表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
リバース チェンジ ワールド  作者: 白黒招き猫
第3章 妖精大陸探索編
107/216

遺跡探索準備

すぐに探索だと急すぎる気がしたのでインターバルです。

 シリルスとの会談を終えた俺は町をぶらついていた。

遺跡調査の準備には数日かかるらしい。

遺跡調査は難易度が高く、準備不足は死に繋がる。

ましてや、今回のターゲットは未踏破の遺跡なのだ。


 シリルスによると、踏破済みの遺跡は最近再調査を行ったらしい。

なんでも、半年ほど前に中央大陸の方で大規模な魔力爆発が観測されたらしい。

その規模は凄まじく、余波だけで監視システムがダウンしてしまったほどだという。

遺跡は全て厳重に管理されている。

ゴラーたちが遺跡に侵入したとすれば、このタイミング以外あり得ないという。


 踏破済みの遺跡は調査したが、未踏破遺跡はそうもいかない。

そもそも踏破された遺跡は、目ぼしい遺物が回収されている。

ゴラー達はシステムダウンの隙をついて、未踏破遺跡に侵入したという可能性が一番高い。

……それにしても、中央大陸の魔力爆発ね。

俺の意志じゃないし不可抗力だよな?


〈色んな種族がいますね~〉


〈キュ~〉


 ロスト・イリジアムは確かに様々な種族で賑わっている。

妖精種、ヒューマン、獣人、魔族、俺がいても違和感がない程だ。

テイマーもそれなりに存在するので、うちの獣軍団もそれほど目立たない。


「(おい、あれ見ろよ)」


「(従魔が3体? すげえ……)」


「(白い獅子に黒い狼か……)」


「(おい、あの緑の聖獣じゃないか?)」


「(ピクシーちゃんを侍らせて……。羨ましい!)」


 訂正、めっちゃ目立ってました。

ちなみにピクシーはフェアリーの眷属として有名だ。

フェアリーは人間サイズで4枚翅、ピクシーは小型で2枚翅。

彼らは森の中で集落を築いており、比較的友好的な種族らしい。

まあ、イタズラをどこまで許容できるかにもよるみたいだが。


 そんなわけで、集落を訪れた者を気に入って同行するピクシーもいるんだとか。

もちろん同行者にはそれなりの度量が求められる。

フェアリーならともかく、ピクシーのイタズラ好きは既に本能なのだから。

『ピクシーを連れているなら、朝起きたら人に会う前にまず鏡を見よ』なんて言葉があるそうだ。


 まあ、フェイは俺にはそんな事はしない。

他人にはどうか知らんけど。

人前なので喋らないけど、ハウルとリンクスも珍しそうに辺りを見回している。

あ、目が合った他人の従魔が仰向けになった。

降参のポーズかよ。


〈マスターは買い物とかしないんですか~?〉


「何か要る物なんてあるかな……」


 かなり繁盛している大型の店の前でフェイが尋ねる。

しかし、正直要る物が無い。

ゲーム時代のアイテムが山ほどあるし。

ダンジョントラップを漢解除できたし。


〈便利だけど、なんかつまんないですね~〉


「ぐ、それを言うな。一応任務だし」


 元ヘビーゲーマーとしては共感してしまうがな。


------------------------


「ほう……」


〈高いですね~〉


 現在地は都市の外周、防壁の傍だ。

フェイが感心しているのは防壁自体の高さではない。

雲の上まで届くような防壁から伸びる結界だ。

これなら飛行モンスターも侵入不能だろう。

さすが古代文明の遺産だ。


 国家が存在しない西大陸は、都市の1つ1つが小国のようなものだ。

土木技術に優れたドワーフならともかく、通常の妖精族が巨大都市を作る事は難しい。

そもそも森のど真ん中では石材の調達が困難だ。

しかし、アールヴ文明の遺跡を利用する事で森の中に巨大都市を建造できた。

既に存在するものを修復するのなら、1から造るより遥かに簡単だからな。


 しかし、安全かどうかも解らない物の上に住むことはできない。

よって調査に力を入れ、その結果古代文明の技術を手に入れる。

そうやって勢力を伸ばしたのがエルフ族だったというワケだ。

エルフにとって遺跡探索は最重要だ。

シリルスへの期待は大きいんだろうな。


 アールヴ文明の遺産はどう見てもSF要素が入っている。

剣と魔法の世界の常識では謎だらけだろう。

動力は魔力のようだが、技術の根本的な発想が違うのだから。


〈フェアリー、ケットシー、エント族、この辺にはいないですね~〉


「ケットシーはそれなりにいるみたいだがな」


 直立歩行する猫、ケットシーは商人に多い様だ。

