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リバース チェンジ ワールド  作者: 白黒招き猫
第3章 妖精大陸探索編
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アリエルとアンヘル

 空、それは限られた者達だけが踏み込める領域。

日の出まであと数時間、まだ空には星が輝いている。

そこから見下ろす地上でも光が瞬いている。


 それは戦いの光。

命を奪い合う残酷な光ではあるが、それは美しく見えた。

それはまるで地上に瞬く星だ。


 天と地。

二つの星空に挟まれた空に、15の光がある。

それは天使。

全身に光を纏い、その背に翼を持った姿はまさしく天使だった。


 しかし、その眼は不気味なほどに無機質だ。

ただ冷徹に冷酷に自分の役割を果たす、ただそれだけの存在。

それが彼ら、テストタイプ・アンヘルだった。


〈攻撃続行〉


〈指揮続行〉


 15体のアンヘルは全てタイプが違う。

その性能は15通り。


指揮タイプ:高い通信能力を持ち、集団指揮に特化。下位の魔法生物の支配権アリ


探知タイプ:広域探知、分析、解析能力に特化


高機動タイプ:翼による高速飛行、スピード特化


物理攻撃タイプ:身体能力強化に特化。パワー重視で近接戦闘に強い


砲撃タイプ:高出力の魔法弾による遠距離攻撃特化


物理防御タイプ:身体能力強化に特化。肉体強度重視で近接戦闘に強い


変形タイプ:粒子体変形特化型。状況に応じて翼を変形させて戦う


支援防御タイプ:支援魔法特化型。知覚範囲内の味方を強力な結界で守る


支援強化タイプ:支援魔法特化型。知覚範囲内の味方を強化できる


支援回復タイプ:支援魔法特化型。知覚範囲内の味方を回復させる


魔法攻撃タイプ:上級魔法を連発できる


予測タイプ:修復したデータを基に高精度の予測演算を行う


近距離技術タイプ:武器戦闘術、体術などあらゆる近距離戦闘技術に優れる


遠距離技術タイプ:弓術、投擲など遠距離戦闘技術に優れる


奇策タイプ:暗器や罠など搦め手の戦闘に優れる


 戦闘向けとは言えない個体も存在するが、そもそものポテンシャルが非常に高い。

さらに翼から硬質化した粒子体を発射する【フェザー・バレット】は標準装備である。

反撃を受けない上空なら一方的に攻撃が可能だった。


〈解析完了〉


〈データ受信、予測完了〉


〈データ受信、最適化完了。配信開始〉


 探知タイプが収集解析したデータ。

それを基に予測タイプが敵の次の動きを割り出し、指揮タイプに送信する。

指揮タイプは得られたデータを基に最適の動きを計算し、味方に送信する。

データを受け取るのはアンヘル達だけではない。


 指揮タイプのデータを受け取った、地上の魔法生物たちの動きが変わる。

より正確に精密に、戦術的、戦略的な動きを取り始める。

そうなると都市防衛軍は徐々に旗色が悪くなっていく。

さらに追い打ちをかける様にアンヘル達も攻撃を続ける。


 だが、それを阻むべく最後の天使が舞い上がる。


-------------------


 アリエルは思う。

自分と兄姉達はどちらが幸運だったのだろうと。

意味の無い疑問である事は承知している。

しかし、疑問を抱けるのは自分だけなのだ。


「(ターゲット確認。数は15。予想より多い……)」


 正直、これだけの数のアンヘルが残っているというのは想定外だ。

10対1くらいまでなら間違いなく勝てる。

だが、これだけの数となると簡単にはいかない。


「(だが、それでも……)」


 兄姉達はテスト用の実験体に過ぎない。

構造粒子体の性能は同じでも、情報粒子体の性能が段違いなのだ。

その証の1つこそが、今自分を動かしている感情だ。

彼らは感情を持たない。

持っているのは自分だけだ。


 ゆえに彼らは疑問も抱かない。

合理的に判断するだけで、そこに感情論は挟まない。

ある意味それは強さだ。

兵器としては彼らの方が正しいのかもしれない。


「(それでも、私は……)」


〈エネミー確認〉


〈エネミー接近〉


〈迎撃用意〉


 自分は兵器である前に『作品』だった。

性能だけでなく外見も完璧な芸術品。

創造主の最高傑作。


 それは矛盾であった。

最高の戦力を持った自分は万人を守る盾であるべきだ。

兵器として生まれた以上、それが存在意義であるはずだ。


 しかし、創造主はそれを嫌った。

最高傑作が壊れる事を忌避し、宝石のように大事にした。

その結果、自分の維持のために種族を危険にさらした。

 

