その毒の名は?
なんということでしょう、神は継母殿に味方するというのですか?
あらわれたのは、隣国の第二王子でしたわ。
金色の髪に、鮮やかなアメジストの瞳のすらりとした美しい男性ですの。
見た目からして王子様、というのは、継母殿のどうしてもはずせない重要な事柄ですのね、きっと。
「どういうことですの、王子様」
「いやだな、レイナード・・・いや、レイと呼んでください。リディアナ」
「では、レイ。どういうことですの?妖精の悪戯なんて、お戯れがすぎますわ。継母殿も・・・」
優雅に、ティーカップを持ち上げ、それから勢いよく逆さまに致します。
「リディアナちゃん、あたくし諦めなくってよ!」
継母殿は、もう少しものを考えるべきですわね。
「媚薬もばれたところで、正式に求婚いたしましょうか・・・リディアナ・リア・スノーホワイト王女、私と結婚してください。勿論、第一王女であるあなたに配慮し、婿にいきますとも!」
なんて厄介な!
死体愛好家な王子以来ですわね。あの時は、結婚したいので死んでくださいと言われましたのよ。
笑顔で一蹴しましたけれどね。
「残念ながら、お断り致しますわ」
「なぜですのっ!?」
そこで口を挟みますの、継母殿・・・・・・。
「わたくし、今は結婚を考えられませんの」
固まる王子に、にっこりと笑いかけます。
ふふふ・・・わたくし、継母殿がつれてきた殿方とは絶対に結婚しないと決めているのですわ。
どんなのがいるか、わかったものではありませんもの。
「ふっ、」
「ふ?」
「ふははははは!姫、あなたはおもしろい人ですね・・・私は諦めません!待っていてください!!」
ほらね。意味がわからないのではなくて?
「今回は完敗ですが次こそは・・・!!」
そう言って席をはずす継母殿を見ながら、わたくしは足取り軽く温室へ向かいました。
今回の毒は、たいへん珍しいものですもの。カップに付着した成分を調べますのよ。
────甘い甘い、媚薬という名の毒を、ですわ。