼方へ。

もはや何が何だか分からない。


〈うわ~、あの手凄いね~〉


〈お前の【ミーティア】並みじゃないのか?〉


〈ぐぬぅ……〉


 両手のバルカン砲の威力には感心。


〈おい、あの大型の大砲【ソル・ブラスター】より威力ないか?〉


〈……否定はできないな〉


〈強いね~。これはエントじゃ勝てないよ〉


 肩と大腿部の大型魔導砲にも感心。

だが


〈……何、あの威力〉


〈カリスのブレス並みだな……〉


〈おいおい! あんなのこっちに撃たれたらシャレにならねえぞ!〉


 さすがに主砲の威力を見て慌てだした。

ちなみに彼らの敬愛する主人も巻き込まれているのだが、それには気づいていない。

と、要塞巨人がこちらを向いた。

主砲は展開されたままである。


〈フェイ! 空間湾曲だ! 止められないなら逸らせ!〉


〈解ってるわよ! って、あ、あれ?〉


 フェイの口調が変わる。

それだけ切羽詰まっているのだ。

何故なら


〈どうなってるのよ!? 空間操作が使えない!〉


〈なんだと!〉


〈チッ! なら俺が……〉


 フェンリルモードで対抗しようとするハウル。

しかし、フェイと同じように巨大化が発動しない。

能力を封じられた訳ではない。

なのに発動しない。


〈どうなってんのよ!〉


〈知るか!〉


〈……まさか〉


 何かに気付いたリンクスがブレスを吐こうとする。

しかし、本来なら収束される光の粒子が拡散してしまう。

そして拡散した粒子は要塞に向かって流れていく。


〈あいつ、俺たちの魔力を食ってやがるのか〉


〈私達だけじゃないわ。周辺一帯の自然界の魔力まで食ってる〉


〈邪神の能力かよ……〉


 いかに使い魔と言えども、行使できる魔力には限界がある。

故に自身の魔力を媒介とし、自然界の魔力を利用している。

これは彼らに限らず大半の生物が同じである。

例外は魔法生物や高位の神種くらいなものだろう。


 彼らは能力だけ見れば高位の神種に匹敵する。

しかし、フィオの分体であるため、彼の許可なく全力を振るう事が出来ないのだ。

全力を出せず、周囲の魔力を使用できない。

状況はかなり悪かった。


〈しょうがないわね。アンタたちの魔力を私に貸しなさい〉


〈それで足りるのかよ〉


〈1発逸らすくらいならやってみせるわ〉


〈それしかないか〉


〈そんなに長時間防壁は張れないわ。タイミングがシビアねって、チョット!?〉


〈マズイ! 防御だ!〉


 ガガガガガガガ!!


 フェイが空間湾曲防壁を張ろうとした時、要塞巨人も同じく砲撃を加えようとしていた。

ただし、主砲ではなくバルカン砲で。

要塞側からしてみればただの牽制だったが、フェイにしてみれば最悪だった。

高威力の一撃を逸らすための防壁を張ろうとしていたのに、低威力の連撃を防ぐための防壁を使わされたのだ。

そして、現在のコンディションではもう1枚防壁を張るのは困難だ。

このまま主砲を撃たれれば、防ぐことはできない。


〈ハウル! 【アルマゲスト】で迎撃できないのか!〉


〈【ミーティア】も怪しいくらいだ!〉


〈その余裕があるならこっちに回しなさいよ!〉


 リンクスは太陽から、ハウルは星から、フェイは大気から必死に魔力を集める。

しかし、間に合わない。

足りない。

そして遂に主砲のチャージが終了する。


〈もう限界よ……〉


〈ここまでか……〉


〈クソッ!〉


 さすがに打つ手がない。

そう思った瞬間、都市と要塞巨人の中間に舞い降りる姿があった。


〈あれは!?〉


〈アリエルか!〉


----------------------


 都市の盾となるべく上空から急降下したアリエル。

そこに論理的な根拠があったわけではない。

有機機械であるアリエルからすれば、バグと言っても良い衝動だった。


 背中の翼が羽根を飛ばし、バルカン砲を迎撃する。

主砲の発射に備えて構造粒子体を分解し魔力に還元する。

そう、この場においてアリエルだけが大魔力の行使が可能だった。


「(私には役目も使命も無かった……)」


 魔法生物たちは施設防衛という任務があった。

プロトタイプ・アンヘル達には自分を生み出すという役目があった。

では、誕生そのものが終点であった自分の存在する意味とはなにか。

どれだけ演算を繰り返しても答えは出ない。


 創造主は自分を生み出すために禁忌を犯し、その結果文明は失われた。

現在の主人から言わせれば、それはいつかは来た終焉だったそうだ。

アリエル自身の演算でも結論は同じだ。

個人に頼った文明に未来などあるはずがない。


 何故、創造主は自分を生み出したのか。

主人は予想でしかないが、と前置きした上で答えてくれた。

曰く、創造主は自身の死後、文明が失われることを予想していたのだろう、と。


 彼女が生涯をかけて築き上げたアールヴ文明。

それが消え去るとしたら、彼女の生きた証はどこに残るのか。

遺跡? 文献? そんなものでは満足できない。


 だから、彼女は作り上げた。

自身の現身にして最高傑作を。

禁忌を犯し、他の全てを犠牲にしてでも。


「(それが、私……)」


 遂に要塞巨人の主砲が発射される。

後方では先輩たちが防御の準備をしているが、間に合わない。

ならば


「【擬似湾曲空間エミュレート・ワームフィールド】展開!」


 フェイの空間制御を疑似的に再現し、主砲を逸らす。

しかし、紛い物故に出力に劣り、それを我が身を削る莫大な消耗で補う。

翼が1枚、また1枚と溶けるように消えていく。

本体までも指先から崩壊していく。


「(創造主よ、私には解りません)」


 なぜ、自身のために全てを捨て去ることができたのか。

ヒトとはそこまで自分本位に生きられるものなのか。

だが、それは今となっては意味の無い事。

全ては遠い過去の出来事。


「なら、私は……」


 この戦いは創造主の遺産をめぐる戦いでもある。

ならば自分は自分に役割を与えよう。

創造主が捨て去った妖精種は、形を変えて生き残っている。

貴方が捨てたのなら、私は守ろう。


 私もあの要塞も貴方の罪の結晶。

貴方の罪は私が償いましょう。

もろともに滅び去る事で。


「(情報粒子体、還元開始)」


 主砲を押しのける様に突き進む。

鳴り響くアラートを全て無視し、前へ前へ。

砲身の奥の動力炉めがけて。


 要塞に近づくほどに魔力が食われていく。

だが、主砲の輝きが薄れていく。

勝機を見出し、ボロボロのアリエルがさらに加速する。


「(行ける! 【擬似要塞主砲】構築!)」


 射程は短いが出力は同等。

要塞の切り札を分析し再現するアリエル。

元より要塞のデータは豊富に持っている。

2度も直に見れば、この程度は再現可能。


「(発っし……)」


 ガゴォ!!


 発射寸前の僅かな隙。

アリエルが万全の状態なら存在しなかった隙。

そこを狙って巨大な何かがアリエルを打ちのめした。


「(あれは……、腕?)」


 要塞巨人の腕、その肘から先が飛翔していた。

その腕は要塞巨人の元に戻り、再び連結する。


〈警告 ダメージ限界突破〉


 無視し続けていたシステムアラートに、無慈悲に表示された1文。

アリエルの意識は途切れ、その体は墜落した。


やはり装備されていたロケッ〇パンチ。


次回、ようやく真打(状態異常:憤怒)帰還。

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