 そして、かつて自分を生み出すために生まれた兄姉が、自分を守るために作られた要塞が、末裔たちを相手に破壊を振りまいている。

創造主は何を思うだろう。

創造主は何のために自分を創りだしたのだろう。


 心も感情も持たない兄姉。

迷う事の無い、ある意味では完璧な兵器。

自分は彼らが羨ましかったのかもしれない。


 だが、今自分はここにいる。

自分だけの戦場で守るためにここにいる。

どんなに難しく考える心があっても。

どんなに容姿が優れていても。

やはり自分は戦うために生まれた兵器なのだ。


「戦う!」


〈戦闘開始〉


〈攻撃開始〉


〈スレイブ・コントロール中断。サポート開始〉


 16の天使から放たれた輝く羽根。

それは、まるで流星のように空を彩った。


---------------------


「敵の動きが悪くなったぞ! 押し返すぞ!」


「おう!」


 魔法生物の動きが再び単純化した。

どうやらアリエルが戦闘に入ったようだ。

ハウルとリンクスも、加減しながらだが魔法生物を駆逐している。


「よっ」


キキィン


 近くにいたパペットタイプの魔法生物の四肢を切り落とす。

ゴーレムタイプは不器用で鈍いが、頑丈で再生能力があるのでコアを破壊する必要がある。

しかし、一番高価な部品もコアなのだ。

なので、器用で素早いが再生能力の無いパペットタイプは、コアを残しているのだ。


 これも冒険者らしく見せるためなのだが、なんだか凄く注目されている。

ふと周りを見ると、兵士も冒険者もパペットタイプのスピードに翻弄されていた。

ああ、そうか。

連中にとっては愚鈍なゴーレムよりもトリッキーなパペットの方が手強いのか。


 まあ、逆に好都合か。

パペットを集中して無力化しよう。

魔法生物が弱体化したとはいえ乱戦に持ち込まれてしまっている。

大規模攻撃が使用できないので戦況は都市側が不利だしな。


「うん?」


 そんな時、ふと気になる者を目にした。

1人のダークエルフの兵士。

鎧に大きな傷があり、服も真っ赤だ。

そいつが都市に向かって走っていく。


 普通なら傷の治療に向かっているように見えるだろう。

だが、俺は違和感を覚えていた。

あの鎧の傷からすると相当な重症のはずだ。

だが、それにしては元気過ぎる。

血も流れていない様だ。


 治療したなら、わざわざ劣勢の味方を置いて戻るだろうか。

アイテムの補充? いや、彼のポーチはほぼ満タンだ。

ん? ほぼ満タン? これだけの戦闘でアイテムを使っていないのか?

なんにせよ何故、都市に向かう?


「……そうか。動き出したか」


 要塞は除いて、まだ戦場に姿を現していない連中がいる。

傭兵や冒険者と『爛れた牙』、魔法生物とアンヘル。

足りないのはフォーモル残党のダークエルフ達だ。


 彼らは1人1人が手練れだが、とにかく数が少ない。

よって、正面からの戦闘は下策。

そうなると、最も有効な作戦は


「暗殺や潜入工作か。リーフ!」


〈キュ!〉


 リーフは瞬時に周辺を探知し、目的のモノを発見する。

大きな切り傷のある全裸の死体。

パペットにやられたのであろうその傷の位置は、先程の不審者の鎧の傷と同じ位置だった。

都市に目をやると不審者は、兵士に紛れて正門脇の小さな門を通る寸前だった。


「待て」


「!?」


「アンタは!」


「ディノさんだっけ?」


 一瞬で目の前に現れた俺に不審者と兵士が驚愕する。

シリルスとつるんでいたせいか顔が売れたな。

まあ、それはともかくだ。


「おい、アンタ。怪我してるわりには元気そうだな。ちょっと顔を見せてくれないか?」


「……」


「? どうしたんだ?」


「顔くらい見せ……うわ!」


 不審者はいきなり短剣を抜き、兵士に斬りかかった。

短剣は緑の液体で濡れている。

毒か。


「暴れるな」


「!?」


「は?」


「あれ?」


 まあ、短剣を抜いた瞬間、即座に四肢を切り落としたんだけどな。

何が起きたのか認識できてないだろうけど。

取り敢えずお顔を拝見。


「な、こいつは!」


「知った顔か?」


「はい。フォーモルの暗部のメンバーだったはずです」


「やっぱりか」


 こいつを見つけたのは偶然だ。

門はここだけじゃないし、既に侵入した奴も居るだろう。

まずは都市で悪さをしようとした奴は、即始末するようフェイに連絡する。

あとは


「暗殺に関しては彼女に任せるか」


 かつての同僚だろうが、いや、だからこそ。

おそらく、彼女は一切の手加減をしない。

残さず殲滅するだろう。



次回からは1つ1つ戦闘を片付けて行こうかと。


あんまりコロコロ場面が変わると解りにくそうですし。


それとも、入り乱れた方が臨場感があるかな。



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