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リバース チェンジ ワールド  作者: 白黒招き猫
第1章 異世界召喚編
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召喚陣の在処

「忘れろ。全て悪い夢だ」


 最後の一言が届いたかどうかは解らないが、帰還を望んだ英雄は送還した。

場所も時間も召喚された所だ。

記憶も消したので、彼にとっては全てが無かった事になる。

まあ、こんなところだろう。


 彼の周囲にあふれていた違和感が薄れていく。

これで歪みの増大はマシになったかな。

残ったのは彼の剣のみ。

これ、どうしようかな。


 フィオは剣を軽く鑑定する。

当然のように大雑把な事しか解らないのが悲しい。

敵や味方のST解析は戦闘スキルなのでできるのだが。

職人系が苦手なのは相変わらずだった。


 材質はミスリル、付加属性は雷か。

結構な高級品なんだろうな。

俺にしたら大したことないけど。


 ふと、目をやるとへたり込んだ騎士がいた。

少し考えて剣を差し出す。

これを餌に口裏を合わせてもらおう。

まだ大事にしたくないしな。


------------------


 突然の出来事にウェインの思考は停止状態だった。

英雄はどこに消えたのか?

目の前の人物はだれなのか?

疑問だけが頭を占める。


「ほれ」


「は?」


 差し出された剣を反射的に受け取る。

英雄の振るっていた雷の魔剣だ。

改めて向き合うと、この人物は若い。

おそらく20歳位だろう。


 黒みがかった肌はダークエルフを思わせるが、あの種族は銀髪赤眼だ。

そして黒髪紫眼のこの人物は耳が短い。

そして気付く。

この目は魔眼だ。


 目そのものではなく、目に浮かんだ幾何学模様が光って紫に見えるのだ。

ヒューマンに魔眼持ちは少ない。

と、いう事は……


(魔族か? 珍しいな……)


 魔族は個体差が激しく、ヴァンパイアやリッチのように高い知性を持つ魔物も魔族扱いされる。

自分達の領域から出る事は少ないが、数少ない魔族の冒険者は総じて凄腕だ。

国によっては差別対象なので見かける事も少ないのだが。


「そいつはあんたにやるよ」


「な!? 待て! マイク様はどうなったのだ!」


「帰した」


「は? え? 帰し、た?」


 さらりととんでもない事を言う男に絶句するウェイン。

男は続ける。


「方法は秘密だが、今起きた事は周りには見えていない。で、唯一の目撃者のあんたは聞かれたらこう答えて欲しい」


「見えて、いない?」


「英雄は病にかかっていて、薬をネタに戦いを強要されていた。しかし、あんたとの決闘中に発作が起き、英雄は死んだ」


「何を……」


「まあ聞け。死んだ英雄の遺体は消え、剣だけ残った。そういう事にして欲しい」


「あんたの存在を隠せと?」


「そういうことだ。代金はその剣とあんたの命だ。無駄な殺しはしたくない」


「……解った」


 剣を手にしたウェインは提案に乗った。

だが、男は積極的にバラさなければ、わざわざ自分を殺しに来るとも思えなかった。

それ程あの紫眼は静謐で澄んでいた。


(ゲオルグ司教殿には話しておくべきだろうな……)


 ふと見ると男はすでに消えていた。

帝国軍が動き出す前にウェインは撤退を開始した。

そして英雄消失の知らせがフラム聖教国に届く事になる。


-----------------


「はあ、胸糞悪い」


 再びメルビル帝国の首都、帝都メルビリアを目指すフィオは呟いた。

送還の為に槍を突きたてた時、英雄の記憶の断片を見たのだ。

自分の目で見た現状も合わせると、少なくとも帝国の上層部は腐り切っている。

潰した方が世のため、人のためなんじゃないだろうか。


 もちろん混乱はあるだろうが、現状が続くよりはましだろう。

そもそも、異世界召喚を抹消した場合、帝国は制度を維持できなくなるだろう。

どの道、異世界召喚に頼り切った帝国は消滅する運命なのだ。




 数日後、帝国の首都に到着したフィオは早速召喚陣の在処を探し始めた。

最近使用したらしいし、どうせ城の中にあるだろうと思っていた。

しかし、無い。


 小型化したバイトとシザーに念入りに調べてもらい、魔力探知をフルに使ったというのに。

城にあったのは召喚対象を呼び込む部屋であり、肝心の召喚陣が無かった。

生贄を殺した処刑場もあったが、そこも魔力を発生させるだけの設備だった。

そして気付いたのは歪みが町全体を覆っていることだ。


 帝都の住民に話を聞いてみると、30年ほど前に建築士が召喚されたらしい。

彼は帝都の上下水道を整備して、衛生環境を一変させたそうだ。

普通に考えれば衛生環境の向上など当たり前だが、相手は腐った皇帝である。

星の並びや地脈の関係で、10年に一度しか使えない異世界召喚を民の為に使うだろうか?

必ず利己的な理由があったはず。


 そう考えれば話は早かった。

地下の下水道の見取り図を手に入れて見ると、答えはすぐに解る。

巧妙に隠されているが、水路が魔法陣になっているのだ。

帝都全体を覆い尽くす様な巨大な魔法陣だった。


 俺だって召喚陣は城にあると思い込んでいたのだ。

他国だって似た様なものだろう。

スパイがいくら城を探しても無駄ということだ。

そして気付いたとしても、簡単には破壊したり盗み出す事は出来ない。

大きすぎるのだ。

コピーしようにも巧妙にカモフラージュされていて、細部まで再現できないだろう。


 もっとも俺の目的は抹消だ。

例え壊しても修理されては意味がない。

全てを一気に破壊して、関係資料をすべて消し去るか?

帝都が消えるな。

これは最終手段か。


 とりあえずもう少し、下水道を調べておくかな。

ついでに残り4人の異世界人も始末しておこうかね。

殺すか帰還させるかは会って決めるとしよう。


 そういや、一番新しく召喚された奴の情報は無いんだよな。

どうもマイクと同じで、戦闘要員として召喚されたみたいだけど。

城はとんでもない歪みで覆われている。

異世界人が4人もいれば当然なんだろうけど。


 しかし気になるには歪みの質だ。

一つだけ歪みというか、最早「邪気」と言っても良い様な歪みを発している奴がいる。

暴力を肯定し、人を虐げることをためらわず、あらゆるものを欲し、自分は正しいと信じる。

そんな最悪の人間性を感じさせる歪みだ。


 どういう教育を受ければこんな歪んだ性質を宿すんだ?

一応まともな日本人だった俺には理解しがたいな。

精神障害者とか?

いや、何でそんなの呼ぶんだよ帝国は。


 うーん、会ってみるのが怖くなるな。

どんな奴なんだろう。


ここで最後の異世界人の情報が。


ゲスっぽいですね。

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