ドワーフの都市には、採掘のプロとして犬バージョンのコボルトもいるらしい。

ゲームでは犬の獣人として登場する事が多いコボルト。

だが、元々はコバルトの語源にもなった妖精だ。

人に獣のパーツが獣人、直立歩行する動物が妖精と覚えておくか。


 フェアリーは見当たらない。

エリフィムはフェアリーとエルフに分かたれたと聞く。

フェアリーはハイエルフよりもさらに精霊に近い種族で、魔法への適性も勝る。

しかし、森から離れると生きていけないという弱点を抱えているそうだ。

故に森の集落から出る事はまず無いらしい。


 エント族、木人は町にいるはずがない。

連中は竜と同じ聖域の守護者だ。

聖域から出るという事は物騒な事情があるという事。

具体的には聖域への侵入者や敵対者を殲滅するためだ。


 高さは最低でも5m、デカい個体は数十mにもなるエントの群れ。

まさに緑の津波、想像するだけで恐ろしい。

だから、少しでも考える頭のある奴は聖域には近寄らない。

もしエントの襲撃があった場合、全ての種族、全都市集落が協力して犯人を捜し、エントに差し出す。

だが、未だに0ではないあたりが人の業なのだろうか。

って言うか、聖域ってそこまでして行きたいかな。

浄化装置があるだけなんだが。


「んん? ハウルとリンクスはどうした?」 


〈キュ?〉


〈ふえ? さっきまで確かに~〉


 その後、2匹を食品街で回収した。

リンクスは魚屋の生簀をのぞき込んでいた。

店主が困っていたので、お詫びに結構な量を購入したのだがリンクスはペロリと食べてしまった。

獅子もネコ科には変わりない様だ。


 ハウルは肉屋の大型魔獣解体ショーを見ていた。

しかも最前列で。

断れる雰囲気じゃなかったので大型ブロック肉を購入した。

やはりハウルは即座に完食してしまった。


 ハウルはともかくリンクスまでフラフラするとはな。

みんな娯楽に飢えてたんだな……。

俺にも反省すべきところがあるな。


----------------


 フィオさん、いや、ディノさんと呼んだ方が良いのかな?

まあ、ともかく彼との会談が終了すると、僕はすぐに準備に取り掛かった。

まあ、メリアや部下が全部やってくれてるんだけど。


「やっぱり怪しいのはこの辺か……」


 監視システムが再起動した後、当然各遺跡の様子は調べた。

すると、いくつかの未踏破遺跡に誰かが侵入した痕跡があったのだ。

危険なのでこれまでは監視にとどめていたが、これで内部を調査できる。

ただ気がかりなのは


「全部、研究施設か」


 アールヴ文明の遺物はどれもオーパーツだ。

もし研究段階のモノが遺跡に残されていたら厄介だ。

暴走なんてされたら目も当てられない。


 ただ、兵器研究所ではないはずだ。

アールヴ文明で戦争は起きていない。

土地の広さに対して人口が少ないから戦争は起きなかったし、防衛設備も充実していたからあまり強力な武器は必要なかったからだ。


 ただし、当時と今では普通の基準が違う。

当時はただの警備兵に過ぎなかった魔法生物が、今では恐ろしい強敵なのだ。

まあ、あの人がいれば心配は無いだろう。

斥候の報告によると、彼は道中接敵した魔法生物を雑草のように蹴散らしてしまったそうだ。


 しかし、安全だと思うと僕の悪い癖が出そうで怖い。

そう、任務をそっちのけで遺跡の調査に没頭しそうなのだ。

メリアに窘められても祖父に怒られても両親に心配されても、こればかりは治らない。

っていうか、既に抑えきる自信が欠片も無い。


 ああ、未踏破の遺跡。

男の浪漫だ。

最高だ。

何が隠されているんだろう。

ああ、待ち遠しい。


 コンコン


「シリルス様、ニムエお嬢様がいらっしゃいました」


「ハッ! あ、わかったすぐ行くよ」


 メリアの声に我に返る。

いかんいかん、まだ出発前だぞ。

ちなみにニムエは僕の婚約者で、ハイエルフの令嬢だ。

ホワホワした天真爛漫な女の子で僕の元に嫁ぐことが生まれた時から決まっており、それが何よりも幸福な事と教育されて成長したので僕にぞっこんなのだ。

……貴族って怖いね。


 調査について行きたいと、泣き落としにかかる彼女は非常に強敵だった。

そして彼女が帰った後、彼女の座っていた席に目薬を発見した時の衝撃は、強敵とかそんなレベルでは表せなかった。

女って強いね……。


シリルスの正妻(予定)、ニムエの元ネタは非常に有名な妖精です。


ヴィヴィアンって聞いた事ある人は多いのでは?


アーサー王とかエクスカリバーの彼女です。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